featureBanner

<トルコナス農家 脇祥平さんの茅ヶ崎暮らし>脱サラして茅ヶ崎野菜を育てる。「これが自分らしい働き方」

シェアする
<トルコナス農家 脇祥平さんの茅ヶ崎暮らし>脱サラして茅ヶ崎野菜を育てる。「これが自分らしい働き方」

茅ヶ崎市東海岸南在住 脇 祥平(わき・しょうへい)さん
茅ヶ崎市生まれ。大学のゼミで農業政策を学んだあと、一度は企業への就職を選択。その後、脱サラして新たに農業にチャレンジしている新規就農者。「茅ヶ崎野菜」として人気急上昇中の「トルコナス」の生産者の一人として注目されている。趣味は夕暮れ時の海辺のランニング。

「秘密の花園」で育てられている茅ヶ崎名物 トルコナス

人の背丈を優に超える「壁」のような植物が生い茂っている。畑を囲うように植えられているのは「ソルゴー」と呼ばれるイネ科の植物だ。風よけ対策・虫除け対策の役割があるという。

この植物の壁の向こうに、トルコナス畑が広がっている

この、まるで「秘密の花園」のような畑で大切に育てられているのが、手のひらよりもはるかに大きくて丸いフォルムの「トルコナス」である。真っ白な皮に包まれたナスはトロトロとろけるような食感が特徴で、茅ヶ崎の夏の新名物として人気急上昇中だ。白い皮に傷がつかないよう、支柱を立てて茎のしなりを防ぎ、こまめに葉を剪定して、空間にゆとりをもって育てることが大切なのだそう。

「ナスといえば紫色のナスが一般的です。その点、トルコナスは珍しい野菜だから、見た目のインパクトはあっても、実はなかなか買い手が見つからなかったのが現実で…。でも、最初に市場の人がおいしさに気がついてくれて。そこから徐々に口コミで広がっていった感じです」と、はにかみながら話すのは、生産者の脇 祥平さんだ。

トルコナスを生産し始めた2015年頃は食卓に馴染みがない野菜のためにレシピを聞かれることが多かったというが、今では「トルコナスをこんな風に料理したらおいしかった!」と声をかけてもらうことも多くなった。

漬物、肉みそ、バター焼き、揚げ浸し、みそ汁に入れてもスープの色が変わらずに重宝されている。ちなみに脇さんは「トルコナスは油との相性が抜群です。私は、揚げ浸しがおいしいかな」とおすすめしてくれた。実際に、バター醤油でソテーして食べてみると、皮が柔らかくふわっとした食感がクセになる。

茅ヶ崎野菜としてトルコナスの人気が沸騰するも、「ちょっと恥ずかしい…」

2020年8月の『満天☆青空レストラン(日テレ)』では脇さんが育てているトルコナスが特集され、番組直後から一気に品薄状態に。

「ちょっと恥ずかしいんですけど、私はテレビに写真で登場しました。・・・トルコナスの紹介だけでよかったのに(笑)。でも、テレビでレシピを紹介してくれたから、日本全国の人たちにトルコナスのいろんな食べ方を知っていただけたのがよかったです」と照れながらもにっこり。

トルコナスの生産をしているのは「若手3人組」と呼ばれている茅ヶ崎市在住の若手農業家グループだ。「病気が出ているかどうか聞けたり、剪定の仕方を考えたり。年齢が近いからいろんなことを話しやすいです」と同じ目標に向かう仲間にも恵まれた。

たまたま集まった20~30代の農業者は、あれこれ試行錯誤しながらトルコナスの生産に励み、現在では「茅ヶ崎野菜」を作る生産者としても注目されている。

脱サラし、地元・茅ヶ崎で農業者に。「自分らしくてちょうどいい」

今では農業に従事している脇さんも、以前はサラリーマンをしていた。働き方を見つめ直したときに、自分のペースで暮らしていける仕事を探して農業の道を選んだ。その後、独立の支援をしている四国の農家へ行って半年間の研修を受けて、一から野菜作りを学んだ。

2013年、茅ヶ崎に戻ってきた脇さんは新規就農者として畑を探すところからスタート。最近では畑を貸してくれる人も増えて、現在は時々両親の手を借りながら市内7か所の畑を管理し、トルコナスをメインに、リーフレタスやブロッコリー、枝豆、カボチャ、長ネギなど、一年を通して野菜作りに励んでいる。

「農業をしていてよかったと思うのは、自分が作ったものを食べてもらえるところ。言葉だけじゃなくて野菜を通じてお客さんとつながれるところ。そういうところが自分には合っています」と話す脇さん。

「自然相手の仕事だから思い通りにいかないこともあるけれど、それを乗り越えていかれるように日々勉強を重ねています。ここが農業のおもしろさの一つかもしれません」と、ひたむきな努力の一面も話してくれた。

海辺のランニングで気分転換できる“当たり前の贅沢時間”

脇さんの趣味はマラソン。2か月に1回程度、フルマラソンの大会に出場しているほどの実力の持ち主だ。週数回のペースで海辺の遊歩道でトレーニングをしている。何気ない毎日のなかでも、海を見ながらマイペースにランニングできるのは、海辺のまち・茅ヶ崎で暮らす醍醐味。

「野菜が旬になると忙しくてあんまり走れないんですけれどね(笑)。夕方、よく野球場近くを走っています。海辺の遊歩道が好きですね。走ったり、歩いたり、犬の散歩をしたり、気ままに過ごす人がたくさんいて。このまちは風が優しいのも気に入っています」。

茅ヶ崎の魅力は「変わらない良さ」だという。ここで生まれ育った脇さんにとっては、海辺の眺めはもちろん、昔からずっと営業している個人店も多く、まちの景観が変わらないところに安心感があるそう。

「ここには海もあるし、『茅ケ崎里山公園』の方までいけば山もある。そういう自然豊かなところもいいんじゃないかな。昔から住んでいる人間としては、移住してきて、ここで足を固める姿を見るのもうれしいな」。

これからも茅ヶ崎で、ずっと変わらず農業をしていく

最後にこれからの脇さんの「夢」について聞いてみた。

「今と同じように、茅ヶ崎で農業をやっていきたいです。これからは農業を続けていくときに、生産者の顔や、生産者のメッセージを伝えていくことも必要かもしれません。ちょっとずつ、やってみようかな」と恥ずかしそうに話す。

言葉を選びながら、ゆったりと話す姿と真剣なまなざしに、静かに燃える情熱を感じた。インタビューの終わりには、こちらまで「がんばろう」とかき立てられるものがあった。これからも脇さんの自然体の挑戦に注目していきたい。

Information
・JAさがみ 茅ヶ崎支店:
https://ja-sagami.or.jp/tenpo/detail/013.html
・満天☆青空レストラン:
https://www.ntv.co.jp/aozora/
https://www.ntv.co.jp/aozora/articles/19137y9edoqai8fdiq3z.html(ロケブログ)

あわせて読みたい記事

#ちがすきトップページはこちら

公開日:2021-04-01

同じ特集の記事