約70年前に地域住民らによって茅ヶ崎市立小出小学校に寄贈された後、劣化などを修復して3年前に披露されたピアノが4月22日(金)・23日(土)、誰でも自由に弾くことができる「駅ピアノ」となって登場します。申し込み不要で飛び入りで参加可能。寄贈も修復も、住民たちの手によって実現した「小出の宝」が、地域を越え、世代を超え、新たな文化交流を生み出します。
小出のピアノは約70年前、当時はオルガンしかなかった旧小出村立小出小学校に地域住民が芋を売って得た代金を集めて購入し寄贈されたもの。初めてピアノを使った音楽の授業では、児童の驚きと喜ぶ様子は大変なものだったといいます。ところが、時を経て、老朽化や故障によって使用できなくなってからは廃棄されずに校長室の一角に置かれていいました。
そうした中、2017年3月の卒業式で当時校長を務めていた野木直樹さんが修復について願い出たところ、来賓で出席していた鈴木暹(すすむ)さんが熱意に心を打たれました。ピアノが寄贈されたときに5年生だった鈴木さんは、卒業生として役に立ちたい一心で、修復の方向性を模索。在籍する「小出地区まちぢから協議会」に提案し、総会に諮った上で同意を得たことから募金活動が展開され、約半年で目標金額に到達。修復されたピアノは19年5月に児童や地域住民に披露されました。
3回の中止に負けず
修復されたピアノでしたが、コロナによって活用の機会を奪われてしまいます。各地で行われている駅ピアノに着目し、ラスカ茅ヶ崎での開催へ向けて準備が進められていましたが、20年4月に感染拡大防止の観点で中止に。その後も度重なる感染状況の悪化で、3回もの中止を余儀なくされました。
それでも、「小出の宝」とも言える伝統のピアノの音色と、地域住民の思いを多くの市民に感じてもらおうと、協議会が根気強く企画。市の感染対策に沿う形で2日間の開催にこぎ着けました。主催者は「触れて、弾いて、聴いてみてほしい、70年前の音を。音楽を通じ世代を超えた文化交流が生まれたら」と話します。
駅ピアノの開催に際して、野木さんは「小出のピアノを市民に弾いてもらえることが実現できてうれしい」と率直な思いを述べ、「(ピアノを通じて)小出の温かさ、そうした地域について多くの人に知ってもらいたい」と期待感を口にします。
鈴木さんは「ピアノを寄贈してくれた方、修復のために募金してくれた方にお礼を言いたい」と話し、地域への感謝の気持ちを示しています。
駅ピアノは、ラスカ茅ヶ崎を会場に実施。開始は22日が午前10時30分から、23日が同10時からで、終了は両日とも午後8時。参加は親子でも一人からでも可能で、希望者は直接来場を。
詳細は事務局【電話】0467-54-6525。受付時間は午前9時から午後9時まで。
同校では今後、ピアノを卒業式などの行事で活用していく方針です。来年迎える同校150周年の記念事業では卒業生のピアニストを招いた演奏会が予定されています。