これは、2024年の夏、タムウッドのサマーキャンプに参加する小6のお嬢さんとお母様の奮闘をご紹介するコラムです。2024年の3月スタート。リアルタイムでコラムは進行していきます。「いつかは、、、」と参加を検討中の皆様は、是非参考にしてみてください。(原稿は随時追加)
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無事に到着、、、
娘がカナダへと飛び立った翌日、エアカナダの運行状況を確認すると無事にトロントピアソン空港に到着したことが分かった。安堵するや否や、娘のスマホから到着空港内の写真が送られてきた。添付写真に添えられたひと言。
「行けそうな気がする。もう今後は連絡しません。」
行けそう?この言葉に隠された意味は?ひとまずポジティブな気持ちで進めるということか。連絡がないことの方が安心なので、そのひと言で私はほっとした。が・・、ほっとしたのもつかの間、後日、娘からメールが届いた。
「やはり話したいことがあるから、また後で連絡します。」
一体何があったの?と、心配になってしまった。出発前、「何かあったら私でなくてカウンセラーさんに相談して。」と娘に伝えていた私。せっかくカナダにいる間、面倒を見てくれるカウンセラーさんがいるのに、私に頼っていたらいつまでたっても成長できないと思っていたからだ。
しかし、これは話を聞いた方が良さそう、と直感で感じた。しばらくすると娘からLINEの通話が掛かってきた。娘の声のトーンから、とてもナーバスになって当惑している様子がひしひしと感じられた。
「カウンセラーさん(面倒を見てくれる人)の説明が理解できなくて、自分は何をして良いのか、どうやって過ごしたらよいのかさっぱりわからない。」
「他の国のお友達と会話できないし、日本人のお友達さえもまだできていない。」
「シャワーを浴びたら水しか出なくて、冷たくて寒くて追い打ちをかけられた。」
「もう、寂しくて不安で心細くて、お部屋で1年分くらい大泣きした。」
靴のまま地べたに座って皆が普通に作業することにも抵抗があるようで、まだまだ文化の違いに対して順応できていない様子だった。到着したばかりなのだからそのような気持ちになってしまうのはやむを得ないこと。
この状況で娘に対して責めるようなことを言ったら、余計に気持ちが追い詰められて逃げ場がなくなってしまうのは容易に判断できた。なので、まずは娘の気持ちを受け入れて話を聞いてあげたうえで、大丈夫だよと安心させるような言葉を伝えた。
「そっか。お友達がいないと寂しいよね。シャワーが水なのは寒かったね。」
「まずは日本人のお友達に声を掛けてみようか。」
「まだまだ着いたばかりなので、英語が聞き取れないのは当然だよ。」
「初めは言っていることが分からなくてもだんだんと耳が慣れてくるよ。」
「一人でカナダに行ったんだよ。それだけですごいよ!」
通話を横で聞いていた息子が、娘の気持ちを察したのか大きな声で一言。
「お姉ちゃん、大丈夫だよ!俺だってお姉ちゃんが行った後寂しくてしょうがなかったんだよ!」
毎日のように大げんかをしている弟からの意外な言葉。(やんちゃ息子のわがままな言動は相変わらずだが・・。)そんなこんなで会話をしているうちにだんだんと気持ちが落ち着いてきた様子の娘。電話を切った後、前向きな内容のメールとスタンプが送られてきた。少し気持ちを持ち直した様子に安堵した。
母娘の気持ちの変化
不安で押しつぶされそうな気持ちから少し回復した様子の娘。その後のメールでもポジティブな気持ちに切り替えようとしている様子が伺えた。
親としてはまだまだ気がかりでしょうがないが、これも娘にとって一つの試練、通る道なのかも知れない。せっかく娘の気持ちが良い流れに傾いているのに水を差してはいけないと思い、こちらから連絡はせずにそっと見守ることにした。今後、娘から連絡があったときに限って、励ましたり相談に乗ったりしよう、と決めた。
言語も文化も違う国にたった一人で向かい、知らない人たちとの共同生活を始めたのだから、不安や寂しさから泣きたくなる気持ちになるのは人間として当然。ましてや子供なら尚更。うまくいかないことやギャップを感じることだって多くあると思うけれど、きっとそれ以上の楽しいかけがえのない経験が待っている。乗り越えて大きく成長してもらえれば良いな、と信じて。そして同時に自分も親として成長させてもらえたら良いなと思いを巡らせた。
その後も毎日のように私に娘からのラインメールが届いた。気持ちを受け止めて応えていたが、時には、そんなこと私に聞くな!と突き放してしまいたくなるような内容が書かれていることもあった。
痛みなくして成長なし。甘やかしては成長を妨げてしまうこともあるが、不安な時に気持ちを受け止めてあげないと絶望的な気持ちにまで落ち込んでしまう危険性もあり得る。親として、どう対応したらよいのか正解が分からない時があった。
そんな中、タムウッドからのQ&Aの資料を改めて読み返してみたところ、子供が落ち込んでいる時にはお子さんをぜひ励ましてあげてください、と書かれていた。今までQ&Aを読んでいるつもりで熟読できていなかったなぁ、と反省。
タムウッドによると、子供が泣きながら電話してくるときやホームシックになっているのかもと心配するような状況でも、多くの場合は心配いらないそうだ。そうした子供たちでも電話が終わって数分もしないうちに、笑って元気にお友達と楽しく過ごしていることがほとんどのようだ。なるほど、娘もそうであってほしいと願うと同時に、弱気になっていると感じられるときは思い切り娘を励ますことを続けた。
一歩を踏み出してみた結果・・・
数日後、娘から日本人のお友達ができた旨の連絡を受けた。一つの大きな関門を突破できたことに、私はほっと胸をなでおろした。
娘「遠足での自由行動の時に一人で過ごすのはさすがに寂しいと思ったから、勇気を出して頑張ってみたよ。」
私「それは頑張ったね。お友達ができて安心したよ。」
滞在していたほとんどの日本人は、団体での参加者や娘が到着する前から滞在していて、すでに仲間ができていたので始めはなかなか中に入れなかったそうだ。今まで踏み出せなかった一歩。その一歩を踏み出せたことは娘にとって大きな成長。
親として、せっかくだから海外のお友達を作ってほしい等々と欲が出てしまうが、欲を言ってはきりがない。焦らず私はしばらく余計な口出しはしないようにした。踏み出した始めの一歩は想像以上に大きなものだったようで、それをきっかけにお友達ができて気持ちが安定し、カウンセラーさんの言うことを少しずつ理解できたそうだ。また、その後はネガティブな内容の連絡は私の元に届かなくなった。
気候の違いと夜更かしのせいで体調を崩すこともあったようだが、毎日の英語レッスンやアクティビティを楽しく過ごせていた様子だった。遠足では、洞窟探検、カヌーツアー、CNタワー、MLBブルージェイズ戦観戦、ナイアガラの滝等々、様々な場所へと出かけ観光やショッピングを満喫し、カナダならではの大自然を存分に楽しむことが出来たようだ。
特に日曜日に行ったカナダズワンダーランドという遊園地は一番の思い出だそうだ。この日曜日の遠足は、複数ある目的地の中からお友達と話し合ってみんなで行こうと決めたものだ。
娘「カナダズワンダーランド、楽しすぎた!」
私「それは良かったね!」
タムウッドの保護者向けアプリでは、現地での様子を写真や動画で閲覧することができた。娘からの言葉を聞かなくても、お友達と楽しそうに過ごしている姿をうかがうことができて、毎日のように更新を楽しみにしていた。このアプリは今年から導入されたもので、我が子を遠い海外に預ける親として、娘が元気に過ごしている姿やありのままの様子が分かったので、とても安心できたし有難いものだった。(気が付くと、時間の許す限りアプリで娘の姿が写る写真を探していた。)
そして、いつの間にかお別れパーティの日の写真となっていた。
毎日が充実して楽しくなってきたころ帰国となってしまう、とは聞いていたが本当にあっという間だった。これは娘にとっても私にとっても言えること。キャンプ期間の延長をする子供たちも少なくない、というのも納得だ。娘の最終日はキャンプ全体での最終日なので延長はかなわなかったが(そうでなくとも難しかったが)、あれだけ始めはどん底に落ちて泣いていた娘が、最後は帰りたくないとまで思っていたのは大きな変化と成長。
一歩を踏み出したことで、こんなにまで全てが大きく変わるとは娘も思いもしなかったそう。勇気を出して踏み出した一歩は今後の娘の人生をも変えるくらい大きな飛躍となった。
<次回へつづく>