心を動かされたアートを紹介する「アートナビゲーター」。ギターを手にラブソングを歌う「ラブソンガー」。そして、茅ヶ崎生まれの選挙啓発キャラクター「選挙犬」のデザイナー。一見すると異なる活動を軽やかに行き来しているのが、リコチー(岩田涼子)さんです。
市内で働きながら、美術館へ足を運び、毎日欠かさずアートの魅力を発信。週に一度はオープンマイクに参加し、地域のお店では自らライブも開いています。そのエネルギーは、どこから生まれているのでしょうか。
「表現することが好きなんです。それに、自分がいいと思ったものを、もっと多くの人に知ってもらいたくて」
アート、音楽、選挙啓発。リコチーさんの多彩な活動をたどると、そのすべてをつなぐ一つの思いが見えてきました。

「いい」と思ったものを、誰かに伝えたくて
岡山県で生まれ、12歳のときに東京へ移ったリコチーさん。美術大学では、布や染色を扱うテキスタイルデザインを学びました。卒業後はインテリアショップに勤め、販売や広報を担当。その後は人材会社で社内報の制作や社内イベントの運営に携わるなど、長く「伝える仕事」を経験してきました。
現在、Instagramで続けているのが、心を動かされたアートを紹介する活動です。きっかけは、美術大学時代の友人と始めたインターネットラジオでした。番組を広く知ってもらうために自分にできることを考え、興味のあるアートを紹介するようになったといいます。「リコチー」という名前も、このラジオを始めた頃に名付けられました。
ラジオの活動を終えた後も、アートの発信は続きました。以前は動画を制作していましたが、現在はInstagramのストーリーズを中心に、展覧会や作品を毎日紹介しています。その投稿は、すでに2年以上続いているとか。
「既成概念にとらわれない表現や、美しい作品に出会うと、心が揺さぶられます。見ることも、自分で表現することも好きなんです」
休みの日には美術館やギャラリーへ足を運び、自分の目で作品に触れる。そこで感じた驚きや面白さを、今度は自分の言葉で誰かに届ける。
「自分がいいと思ったものを広めたい」という気持ちは、これまで広報の仕事に携わってきたリコチーさんにとって、自然なことなのかもしれません。

リコチーさんが毎日ストーリーズを配信しているというインスタグラムの様子。各地に伺った様子が掲載されています。
ギターを手に「ラブソンガー」へ
リコチーさんには、もう一つの顔があります。その名も、「ラブソンガー・リコチー」。ラブソングを中心に歌っていることからこのネーミングを採用しました。もともと歌うことが好きだったリコチーさんは、ギターを習い始めたことをきっかけに、人前で歌うようになりました。茅ヶ崎出身の音楽家・岡本洋平さんからレッスンを受けながら、週に一度は市内で開かれるオープンマイクに参加。茅ヶ崎・元町のバー「蜜柑」や中海岸の「アンドエス」など地元のお店でライブを開くこともあります。歌うのは、中森明菜さんや松田聖子さんなど、自身が心を動かされたラブソングです。
「まだギターを始めて1年半ほどですが、歌うことはずっと好きでした。自分がすてきだと思ったラブソングを歌っています。作詞作曲にも挑戦していますよ!」
アートを紹介するときと同じように、音楽でも大切にしているのは、自分の「好き」を自分なりの方法で表現すること。かつては聴く側だった曲を、自分の声とギターで誰かに届ける。新しい表現に挑戦することそのものを、リコチーさんは楽しんでいます。

ラブソンガー・リコチーのインスタグラムから。市内のお店などで積極的にオープンマイクに参加しているといいます。
茅ヶ崎生まれの「選挙犬」をデザイン
アートや音楽と並ぶ、リコチーさんのもう一つの活動が、選挙啓発キャラクター「えらぶくん」と「きめよちゃん」の制作です。山岳救助犬になりたかったという、使命感の強いセンキョ(セント)バーナードの「えらぶくん」。そして、選挙の日には朝一番で投票に行きたいと夢見るマルチューズ(チーズ)の「きめよちゃん」。

茅ヶ崎市選挙管理委員会で働いていた際、美術大学出身でもあるリコチーさんに声がかかり、2匹の「選挙犬」が形になりました。キャラクターを制作するうえで担当者と考えたのは、子どもから高齢者まで、幅広い世代に選挙や投票を身近に感じてもらうことでした。
「選挙は、大人だけのものではありません。子どもたちにも『えらぶくんときめよちゃんだ』と親しんでもらい、選挙を身近に感じてもらえたらと思っています」
親しみやすい見た目だけでなく、好きな食べ物や飼い主、2匹の関係など、細かなプロフィールも設定されています。そして、リコチーさんが描く未来は、茅ヶ崎だけにとどまりません。
「茅ヶ崎で生まれた選挙啓発キャラクターとして、もっと有名になってほしいです。全国の人に親しんでもらい、『選挙といえば、えらぶくんときめよちゃん』と思い浮かべてもらえるようになったらうれしいですね」
キャラクターを入口にすることで、少し堅く感じられがちな選挙との距離を縮める。選挙犬には、デザイナーとしてだけでなく、選挙の現場を知るリコチーさんならではの思いが込められています。

えらぶくんときめよちゃんは、11月の茅ヶ崎市長選挙の選挙公報でも様々な場面で使われています。
風が抜ける、爽やかな街、茅ケ崎
リコチーさんが初めて茅ヶ崎を訪れたのは、20代の頃でした。岡山で育ち、中学生の頃から東京で暮らしていたリコチーさんは、都会での生活が好きだった一方で、どこか疲れを感じることもあったといいます。知人との縁で訪れた茅ヶ崎で感じたのは、それまで暮らしてきた街とは違う空気でした。
「風の抜けがよくて、爽やかで。街全体に流れている雰囲気がすごくよかったんです」
茅ヶ崎にすっかり魅了され、20代後半で一人暮らしを始めました。都内の職場までの通勤は決して楽ではありませんでしたが、それでもこの街を離れようとは思いませんでした。
「帰ってくると、駅のあたりにも潮風が漂っていて、それだけですごく癒やされました。都会でも田舎でもない、あの緩さがたまらなかったんです」
当時の茅ヶ崎には、アメリカンアンティークを扱う雑貨店や、独自の雰囲気を持つ飲食店など、知る人ぞ知る個性的なお店がいくつもありました。街の姿は少しずつ変わりましたが、茅ヶ崎への思いは、約20年がたった今も変わっていません。
「今も個人で営んでいるお店が多くて、皆さんが自分たちのセンスや工夫で頑張っていますよね。同じものはほかの街にはない。それが楽しいんです」
街をつくる一人ひとりの表現が見えること。それも、リコチーさんが茅ヶ崎を好きな理由の一つです。

心が動いたものを、次の誰かへ
アート作品を見て心を動かされること。好きだった歌を、自分の声で届けること。親しみやすいキャラクターを通じて、選挙を身近に感じてもらうこと。
リコチーさんの活動は多彩ですが、その根にあるのは、いつも「いいと思ったものを広めたい」という思いです。「表現することが好き」という気持ちに素直に、新しいことへ一歩ずつ踏み出していく。その活動は、茅ヶ崎という街の中で人や場所とつながりながら、少しずつ広がっています。
アートナビゲーター、ラブソンガー、そして選挙犬のデザイナー。一つの肩書きには収まりきらないリコチーさんは、今日も自分の心が動いたものを、次の誰かへ届けています。

リコチー(岩田涼子)
アートナビゲーター・リコチー インスタグラム:https://www.instagram.com/ricochii_art/?hl=ja
ラブソンガー・リコチー インスタグラム:https://www.instagram.com/ricochii_music/?hl=ja

















