横浜市は2022年12月15日、大正時代の外国人居住の様相を知る手掛かりになる貴重な建造物として、横浜市指定文化財に中区柏葉の「岩田家住宅」を指定。「本牧十二天緑地」を市地域文化財として登録した。
岩田家は個人が所有する大正元年頃の建造物。関東大震災前に建築された外国人向け住宅として、横浜に現存するほぼ唯一の遺構とされる。洋館としては素朴で簡素な意匠だが、外観は出窓や塔屋など洋館らしい要素を採用。室内は天井高で充実した暖炉廻りの意匠などを用い、現在は失われているものの当初の下見板張、鎧戸付き上下窓の外観を含め、関東大震災前の横浜の外国人居住地に建つ中小規模洋館の一典型とも考えられ、これまでほとんど明らかにされてこなかった山手周辺部における外国人居住の様相を知る手掛かりとなることから、横浜の地域史の中でも貴重な存在となっている。
地域の声かたちに
本牧十二天緑地は、本牧神社の旧境内地だった場所だ。海岸線に面し、その風光明媚(めいび)なたたずまいは江戸時代以降の名所図会にも登場するなど、古くから景勝地として親しまれていた。この地で455年以上続く県指定無形民俗文化財「お馬流し」の神事は1566(永禄9)年以降、神社が中区本牧和田に移転した今も継続されている。
終戦後に接収された同地が国へ返還された際、地域住民から保存を望む声が上がったことから現在は都市緑地として保存されており、今回の文化財登録も地域の声が届けられたかたちだ。緑地内には石造の鳥居や加工された石材などが確認でき、本牧地区の歴史を知る上で重要な土地となっている。
そのほか指定文化財に薬王寺=金沢区=の木造地蔵菩薩坐像、正安寺=栄区=のイヌマキ(天然記念物)を登録。これにより市の指定文化財は 169件、地域文化財は 99件になった。