出会いの場は、ピンク色の小花が一面に咲き誇る「藍」の畑ー。
茅ヶ崎市芹沢で藍染め工房『 Saiai Studio』を主宰する佐野太紀さん(38)はこの夏、川崎市出身の2つ年上の女性と入籍しました。
「茅ヶ崎の藍染めを広めたい」と、種の採取から藍葉の栽培、染料づくりまで、ひとり手作業で行ってきた佐野さんの歩みは、「最愛の女性との出会い」という思わぬ形で一つの実を結びました。伴侶となった女性の名前は、なんと藍さん。ふたりで育んだ「藍」にまつわる物語を紹介します。
普段は都内を拠点に、バレエの指導者として活躍する藍さん。2020年10月、スマートフォンに、自動更新で一つの記事が上がってきました。藍の花が見頃を迎えたことを伝えるタウンニュースの記事でした。
自分の名前の『藍』の花を実際に見てみたいー。かねてから、そう思っていました。「でも、徳島あたりまで行かないと見られないと思っていた。こんなに近くで見られるなんて」。
記載してあった連絡先にメールし、藤沢北部の畑へ訪れることにしました。
秋晴れの空の下、藍さんは畑で藍の花を鑑賞したり、佐野さんと雑談をしながら栗の実を拾ったり。イギリスやフランス、ニューヨークなど、バレエ留学の経験もあり、読書家で、アートや文化などに造詣が深い藍さん。ふたりのおしゃべりは尽きませんでした。
互いに「特別な感情は生まれなかった」と言うものの、「楽しくて、時間が過ぎるのがあっという間だった。気付いたら陽が傾いていた」と笑い合います。
ゆっくりと距離縮め
意気投合したふたりは、その後もメールで情報交換を行うように。工房では、藍染め体験も行いました。趣味の刺繡のための糸を染めたそうです。
「その時、『この間のお礼に』って畑で拾った栗を甘露煮にして持って来てくれたんです」。佐野さんはそう嬉しそうに目を細めます。
たまたま都内の博物館で「世界の藍」をテーマにした展覧会もあり、一緒に出向いたことも距離を縮めるきっかけになりました。ふたりで過ごす時間が増え、ごく自然な流れで、ともに人生を歩むことを決めました。
藍さんは「出会いのきっかけは不思議だったけれど、結婚という結果自体は全く不思議じゃない」とおっとりと笑います。
出会いのルーツは藍さんの父親
実は「藍」にまつわるエピソートは40年前に遡る。藍さんの名前は、インダス文明を研究する考古学者の父親が「インディゴ(藍)」から名付けたもの。また、「詩人の草野心平さんの『藍』をモチーフにした一編も由来しているそうです」
今年も10月下旬から開花、種の無料配布も
今年も、10月下旬から藍の花が見頃を迎える。「種は11月上旬から採取できると思う。花を観賞したい方や、家庭用に種が欲しい方は声を掛けて」と佐野さん。
(問)【メール】hpspjp3@gmail.com、またはフェイスブック「Saiai Studio」からメッセージ