廃棄される「ホタテの貝殻」をアップサイクルした粉末で、地球にも人にもやさしい暮らしをー。掃除や洗濯、消臭、はたまた食品の残留農薬除去にも利用できるヒット商品「618ホタテパウダー」。その機能性もさることながら「シンプルで心地のよい暮らし」の糸口になるとして、SNSやテレビで話題になっています。その開発者で立役者の鈴木典子さん(茅ヶ崎市南湖在住)に、これまでの歩みを聞きました。
近年、ホタテの出荷量が増え、産業廃棄物となる貝殻による土壌汚染や、海の生態系への影響が深刻化しています。これまでホタテ貝は、業務用では、石灰肥料や土壌改良剤、洗剤などとして再生利用されてきたものの、一般には普及していなかったそうです。
そんなホタテの貝殻と鈴木さんとの出会いは、意外にも、長年悩まされてきた「アトピー性皮膚炎」がきっかけでした。
ホタテ粉末水で肌の炎症が改善
数年前、薄めた塩素系漂白剤を入れる「ブリーチバス療法」を知った鈴木さん。「アルカリ性の力で除菌し、肌の炎症を抑える民間療法ですが、それなら、同じくアルカリ性のホタテの粉末で代用できるのではと試してみたのが始まりです」
効果を実感し、入浴以外にも、居室や水回り、洗濯で使用していた洗剤と置き換えることに。さらに、野菜や果物も粉末で洗い、残留農薬を除去したことも功を奏しました。
「私の場合、合成洗剤に含まれる界面活性剤や香料、食品の残留農薬が間接的に肌のトラブルを引き起こしていた。それを除去したことが良かったのだと思います」
水の豊かさにも
鈴木さんは健康面だけでなく、環境へのメリットにも着目。市販の洗剤には、地球環境や生態系に負担をかけてしまうものも少なくありません。
一方、ホタテパウダーは天然成分100%。水に溶けるとpH12の強アルカリ水となり、排水管や河川をきれいにしながら自然に還ることにも魅力を感じたそうです。
「生活排水の汚れの解消になり、SDGsの『水の豊かさ』にもつながります。せっかくこんなに良いものがあるのに、世に知れ渡っていないのはもったいないなぁと」
4年かけて開発
2019年2月。4年の月日を経てオリジナルのパウダーを開発。化粧品メーカーでのマーケティングの経験を生かし、潜在的ニーズや人や環境、動植物に対する品質もとことん追求しました。
放射線試験をクリアした貝殻のみを使用するほか、提携する青森県むつ市の工場では、食品添加物製造業許可を取得し、食品添加物としても最高級の品質を保ちます。
使い方はごくシンプル。スプレーボトルに水とパウダー溶かすだけで、その使用量も1リットルに対してわずか1g。洗濯には3〜5gと少量です。
「油汚れや床の黒ずみなど、家庭の汚れはほぼ酸性。相反するアルカリ性のパウダーで大半の汚れを落とせます」
こうした機能面だけでなく、スタイリッシュなパッケージやブランディングも口コミで話題に。今やモデルや女優、若い女性から圧倒的な支持を集めるまでに成長しました。
水の循環や暮らしを整えるきっかけに
洗剤や消臭剤の「代用品」を売りたい訳ではありません。
「なぜこのパウダーを使うのかという、その背景に目を向けてほしい。汚れや物を溜めないシンプルな暮らしの心地さに気づいたり、あらゆる生命の源である『水の循環』や、衣食住を整えるきっかけになれば」