《湘南チャリの旅》大人の社会見学、パイロットにある「蒔絵工房 NAMIKI」に行ってきました!

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《湘南チャリの旅》大人の社会見学、パイロットにある「蒔絵工房 NAMIKI」に行ってきました!

平塚に蒔絵の工房!?蒔絵は金沢だけじゃありません

平塚とえいば、湘南平塚七夕まつりに湘南ベルマーレが有名ですが、国内大手企業の工場が集まる企業城下町でもあります。日産車体に不二家に高砂香料、第一三共プロファーマ、古河電工、横浜ゴムなどなど。
総合文房具メーカーの雄、パイロットコーポレーション平塚事業所もその一つ。今回は、事業所内にある蒔絵工房NAMIKIを見学させていただきました。

文房具と漆!?

話しを進める前に少し、横道へ。
パイロットと蒔絵、ちょっと結びつかないですよね。そもそも蒔絵って??という方もいるのでは。

蒔絵(まきえ)とは、木材などに漆を塗り、絵や模様、文字を描く際、金や銀などの金属粉を蒔き、さらに漆を塗り重ね、定着させる技法です。奈良県・正倉院の宝物にも、この蒔絵が使われたものがあるといいますから、ざっと数えても1000年以上の歴史、伝統をもつ技法なのです。

メイドインジャパンの万年筆

でも、大手文房具メーカーと伝統技法??、やっぱり接点がないですよね。本題に入る前に、パイロットの歴史にも触れておきたいと思います。

パイロットの創業は1918年(大正7年)1月(今年100周年!)。和田正雄、並木良輔、2人の若き起業家が東京におこした会社です。当時の社名は「株式会社並木製作所」。そして、製作していたのは「万年筆」でした。

和田、並木は早くから、国内だけでなく、ヨーロッパ、アジア市場に目を向けます。2人が販路を求め、横浜港を発ったのが1925年(大正14年)4月。このときビジネスカバンに忍ばせていたのが蒔絵の万年筆。

ウォーターマンが万年筆を世に出したのが1884年(明治17年)ですから、並木製作所は、万年筆メーカーとしては後発組、ニューカマーです。メイドインジャパンの万年筆が、世界の競合他社とわたりあうには、どうしたらいいか。その答えが、万年筆のキャップ、胴に装飾をほどこした蒔絵万年筆だったのです。

商品性の高さ、2人の営業努力が実り、1926年(大正15年)には、ロンドン、ニューヨーク、上海、シンガポールの4か所に、支店、出張所を設け、1930年(昭和5年)には、イギリスのダンヒル社と販売代理店契約を結びます。同年4月のロンドン海軍軍縮条約の調印式では、各国の代表が蒔絵の万年筆で式に臨んだという逸話も残るほど、高く評価されました。

平塚事業所正面、昭和の面影を残すレンガ造りの工房

話しを本題へ。

パイロット平塚事業所内、2015年に開館した蒔絵工房NAMIKIには、1920年代から現在にいたるまでの蒔絵万年筆が展示されています。

平塚事業所は、もともとは旧海軍の火薬廠でしたが、戦後、この場所を購入し、工場は1948年(昭和23)に完成します。蒔絵工房NAMIKIは、火薬廠として使用されていた煉瓦造りの建物を改装したもので、屋根や外壁の一部、内装は補修したものの、2メートルを超える天井高や建具、ドアノブなどは当時のまま。昭和の雰囲気がただよいます。

展示は、万年筆、パイロットに携わった蒔絵職人の作品、戦前のポスター展示など。時代ごとに並べられた蒔絵万年筆は、時代を追うごとに、デザインが洗練され、より精緻になっていきます。機能の面では、キャップにクリップが着いていなかったり、胴の真ん中にインクを押し出す棒状のものが着いていたり、ロゴがパイロットの「P」ではなく、並木の「N」がだったりと、見ていて飽きません。

左側の5本は、万年筆ではなくシャープペンシル。戦後、金の使用制限があり、万年筆のペン先が作れず、蒔絵のシャープペンシルを作っていた時代もあったそうです。

パイロットの蒔絵技術を支えたのが、数多くの蒔絵作家。中でも、漆の神様、人間国宝・松田権六はその筆頭でしょう。松田がパイロットに入社したのは1926年(大正15年)。東京美術学校(今の東京芸術大学)の六角紫水との縁で入社し、1927年(昭和2年)までの短い間でしたが、技術指導や、平塚市近郊に住んでいた作家を集め「國光会」を結成し、展示会を行うなど、研鑽に務めます。

関係した作家は、飯田光甫、牧澤松美、本間舜華など。展示室には國光会を継ぐ、人間国宝の作品も展示しています。

実際に金粉を蒔くところを見せていただきました

蒔絵工房NAMIKIは、展示だけでなく、実際に製作する工房があります。現在、3人の社員(うち一人は2017年入社の新人です!)が、蒔絵万年筆を作っています。中には工程が100以上あるものもあり、それらを一人で作り上げます。納期は3~4カ月ほどかかるそう。

蒔絵の技術を見せていただいた社員の方から

「蒔絵万年筆に求められる技術は、非常に高いものがあります。さらに高めていきたいです」。

「工房を公開することで、世代に囚われず、広く知ってもらうきっかけになれば」との話しをいただきました。

3人の社員のうち2人は女性ということもあり。「女性も活躍しています。平塚から育てていきたいですね」、とも。

蒔絵の伝統は、着実に引き継がれています。

大人だけじゃもったいない

パイロット=水先案内人の社名通り、メイドインジャパンの誇りを、他に先駆け、広めてきました。開拓精神、スピリット、そして何よりも100年間連綿と続く、作家、職人の技を、ぜひ、お子様といっしょにどうぞ。
見学は要予約です。

  • 参考文献

「パイロットの軌跡 60年史」、

「万年筆」梅田晴夫(平凡社カラー新書)

住所

神奈川県平塚市

所在地:〒254-8585 神奈川県平塚市西八幡1-4-3
最寄駅:JR東海道線「平塚駅」下車(東京駅より約60分)
平塚駅からのアクセス:
バス/北口バスターミナル4番のりばより乗車 →「総合公園」バス停下車徒歩1分(4番のりば発のうち【平67 田村車庫行き】以外の神奈中バスは全て「総合公園」を通ります)
タクシー/北口タクシー乗場から約8分
徒歩/西口より約20分

★「蒔絵工房NAMIKI」事前予約制
電話:0463-35-7069(平日10:00~16:00)
開館時間:10:00~12:00 / 13:00~16:00

休館日:土・日・祝日、年末年始・夏季休暇、当社創立記念日(10月1日)
★都合により臨時休館する場合あり。
入場料:無料

電話

0463-35-7069

0463-35-7069

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公開日:2018-08-02

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