金沢動物園=金沢区釜利谷東=は6月11日から、ニホンライチョウの展示を始めた。国の特別天然記念物に指定されている絶滅危惧種の一つで、神奈川県内で展示しているのは同園のみ。貴重な動物の生態や生息環境などを市民へ紹介しながら、飼育や繁殖へ向けた知見を集積していく。
国の特別天然記念物
ニホンライチョウは、本州中部の標高2000m以上の高山帯に生息するライチョウの一種。近年は温暖化による気温上昇や生態系の変化などの影響を受けて生息数が減少しており、絶滅危惧IB類として近い将来に野生で絶滅する可能性が高い種とされている。
同園で展示されているのは、1歳のオスのニホンライチョウ一羽。環境省と日本動物園水族館協会が共同で行う「第2期ライチョウ生息域外保全実施計画」に基づき、2024年2月に石川県のいしかわ動物園から来園した。当初はオスとメスの計2羽が来園したが、メスの個体は来園翌日に死亡したため、オスのみの飼育・展示となっている。同園は15年からニホンライチョウの近縁種・スバールバルライチョウの飼育を行っており、その知見や経験を生かしてニホンライチョウの飼育に取り組む。
現在、国内でニホンライチョウを飼育しているのは、同園を含め8カ所。県内ではよこはま動物園ズーラシアの敷地内にある横浜市繁殖センター=旭区=でも飼育しているが、展示は金沢動物園のみとなる。
季節で色が変化
展示場所は以前にスバールバルライチョウが展示されていた園内アメリカ区の一画で、当面は午前10時から午後3時30分までの間。高山帯に合わせて調整された気温や湿度の環境が整えられている。
夏が近づく今の時季は羽が主に黒い状態だが、冬場には全身白色の色合いになるという。飼育担当者の井川阿久里さんは「環境の変化が、生息数の減少につながっている。展示を通して、ライチョウも住める環境を守っていくにはどうしたらいいのかを考えるきっかけになれば。季節での様子の違いも見にきてほしい」と話した。