茅ヶ崎市松浪在住のかんばやし麻さんが手掛けた『ぼくのしあわせないのち』(みらいパブリッシング発行)が、このほど「第9回絵本出版賞」大人向け絵本部門で最優秀賞を受賞し、絵本作家デビューを果たしました。
受賞作は、海辺の小さな町で暮らす心に傷を負ったおじいさんと、黒ネコとの絆を、ネコの視点から描いたファンタジー。やさしい筆致のイラストで「命」について表現しました。
おじいさんのモデルは、98歳になる義兄の父親。日を追うごとに記憶が薄れていく様を間近で見る中で、着想を得たと言います。発行元の編集者からは「『しあわせ』について問いかけるような、感動的な物語」と評されました。
受賞に際して、かんばやしさんは「『まさか自分が』と驚いており、実感がありませんが、作品が認められてうれしいです」と語りました。
茅ヶ崎移住をきっかけに創作
静岡・東伊豆町で生まれ育ったかんばやしさん。5年前、姉夫婦とともに茅ヶ崎に移住したのを機に、絵本の創作をスタートさせました。美術系の短大を卒業し、陶芸の指導員などの経験もあったものの、それまで本格的な創作活動はしたことがなかったと言います。
絵本という表現手法を選んだ理由について「ちょうど親の介護を終えたばかりで、親や愛猫など大切な存在との別れを浄化したいという想いがありました。親が小学校の教員だったこともあり、絵本は子どもの頃から身近な存在でした。絵と文章で伝えられるのが絵本の魅力であり、強みだと思います」と語りました。
公募展に出品すると、処女作と第2作は奨励賞、第3作となる今作は最優秀賞を受賞しました。いずれの作品もネコの目線で描かれているものです。
漫画『ブッダ』の影響
実体験に加えてモチーフとなったのは、手塚治虫の漫画『ブッダ』で描かれたウサギの説話。「読んだのは40年前になりますが、飢えた老人を救うために自らの身を投げ出すウサギの姿がずっと頭の中に残っていて。自分の大切なものを引き換えにしてでも、両親や愛猫と会いたという気持ちがあった」とかんばやしさん。「今の自分にあるものを描きました。生きとし生けるもの全ての尊さや、慈しみの大切さについて伝えられたら」
絵本はB5判32ページ、上製、オールカラー。価格は1540円(税込)。対象年齢は5歳〜、5月23日から全国書店ほか、オンラインで発売しています。