「『SDGs』って、みんなが今よりも幸せになることなんです。そんなに難しく考えないでください」。穏やかな笑みを浮かべながらそう話すのは、(株)博報堂DYホールディングスで日本のSDGs推進に向けた旗振り役として、神奈川県や茅ヶ崎市などの自治体でもアドバイザーを務める川廷昌弘さんです。7年前から茅ヶ崎に暮らし、「人に言う前に自分から」と私生活でも今できることを体現しています。
茅ヶ崎には土壌がある!
「①貧困をなくそう」「⑪住み続けられるまちづくりを」「⑭海の豊かさを守ろう」など17項目を持続可能な開発目標として掲げるSDGs。世界共通言語として2030年の目標達成へ各地で取り組みが進んでいますが、川廷さんは「まずはぞれぞれの身の丈にあった行動を考えてみてほしい」と語ります。
ここ茅ヶ崎では、「知らず知らずのうちにSDGsをやっている」と川廷さんは言います。例えば、茅ヶ崎海岸沿いのサイクリングロードでの「砂山とんぼ」。台風などで道上を砂が覆ってしまった際、設置しているグラウンド整備用のトンボを使って″気づいた市民″が砂を除去します。サイクリングロードの利用者たちによって、通行しやすい場所を維持するために自らの手で整えています。
この思いやりの意識こそが、SDGsには欠かせないと川廷さん。「いい街にしたい。住みやすい街にしたい。自分たちが好きな街であってほしいと考える人が多いです」と茅ヶ崎について評します。
我が家で実践 SDGs
川廷さんがSDGsで大切なこととして挙げるのが、「見える化」「価値の向上」というキーワードです。
茅ヶ崎市内に構えた家は、適切な森林管理・保全のためのFSC認証を受けた材料と国産木材を使った木造住宅です。工務店や林業家などに話を聞きながら、「流通経路を見える化」して完成させた環境配慮型住宅では、再生可能エネルギーも利用します。
そんな我が家は「空気そのものが温かい」と、「居住空間の価値向上」を実感しています。土曜日には茅ヶ崎公園野球場で開催されている「海辺の朝市」で地場野菜を仕入れるなど、地域経済の循環にも思いを巡らせる日々です。
「茅ヶ崎市総合計画」にも紐づけ
茅ヶ崎市は2021年に茅ヶ崎市総合計画を策定しました。茅ヶ崎市総合計画はまちづくりの基本指針として、市が何を実施していくかを示すもので、SDGsと同じ2030年を目標としています。この策定にあたって、市は2030年のSDGsの達成に向け、市がどのように行動していくか、市の活動とSDGsの目標との紐づけを行いました。川廷さんは、「市だけではなく、市民のみなさんも当事者として自身のライフスタイルとSDGsを結びつけてほしい」と期待を膨らませます。
SDGs実現のポイントはコミュニケーション
2020年10月、川廷さんの初の著書として『未来をつくる道具 わたしたちのSDGs』(1760円)がナツメ社から出版されました。川廷さんはここで、「SDGsを使いこなすことは、人々とよい影響を与え合うようにコミュニケーションすること」とも語っています。
SDGsは、未来を担う子どもたちにも積極的に考えてほしいテーマでもあります。1990年代半ば以降に生まれたた″Z世代″とも議論することがあるという川廷さんは、「子どもや学生の価値観も教えてほしいと思っている。考えを共有して、行動に移すことでみんなが幸せな時代をつくっていければ」と話します。
最後に笑顔で一言。「いま自分に何ができるのか、みんなで一緒に考えてみましょう」