川廷 昌弘(かわてい まさひろ)さん
(株)博報堂DYホールディングス/(株)博報堂CSRグループ推進担当部長。テレビ番組「情熱大陸」などの立ち上げに関わる。2005年から地球温暖化防止国民運動「チーム・マイナス6%」でメディアコンテンツを統括。現在はCSRグループ推進担当部長でSDGsを推進。神奈川県非常勤顧問(SDGs推進担当)や「茅ヶ崎市SDGs推進アドバイザー」など委嘱多数。2020年9月には初の著書『未来をつくる道具 わたしたちのSDGs』(¥1,760/ナツメ社)を出版。
在宅ワークに行き詰まり、徒歩5分の海へ
茅ヶ崎暮らしは7年、湘南の海辺暮らしは25年以上という川廷さん。(株)博報堂DYホールディングスグループ広報・IR室CSRグループ推進担当部長をはじめ、神奈川県非常勤顧問など、数々の肩書を持ち、「SDGs」推進のために国内外を飛び回っています。
そんな川廷さんから、『茅ヶ崎ワーケーション』という概念が生まれたのは、新型コロナの緊急事態宣言に伴う在宅ワークに行き詰まりを感じたころ。仕事の合間に、自宅から徒歩5分の海でリフレッシュしたことがきっかけでした。
「波打ち際に足を浸すだけで、心身ともにリフレッシュできたんです。海や自然に恵まれて、リゾートの要素もある茅ヶ崎なら、在宅で『ワーケーション』ができると気づいたんです。勝手に『ザイタク・ワーケーション』と名付けて、茅ヶ崎だから『茅ヶ崎ワーケーション』だなと」と目を細めます。
その後、(2020年)10月には沖縄へ旅行し、本来の「ワーケーション」も体験。その難しさを思い知ったそうです。
「あの海を目の前にして、仕事をするのは勿体ないし、よほど切羽詰まっているとか、急ぎでなければテレワークはできないですよね」
海辺の街への「喪失感」から、湘南へ
兵庫県芦屋市出身の川廷さん。「幼少期は磯釣りをして海辺で過ごしたものですが、埋め立て開発で、画一的な住宅街に様変わりしてしまった。さらには、阪神大震災で全てが倒壊して。だから、僕は海辺の街への喪失感が2度もあるんです」
そんな郷愁に駆り立てられて選んだのが、街の空気感が似ている湘南でした。
仕事の活力は、「海」
茅ケ崎駅南口・雄三通りに構えた理想の木造の家から、会社のオフィスがある赤坂までは電車で約90分。「湘南ライナーでは、メールの返信からはじめて、会議の資料作りという感じに、都内に近づくにつれて、自然と仕事モードに切り替わっていきます。東京駅に着いたら、もう完全にエンジン全開ですよ」と笑います。
「夜も〝海に向かって〟帰ることで、気持ちの切り替えができます。往復3時間かけても、茅ヶ崎に住む価値があると思っています」
また、サーフィン歴30年の川廷さんにとって、「波乗り」の時間もかけがえのないひと時です。「真夏のコンクリートジャングルで働いている時や、『今日は波が良い』という日でも、朝一でサーフィンさえしていれば、自分の中でのメリハリができて仕事に集中できるんです」
メリットを感じていた在宅ワークが負担に
コロナによる在宅ワークは当初、分刻みで予定を組めるZoom会議にメリットを感じていたそうです。しかし、次第に負担を感じるように。
「今まで移動時間を利用して会議の内容を整理したり、心身のリカバリーをしていたことが、物理的にできなくなってストレスが溜まりました。大好きな書斎に、会議の淀んだ空気感が残ることも嫌でした」
こうして、川廷さんにとって、原風景ともいえる海辺での束の間の休息から『茅ヶ崎ワーケーション』が誕生したのです。
「茅ヶ崎に住んでいる価値」を再認識
「仕事が忙しくて、茅ヶ崎に『住んでいる価値』を忘れていたけれど、コロナをきっかけに見直すことができました。パートナーと早朝の海を散歩して朝日を見たり、近所を歩いてテイクアウトしたりして『近くにこんないい店があったんだね』といった発見もたくさんあったしね」とほほ笑みます。
SDGsの専門家であり、第一人者として著書も出版している川廷さんは、「お気に入りの店でお金を払うことで地域経済が回ることも『SDGs』の大切な要素のひとつ」だと語ります。
「SDGsとコロナ、働き方。一見、別の話のように感じますが、全てつながっています。コロナをネガティブに考えるのではなく、コロナをきっかけに誕生し、神奈川県のSDGsパートナーにも認定された『茅ヶ崎foodaction』のように、自分たちで茅ヶ崎に住んでいる価値やメリットを高めていけたら良いですね」
働き方もしかり。
「明日は波が良いから午前は茅ヶ崎でオンライン会議にしよう!」「仕事の気分転換にちょっと海でも見るか」など、もともと茅ヶ崎には多様な働き方を選択できる土壌があり、柔軟に受け入れてくれるおおらかさがあります。
また、都内まで在来線で通勤圏内で、駅前にはコワーキングスペースも次々と誕生し、テレワークにもシフトしやすい環境が整っています。
「こんなに恵まれた環境は、茅ヶ崎以外どこにもありませんよ」と川廷さん。SNSでは、Zoom会議の合間のサーフィンや、海辺の朝市で購入した「茅ヶ崎野菜」などの写真ともに『茅ヶ崎ワーケーション』や茅ヶ崎暮らしを発信。「勝手に茅ヶ崎のセールスマンになって、魅力をアピールしています」と笑います。
せっかく茅ヶ崎で暮らしているなら、川廷さんに倣って今すぐ『茅ヶ崎ワーケーション』を謳歌しないわけにはいきませんね。
【この記事はタウンニュース茅ヶ崎版(2021年1月8日号)掲載分を加筆・修正したものです】