NEW

横須賀市吉井の法善寺~お寺に届く供物などを困窮世帯におすそわけ~仏教の教えに沿って

シェアする
横須賀市吉井の法善寺~お寺に届く供物などを困窮世帯におすそわけ~仏教の教えに沿って
寺に届いたコスメ用品を梱包する吉永住職

全国の寺が協力し合い、供え物などを生活困窮世帯に渡す取り組み「おてらおやつクラブ」に、横須賀市吉井の法善寺が賛同している。19代目の吉氷(よしい)昭宏住職(37)は、2020年頃から毎月1回程度、同クラブの事務局を通じ、菓子類を必要としている家庭などに配っている。吉氷住職は「必要としている人はたくさんいる。継続して実施していきたい」と強調する。

 同クラブは13年、大阪市のアパートで母子が餓死する事件を受け発足した。寺院に届いた供え物を仏様からの「おさがり」として扱い、必要な人に分けることで、慈悲の精神を体現するという仏教の教えに沿った活動。昨年3月時点で約2000カ寺が参画している。

 吉氷住職も、貧困がもたらした悲劇をニュースで目にしたことで「寺としてできることをしたい」と参加を決断。法事の際に供出された菓子などを寄贈し始めた。子どもが飲めない酒類を省き、消費期限内のものを精査した上で届けている。

「自寺で消費できない菓子類が経済的に困っている世帯に届いたと知るとやりがいを感じる」と笑顔で話す。これまで5年間の活動で、困窮世帯に12回、社会福祉協議会など支援団体に25回寄贈した。

 仏教では、困っている人を「悲田(ひでん)」と呼び、慈悲の心で救済する必要があると教える。「門徒だけでなく、一般家庭にも活動を周知したい」と吉氷住職は意欲を見せる。

 最近、活動を知った近隣住民から、タオルやコスメ用品が寄贈されるようになった。寺には日焼け止めや化粧道具を段ボールに詰めた状態で保管している。今後、要望のあった家庭に届ける。吉氷住職は「経済的な問題を抱えている家庭は、女性が化粧をする時間も経済的な余裕もない現状がある。小さい活動でも、自立支援に繋がれば」と話す。

 物品は事務局を通じて申し込みのあった家庭に届けられるシステムのため、寄贈した側とされた側が顔を知る機会はない。だが住職は「善意をアピールすることはしたくない。どこかで、笑顔になってくれればそれでいい。輪が自然と広がれば」と語った。

住所

神奈川県横須賀市法善寺

公開日:2025-07-04

関連タグ