山北町向原の能安寺で毎年2月に開催されてきた県指定無形民俗文化財「世附の百万遍念仏」が2月17日〜18日、4年ぶりに行われる。新型コロナの影響で2021年から中止が続いており、念願の復活とあって保存会のメンバーらが熱心に準備を進めている。
「世附の百万遍念仏」は約600年前、現在の丹沢湖の場所にあった世附地域周辺で始まったとされる念仏信仰。先祖の霊を慰め、地域の安全祈願と雨乞いを目的としているという。
開催日には両日とも念仏衆が念仏を唱え、巨大な滑車に取り付けられた大数珠を縦に引きながら回転させる行法で百万遍念仏を行った後、獅子舞や「おかめの舞」などの遊び神楽が演じられる。当日の会場の飾りつけや念仏衆など、運営は全て保存会の約30人が担う。
演技は主に30〜40代、指導を50代以降の会員らが行う。装飾の作り方などで、分からないことは最年長の会員に教わるなどして、伝統が守られている。
準備初日の1月16日には同会役員7人が同寺に集まり、保管されていた太鼓や小道具を町内の集会所に運び込んだ。今後は開催までの約1カ月間を使って、会員らは演技の練習や装飾の作成などを行うという。
過去3年間は開催に向け準備しながらも、中止を余儀なくされてきた。同会の池谷一郎会長(73)は「この行事はバラバラになった世附住民のよりどころだと思う。今年は開催が決まり良かった」と話す。