約1万本の桜が咲き誇る「桜のまち」である秦野市は、桜の名所スポットがズラリと揃います。秦野市制施行70周年を迎えた2025年のこの機会に、秦野市の「桜」がどのように育まれ、愛されてきたのか調査しました。
- 「はだの桜みち」「水無川沿い桜並木」「弘法山公園」の桜の歴史を調べました。
【桜調査スポット】
1.はだの桜みち

約6.2km続く桜並木
秦野を代表する桜スポットの1つ「はだの桜みち」。西大竹から堀山下まで(県道62号・西大竹交差点~県道706号・新橋交差点)の区間には、約6.2kmにわたって神奈川県内最長の桜並木が続いています。
「桜みち」ができる前
桜みちが整備される前、堀山下には「桜土手」と呼ばれる土手があり、桜の名所として市民に親しまれていました。はだの歴史博物館によると、桜みち沿いの「さくらどて公園」(堀山下408)にかつての痕跡が残っているほか、「桜土手」の名前は「桜土手古墳群」の名称として引き継がれているそうです。

桜みち沿いにある「さくらどて公園」。かつての「桜土手」の痕跡を見ることができます
県道整備の過程で
それでは、一体いつからソメイヨシノの桜並木ができたのか。県道を管理する平塚土木事務所によると、県道62号の整備が始まったのが1967年ごろから。道路を整備する中で、街路樹として選ばれたのが「ソメイヨシノ」だったそうです。
- 県道整備の過程で、偶然にも県内最長の桜並木が誕生したと言えそうですね!
市制施行60周年時に公募で愛称決定
「はだの桜みち」の愛称は、秦野市制施行60周年を記念し2015年に市民から愛称を公募して決定しました。149件の応募があり、その中から覚えやすさ親しみやすさといった点で「はだの桜みち」が選ばれたそう。当時の記念セレモニーの様子は、タウンニュース秦野版に掲載されています。
- 「はだの桜みち」の名称がついたことで、今ではすっかり桜の名所として定着しました。
2.水無川沿い桜並木

水無川カルチャーパーク沿いの桜並木
秦野の大動脈とも言える水無川沿いは、神奈川県内でも有数の名所。ソメイヨシノをはじめ、おかめ桜、しだれ桜など約600本からなる500mの桜のトンネルが楽しめます。
河川も景観もきれいに
現在は水質・景観ともに美しい水無川ですが、1970年ごろは生活排水の流出による河川の汚濁が問題となっていました。その後、各家庭の努力や1980年代から普及した公共下水道により水質が改善。河川敷の設置されている石積みの護岸や散策路も整備され、景観も整いました。秦野市公園課によると、水無川沿いが現在の形に整備されたのが1988年ごろ。その際、街路樹として県がソメイヨシノを植樹したことが、水無川の桜並木の起源だそうです。
「水無川緑地」は手づくり郷土賞を受賞
美しい桜並木の水無川緑地は、1989年に「生活の中にいきる水辺」として「手づくり郷土賞」を受賞。2005年にも、継続的に魅力がある地域を実現していることが評価され、「手づくり郷土賞」の大賞に選ばれています。
- 「手づくり郷土賞」は、昭和61年度に創設された国土交通大臣表彰です。地域活動によって地域の魅力や個性を生み出している良質な社会資本とそれに関わった団体などが表彰されます。
上流のおかめ桜は市民の手で
また、水無川の「平和橋」から上流には、おかめ桜が植えられています。これは、2010年の全国植樹祭を記念して市民の手で約300本植樹されたものです。平和橋北側から上流に向かい約1kmに渡って、おかめ桜と菜の花のピンクと黄色のコントラストを楽しむことができます。
- 植樹によって、水無川沿いの桜並木はより長くなりました。

平和橋から上流のおかめ桜(2025年3月17日撮影)
3.弘法山公園
浅間山、権現山、弘法山の3つの山一帯を指し、神奈川県立自然公園にも指定されている弘法山公園。ソメイヨシノを中心に、約1,400本の桜が里山を染めます。
日露戦争での勝利記念し植樹
この3つの山の桜の起源は古く1905年ごろ、日露戦争での勝利を記念して大根村の村長が苗木を寄付したことから始まりました。その後、大正天皇の即位を記念して植樹された馬場道周辺の桜が成長し、桜の名所と呼ばれるに至ったとされています。
「弘法山桜まつり」の開催
そんな桜の名所を盛り上げようと、1984年には市民が主体となり「弘法山桜まつり」が開催されました。第1回開催では、鶴巻の旅館、果樹園や農家、乗馬クラブ、酒造会社などが結成した弘法山周辺観光開発推進協議会が中心となって、源平綱引き合戦を始めさまざまな催しが行われました(参考記事はこちら)。現在は秦野市が主体で、「はだの桜まつり」を弘法山公園・カルチャーパークなどを会場に行っています。
弘法山公園の桜を後世に
また、現在では弘法山公園の桜を後世に残すため、団体や市民の手で桜の苗木の植樹などが盛んに行われています。2025年2月には秦野市が桜の木のオーナーを募った植樹イベント「市制施行70周年記念弘法山公園桜の植樹祭〜みんなでつなぐ未来の桜〜」を実施しました。

2025年の弘法山の植樹の様子
- 弘法山公園の桜を後世に繋いでいこうと、行政・市民が一体となって植樹に取り組んでいます。
秦野市の桜の名所は、当初から名所を作ろうとしたわけではなくそれぞれの経緯で誕生しました。それでも、桜を愛する市民の心は1つ。名所を生かしたイベントの実施や植樹などの保全活動は、今後も続いていきそうです。