企業のテレワーク導入や通勤削減などが広がる中、都市部から小田原市など県西地域への移住が増えている。移住の決め手や、移住をサポートする行政、民間の取り組みを連載する。
小田原市栄町でゲストハウス「ティピーレコーズイン」を営む内田佑介さん(35)は、コロナ禍で宿泊客が激減したことをきっかけに昨年3月、お試し移住としての宿の提供を企画。6月頃から問い合わせが増え、市の移住相談窓口からの紹介も含め案内した14組のうちすでに4組が小田原に住居を構えた。
東京都文京区から市内本町に移住してきたレムコ・アバーソンさん(43)と望月幸美さん(同)も、昨年7月にお試し移住を利用。1歳の娘がいる子育て世代だ。テレワークにより通勤の必要性が減ったことをきっかけに、新幹線が停まる自然環境の良いまちを検討していたという。内田さんは事前に知りたいこと、体験したいことを聞き、「外国語が通じるビアバーに行きたい」など希望に沿って地域を案内して回った。
お試し3日目に新築戸建ての契約を決めた2人。「窓からは海も山も見えて自然が近い。子どもの遊び場や買い物もすべて市内で叶えられる」。さらに、これまで暮らしていたマンションの家賃に比べ、住宅ローンと新幹線通勤代を足しても「断然安い」点も決め手になった。9月から小田原暮らしをスタートさせ、「生活も人間としても豊かになった」と満足そうに笑顔を見せた。
内田さんは「人やお店を事前に知ることで不安を払拭し、暮らしのイメージを膨らませてもらえたら」と話している。