子どもの記憶力には偏りがあります。たぶん間違いありません。
先日のことです。夕食のあと、突然言われました。
「そういえばさ。」
嫌な予感がしました。
こういう始まり方は危険です。そして予感は当たりました。
「前に大きい公園行こうって言ったよね。」
言いました。たしか。
いつだったでしょう。記憶をたどります。春だった気もします。
いや、もっと前かもしれません。
すると続きました。
「桜が咲いてた時。」
覚えているらしい。こちらより詳しく。
「帰りにアイス食べた。」
そこまで覚えているのか。
さらに、
「その時、今度また来ようって言った。」
完全に記録されています。録音されていたのでしょうか。
こちらはそんな会話をしたことすら忘れています。
一方で。朝。
「ランドセル持った?」と聞くと、
「忘れてた。」
昨日も忘れていました。
なぜそちらは記録されないのでしょう。不思議です。
また別の日。
スーパーで見つけたお菓子を指して言いました。
「あれ前に買った。」「そうだっけ?」
「買ったよ。」「いつ?」
「雨の日。」
情報が少なすぎます。
しかし本人は確信しています。どうやら雨の日のお菓子データベースがあるようです。
さらに驚くのは、自分に都合のいいことほど覚えていることです。
「あの時、あと一個だけって言った。」覚えている。
「寝る前に絵本読むって言った。」覚えている。
「今度ねって言った。」覚えている。
こちらの発言だけ高性能録音機で保存されている気がします。
ある日など、「覚えてる?」と聞かれました。
「何を?」「覚えてないの?」
どうやら覚えていないこと自体が問題らしい。少し申し訳なくなりました。
その日の夜。本棚を整理していたら、昔読んでいた絵本が出てきました。
子どもはすぐに気づきました。
「あ、それ好きだったやつ。」
表紙を見ただけで思い出したようです。しばらくページをめくりながら笑っていました。
私は内容をほとんど覚えていませんでしたが。
もしかすると記憶は、残したものより、楽しかった方が残るのかもしれません。
いや、単にこちらの記憶力の問題かもしれませんが。
あなたは今でも覚えている子どもの頃の約束がありますか。











