「海沿いのまちで潮風を感じながら、愛犬と悠々自適に過ごしたい」。そんな暮らしを望む人も多いと思います。大手不動産情報サイトSUUMOが今年1月に発表した「愛犬と暮らしたい街20選(首都圏版)」では3位にランクインした茅ヶ崎。都心や横浜への通勤圏内でありながら南には雄大な海とどこまでも続く砂浜、北には四季の移り変わりを感じられる美しい里山と、多様な自然に囲まれています。犬と一緒に入れるカフェなども多く、愛犬とのお散歩やお出かけを存分に楽しめます。
今回は、愛犬と一緒に素敵な茅ヶ崎ライフを送っている方をご紹介します。
茅ヶ崎市東海岸南在住 上田 智士(うえだ・さとし)さん
群馬県高崎市出身。学生時代を神奈川県大和市で過ごす。卒業後はさいたま市、川崎、横浜と移り住み、2013年に茅ヶ崎へ移住。ご家族は智士さん、奥様、長女(高2)、長男(中3)の4人と、イタリアングレーハウンドのゴメスくん(3歳)、ミニチュアピンシャーのやえちゃん(1歳)。湘南・茅ヶ崎エリアを中心に快適なドッグランを運営する「Shonan Dog Field」共同代表。日課はゴメスくん、やえちゃんとの海さんぽ。
「徒歩で海と駅の両方に行ける場所を探したら、茅ヶ崎一択」で移住
大学進学を機にふるさとの群馬から神奈川へ移り、大和市の親戚のもとで下宿をしていたという上田さん。当時、茅ヶ崎との接点はほぼありませんでした。「平塚の海岸にあったビーチバレーコートに行ったことがあるかな?というくらいでした。僕が学生の頃は、まだサザンビーチもなかったと思うし」
茅ヶ崎に来たのは2013年。きっかけは思いがけない出来事でした。「住んでいた賃貸物件のオーナーが代替わりするタイミングで、建物の取り壊しが決まったんです。当時は横浜の都筑区(センター南駅)にいたんですが、全然不満とかなかったんですよね。気の合う仲間も多くいましたし、ショッピングモールなどもたくさんあって買い物には困らないし、それでいて緑に囲まれていて。横浜といっても田舎な感じの雰囲気も残っている場所で、生活しやすいところでした」
気に入っていた住まいからの引っ越しを余儀なくされ、一度は近くで探したものの、気に入る物件には出会えなかったそう。その上でなぜ、次の住まいを茅ヶ崎に決めたのでしょうか。
「海なし県の出身なので、せっかくなら一度海のそばに住んで、日常に海がある暮らしを送ってみたかったんです。一番の決め手は、歩いて海と駅の両方に行けること。隣の藤沢や平塚は駅から海までの距離が結構あって、最終的には茅ヶ崎一択でした。駅から自宅までの距離がだいたい1.7kmで、徒歩15分くらい。コロナ前の話ですが、東京や横浜で飲んで帰ってきて、駅から歩いて帰ると良い具合に酔いが覚める。ちょうどいい距離です(笑)」
ちなみに上田さんのお仕事はIT関連の営業職。都内で勤務したのち、10年ほど前から自営でビジネスを営んでいます。主な職場は自宅で、都内には時々打ち合わせなどで出向く程度。「都心へは電車で1時間、横浜までは30分です。新宿や渋谷を含め乗り換えなしで行ける点は便利ですね」
壁がなく馴染みやすいけど、干渉はしない。“ちょうどいい距離感”を生む茅ヶ崎の人々
最初は現在の住まいと同じエリアである茅ヶ崎市東海岸南の賃貸住宅で暮らし、お子さんが大きくなってきたところで家を購入。食料品や日用品を買えるお店をはじめ、クリニックや動物病院が近所に複数あり、隣駅の辻堂や平塚には大型のショッピングモールもあります。
スローな雰囲気が流れる茅ヶ崎。平日でも気取らずにまちを散歩できるといいます。「前に住んでいた横浜では、僕くらいの年の男性が平日の日中に出歩いていると少し目立つ感じがありましたが、茅ヶ崎ではわりと気楽に歩けます。むしろ、同じようにうろうろしている人が多い気がしますね。決してあやしいまちではないですよ(笑)」
茅ヶ崎の人の印象は「地元の方も先住組の方も、移住してきた人に対して壁がないので、地域のコミュニティにもすぐに馴染めます。かといって、お互いあまり干渉はしない。ちょうどいい距離感ですね。やりたいことをやっている人たちが多く、自由で気ままな感じを受けます。自分の子どもたちを見ても、茅ヶ崎に来てより開放的なマインドになったのか、変に引きこもらなくていいですね」
nonno nonna、あさまる、えぼし、フラワーコーヒー。美味しいグルメを楽しめるお店が多数。市外へのアクセスも良好
個性的なお店が多いのも、茅ヶ崎の魅力の一つ。「おすすめは一中通り沿いにあるイタリアン『nonno nonna(ノンノ ノンナ)』です。ご夫婦でやっているお店で、ウニとタラコのスパゲッティとオニオングラタンスープは絶品。茅ヶ崎に来た当初から通っていて、子どもの成長も見守ってくれています。海鮮系では『あさまる』、『えぼし』が有名かな。コーヒーショップも良いお店が多くて、雄三通りの『フラワーコーヒー』では美味しくて珍しいコーヒーが飲めます。日本酒の美味しいお店、焼き鳥の美味しいお店などもあるので開拓するのが楽しいです」
わざわざ市外へ足を運ぶおすすめ店も教えてくれました。「『魚久』という、中井町にある老舗の魚屋によく行きます。実はここ、一度閉店したんですが地元住民が復活を熱望して再開したんです。とにかくどれも美味しい。欲しい魚を選んでお願いすれば店内で刺し盛りにしてくれます。人気店で、人をかき分けて店に入っていかないと買い物できません(笑)。圏央道のおかげで、県央エリアには行きやすくなりましたね」
茅ヶ崎にやってきた「イタグレのゴメスとミニピンのやえ」
さて、話題は愛犬との暮らしに移ります。
上田さんが犬を飼い始めたのは3年前。「以前から飼いたいと、家族みんなで思っていました。ちょうど子どもが中学に入って習い事が落ち着いて、そのお手伝いなどが一段落したので、飼い始めるのに良いタイミングだったんです」
まず“イタグレ”のゴメスくんが上田家の一員となり、後に“ミニピン”のやえちゃんが仲間入り。「ゴメスとの暮らしの楽しさにハマっちゃって、もう1匹飼いたいなと。それに、1匹だとゴメスも寂しいかなと思って(笑)。予防接種などの費用は倍になりましたが…。2匹でよく遊んでいるので飼ってよかったと思っています」
当初、2匹目はゴメスくんと同じイタグレにしようと考えていましたが、ふと目に入ったミニピン(やえちゃん)が、なんと出身地と誕生日が上田さんとまったく同じ!「運命的なものを感じて、そのまま連れて帰りました(笑)」
毎日のお散歩担当は上田さん。
散歩中に愛犬と一緒に行くお店があるか聞いてみると、「実は飲食店には行ったことがないんです。散歩中は1人で2匹連れているし、わりとよく吠えるので…(苦笑)。近所にはGDO茅ヶ崎ゴルフリンクスの2階(TREX CHIGASAKI OCEAN CAFE)やサザンビーチに犬と一緒に行けるカフェもあるので、妻と2人で散歩に出かけたときに行ってみたいですね」
散歩が気持ちいい!茅ヶ崎と犬との相性は抜群
「茅ヶ崎は犬との相性が良いですね。海沿いの散歩は開放感があって気持ちよく、気分がいい。暑い夏よりも秋口から冬にかけてのほうが歩きやすくて好きですね。路地裏さんぽもおすすめ。樹木の色や金木犀などの香りで四季の移り変わりを感じられますし、知らなかったお店を発見できたり、まちに詳しくなれます。あとは柳島しおさい公園と北部にある茅ケ崎里山公園。芝生が広くて散歩にはうってつけです」
愛犬とのお散歩は飼い主同士がつながるきっかけにも。「同じ時間に散歩している飼い主の間でコミュニティができています。犬といると、知らない人と話すハードルが一気に下がって自然と輪に加われる。最近引っ越してきた人でも「どこから来たの?」と気軽に声をかけてもらえるようなフレンドリーさがあります。海岸には犬と散歩している人がたくさんいて、他愛のない話から地域の情報を仕入れることができたり、知り合いができたりするので、犬がいると良いことばかりですね」
自身のInstagram(@satoshi_u)にも愛犬の写真を投稿する上田さん。「“湘南の海で犬と散歩”って聞くとおしゃれなイメージを抱く方もいると思いますが、僕はリアルな日常をお伝えできたらと思って、写真を加工せずにそのままアップするようにしています。自分が楽しくてやっているんですけど、見た人が少しでも普段の茅ヶ崎の姿に共感してもらえたらうれしいです」
犬や飼い主が安心して過ごせる湘南・茅ヶ崎のドッグラン
湘南・茅ヶ崎を中心にドッグランを運営する「Shonan Dog Field」の共同代表という顔も持つ上田さん。設立のきっかけは、犬や飼い主が安心して暮らすにあたっての課題を感じていたことでした。「犬を飼う人が多いわりに、安心・安全・快適に遊べる場所が少ない。海でも遊べますが、釣り針や釘、炭などが落ちていることがある。また、公共の場で犬が嫌いな人も当然いる。そんな中で犬と飼い主、それ以外の方が心地よく過ごせる解決策がないかなと考えていました。
「人と動物との調和のとれた共生社会を目指す」というコンセプトのもと、持続可能なドッグランの運営方法を検討する日々。柱となるのは、「適正飼養の普及啓発」、「災害対策」、「地域活性化」の3点です。「平常時でも災害時でも、地域の人に必要とされるドッグランとは何か?を常に意識して全体の設計を考えるようにしています」
2021年3月より「GDO茅ヶ崎ゴルフリンクス」の一角に週2回程度、移動式のドッグランを設置。9月からは同場所に常設のドッグランを設置できることになり、リニューアルオープンに向けて現在準備中です。(9月25日(土)オープン!営業日は月曜日~土曜日の9:00~17:00です。詳しくはHPをご参照ください)
利用にあたっては料金が必要です。「持続可能なドッグランを運営管理していく上ではお金も必要なため、有料としています。なので、僕らとしては利用者の皆さんが満足していただけるよう、しっかり価値を提供していきたいと思っています」
利用者からは、『海だとノーリードで遊びにくいので、ドッグランはありがたい』、『自宅から歩いて行ける距離にドッグランがあるのはうれしい』、『自分が高齢で長い距離の散歩は難しいが、ドッグランがあると勝手に遊んでくれて助かる』といった声が。
「利用者とお話をしていると多くの気づきを得られます。例えば芝の長さ。フレンチブルドッグやチワワなどの目が出ている犬種は、芝が長いと目に当たって眼球が傷ついてしまうそうです。そういう犬種を飼っている方でないとなかなかイメージできないことですが、これはどんな犬種でも安全にドッグランで遊んでもらうためには欠かせない情報。本当に勉強になります」
ドッグランでは犬だけでなく、利用者同士のつながりを生むことも。「LINEで連絡を取り合って、友達同士で一緒に来てくださいます。同じ犬種を飼う人との情報交換って楽しいし、とても重要ですよね。どういうフードがいいのか?散歩はどのくらい必要か?肥満にならないように気をつけていることは?吠えグセに効果的なしつけの仕方は?そういう悩みが共有できる人がそばにいるのは心強いと思います。Shonan Dog Fieldでは、日によって“イタグレ”DAY、“ジャック”(ジャックラッセル)DAYなど同じ犬種が集まれるエリアを設けて、飼い主同士がお話ししやすい工夫もしています」
「犬の社交場」とも言われるドッグラン。愛犬が思い切り走ってストレス発散すると同時に、飼い主にとっても地域とのつながりを深められる貴重な機会となっているようです。
ドッグランをビジネス化し、地域に貢献できる仕事としていきたい
今後の理想としては「せかせかせずにのんびり暮らしたい」と語る上田さん。そのためにここ茅ヶ崎で仕事を作っていきたいと言います。
「ドッグランを市内に展開して、『犬と人が共生するまち・茅ヶ崎』を全国に先駆けて発信していきたいですね。また、ドッグランの取り組みをビジネスとして成り立つように育てていきたい。地域に貢献できるような仕事として持続可能なコンテンツになれば、若者が茅ヶ崎に留まるきっかけにもなるんじゃないかと思います」
他には、こんな思いも。「コミュニティを作りたいですね。以前住んでいた横浜のほうでは「おやじの会」というのがあって、父親たちが小学校と協力しながら新入生にレクリエーションをしたり、時には地域のお祭りに出店したりと、積極的に地域と関われる機会があった。この活動が結構楽しかったので、茅ヶ崎でもこういう活動ができたらと思います。ドッグランをやっているといろんな分野で活躍する人と知り合えるので、そこからコミュニティを広げていけるといいですね」
聞けば上田さん、高校時代に野球部をゼロから作ったとのこと。同好会から始まって、部員集めに奔走し、他校に道具を借りながら初代キャプテンとして部を牽引。群馬県大会ベスト8まで勝ち上がったこともあるそうです。ご本人は「たまたまです」とおっしゃっていましたが、ドッグランの普及や地域のコミュニティ作りを一からやっていこうとする“開拓精神”は、もしかしたらこの時の経験から培われたのかもしれません。
海のそばで愛犬との日々を楽しみながら、犬も飼い主も、そして地域の方々みんなが心地良く暮らせる環境を作ろうとする上田さんのチャレンジ。近い将来、茅ヶ崎は“愛犬と暮らしたい街”のみならず、“愛犬と安心して暮らせる街”になっているかもしれません。
information
■Shonan Dog Field
https://dog-field.work/
https://instagram.com/shonan_dogfield■nonno nonna
https://tabelog.com/kanagawa/A1404/A140406/14054543/■湘南茅ヶ崎 網元料理あさまる
https://shirasu.biz/■湘南茅ヶ崎の海鮮・浜料理 えぼし
https://www.eboshi.com/honten/■Flower Coffee/brew bar
https://flowercoffeebb.tumblr.com<ちがさき創業物語vol.5>
■魚久
https://tabelog.com/kanagawa/A1409/A140902/14067204/■茅ケ崎里山公園
http://www.kanagawa-park.or.jp/satoyama/■GDO茅ヶ崎ゴルフリンクス
https://chigasaki.golfdigest.co.jp/