東京湾に浮かぶ唯一の自然島・猿島に向かうための「猿島航路」は、1995年7月の再開から30周年を迎える。当初、6~7万人だった年間の来島者数は昨年度、23万人を記録するまでに成長。定期船は横須賀を代表する観光スポットへの交通手段として重要な役割を担っている。
猿島航路は京浜急行グループの国際シップサービスが運航していたが、1993年に事業撤退。これにより、猿島への渡航ができなくなった。こうした中で横須賀市から再開の打診を受けたのが民間企業として海難救助サービスを行っていた㈱トライアングル。2年間の航路休止期間を経て、開設に踏み切った。
当初は猿島の知名度の低さに苦しみ、2000年代初頭まで来島者数は横ばいで推移。市などが観光振興を地域経済の活性化の柱に掲げるようになった08年頃から風向きが変わり始め、09年に100万人の大台を突破した。15年に猿島砲台跡が国指定史跡に登録されたことで幅広い世代の注目を集めるようになり、人気アニメの「ワンピース」とのコラボ企画や島をディスコホールに見立てた音楽イベント、静謐な夜間の時間を活用したアートイベントなど官民連携の仕掛けが奏功。必然的に乗船客数を押し上げる結果となった。
このほかに、日本財団が支援する船の無人運航船の実証実験や島内のゴミを8分別する資源活用プログラムなども積極展開。24年に就役した新造船「NEW KUROFUNE」は、船体のユニークなデザインとともに、地域住民や観光客を巻き込んだ社会活動が評価され「2024年度グッドデザイン ベスト100」を受賞している。
同社の鈴木隆裕社長は「安全安心な運航はもちろん、猿島公園指定管理者の一員として環境や文化財を守り、魅力を伝え続けていきたい。これからも多くの人に、猿島の豊かな自然や多彩な史跡に触れてもらいたい」と話している。
30周年を記念して7月7日(月)限定で猿島往復乗船料と入園料を無料に。7月19日(土)から8月31日(日)まで小学生以下は乗船料無料とする。このほかに夏季限定で猿島発最終便の時間を延長して夕暮れの〝無人島タイム〟を楽しんでもらう。