今後、発展の可能性があるビジネスプランに発表の機会を設け、新たなチャンスにつなげてもらおうと行われている「かながわビジネスオーディション2022」。最終審査会が1月25日に横浜市内で開催され、茅ヶ崎市本村に本社を置く㈱アグナビ(玄成秀社長)が、「革新性が高く社会に変化をもたらす可能性を秘める」ビジネスプランに贈られるイノベーション大賞を受賞しました。
同社は2020年創業。提案したのは1合(180ml)サイズの缶に入った日本酒を「ICHI-DO-CAN」という名称で販売する事業です。
小容量にすることで、若者や女性などこれまで日本酒に馴染みがなかった人たちも手軽に楽しめるように。そのほか、従来主流だった瓶に比べて、割れる心配がなく、軽い、デッドスペースが少ない、といったメリットを生かし、物流コストを大幅に下げることが可能になるそうです。
また、導入のハードルとなっていた酒蔵の設備投資負担を軽減するため、自社の充てん工場も稼働しています。
玄社長は「一合缶という新たなパッケージを使うことで、販売に苦しんでいた地方の酒蔵さんの優れた商品を国内外へと販売し、日本酒市場そのものを広げていきたい」と意気込みます。
日本酒の魅力 国内外に
今回評価されたのは、日本酒を小容量で持ち運びやすく、パッケージもおしゃれな一合缶(180ml)に入れることで、輸送コストを下げるとともに、若者や女性も手に取りやすくしようというアイデア。すでに缶に酒を充填する自社工場が稼働しており、玄さんは「新しいパッケージを生かして、海外にも日本酒の魅力を発信し、市場を拡大したい」と語ります。
ソフトバンクの孫正義さんが刺激に
出身は群馬県。中学・高校は北海道函館にある男子校に進みました。ある日、ソフトバンクグループ孫正義さんのニュースを見て「自分も将来は起業して『孫の次は玄だ』と言われたいと思ったんです」。そこで、狙いを定めたのが「食」。東京農業大学に進み、農作物の生産から消費までを学みました。
「一合缶」は大学院生時代に、大学の学生が醸造した日本酒を販売するアイデアを求められた際に浮かんだもの。2020年、㈱アグナビを茅ヶ崎市本村で創業し、事業の立ち上げに奔走してきました。
「誰もやったことがないので、大変なことばかり」と言いますが、アメリカやブラジル、シンガポールでも販売が決まるなど、猛烈な勢いで事業を前進させています。「もともとマイナスからのスタート。あとはプラスしかありませんから」
「茅ヶ崎を選んで良かった」
茅ヶ崎にオフィスを構えたのは「知人がいてたまたま」。でも、「地に足のついた事業をしたかったので、都内や横浜ではないと思っていた。行政や経済団体の支援も手厚く、茅ヶ崎を選んで良かった」と笑います。
今後の目標は「安全でおいしい食を多くの人に届けること」。その行動力とビジョンが生み出す変革は、これからも目が離せそうにありません。