ヨーロッパ調の石造りの壁、おとぎ話に出てきそうな木の扉や奇妙な生き物、小さな家がひしめきあう城のような星、色鮮やかな昆虫-―金沢区釜利谷東にあるIkkaさん(本名/田村一花)のアトリエには段ボールで作った作品が並び、足を踏み入れるとまるで異世界に紛れ込んだかのような錯覚を覚える。
Ikkaさんのオリジナルストーリー「星舟」の世界観

星舟世界のロボット
作品の根底に流れるのは、Ikkaさんのオリジナルストーリー「星舟」の世界観。その異世界の宇宙に浮かぶ、個性豊かな星々や生きものを段ボールで形作り命を吹き込む。「みんなそれぞれ、自分のやりたいことに没頭できる”おひとりさま星”を持っていて、寂しくなったら、酔いどれ星とか図書館星とかリゾート星とに行って繋がりたい人とつながるんです」と世界観を語る。
Ikkaさん
Ikkaさんが段ボールを素材にして作品を作り始めたのは6年前。羊毛フェルトの人形作家として活動していたが、突然作れなくなった。「それまでは頭の中に作りたい妖精がずらっと並んでいたのに、一人もいなくなっちゃったんです」
羊毛フェルトから離れ1年弱がたったある日、映画を見ながら何気なく段ボールをちぎっていたら、人差し指の先くらいの一片が目に留まった。「いびつな三角形が何とも言えずかわいくて」。絵具を塗って小さな家を作った。その家と羊毛フェルトの星を合わせたのが最初の段ボール作品だ。「羊毛で人の顔を散々つくってきたので、造形はしやすいですね」
以来、段ボールを小さくちぎったり、折ったり、貼り重ねたりして様々な立体的な造形を生み出してきた。昨年末は30回続く「紙わざ大賞」の入選も果たした。「次はもう少し大きいものを作りたい」と創作意欲は尽きない。ゆくゆくは月数回、アトリエを開放していく予定だ。