産後と乳幼児を持つ母親をサポートする施設「助産院mamana.house」が4月19日、寒川町倉見に誕生しました。
助産院ですが、お産は扱わず、全国でも珍しい離乳食を無料で提供する「赤ちゃん食堂」や、産前産後ケアを行うなど、育児の不安を解消する「母子の駆け込み寺」を目指します。
代表を務めるのは、助産師の菊地愛美さん(35)。湘南地域の総合病院や産院で働くなか、コロナ禍で思うような支援を受けられず孤立する母親たちを間近で見てきました。自身も出産したばかりでしたが、「助産師として〝孤育て〟をさせたくない」と、仲間の母親たちと動きだしました。
広がる支援の輪
特にこだわったのが、離乳食期の母親と子どもが集う「赤ちゃん食堂」の実現です。
場所の確保や、絶え間ない支援を続けるための方法など、さまざまな困難にぶつかりました。しかし、菊地さんの「熱量」に、農家や企業から食材の提供がされるなど、次第に支援の輪が広がっていきました。
茅ヶ崎からの利用者も。「こんな場所が欲しかった」
開業2日目、初開催の「赤ちゃん食堂」には6組の母子の姿がありました。
参加者同士で「コロナ禍で面会もできず、さみしい出産だった」「交流場所にも気軽に行けず、日中誰とも会話しない日がある」など悩みや不安を吐露するなか、全員が「こんな場所が地元にも欲しいと思っていた」と口を揃えていました。茅ヶ崎からの訪れるママも多いそうです。
「貧困、産後うつ、虐待が多くあるのは、サポートできる場所が少ないことが原因のひとつだと思う。ママたちが〝欲しい〟と思う支援を続けたい」と菊地さん。
なお、同院では現在、クラウドファンディングに挑戦しています。
- クラファンの詳細はこちら
https://readyfor.jp/projects/87700
子育ての伴走者に
約15年前、結婚を機に寒川に移り住み、知人もいないなかでの子育てが始まった菊地さん。「孤独感が強かった」「ママ同士集まれる場所がほしかった」と振り返ります。
地域から差し伸べられるサポートの重要性を理解しているからこそ、「ママたちが本当に必要としている支援が分かる」と言い、この春、子育てサポートハウスを開業しました。「子育ては24時間365日待ったなし。産後、休むことなく、迷いや戸惑いを感じながら育児と向き合うママと赤ちゃんを支えたい。気軽に来てほしい。“おかえり”と言うのが目標」とほほ笑みます。
青森出身。中学卒業後に働き始め、「私の人生これでいいのか?」と一念発起。大検を取得し、慶應義塾大学に進学。在学中に結婚、出産をし、子育てをしながら同大学看護医療学部、神奈川県立衛生看護専門学校助産師学科を卒業し、助産師としてこれまで400件以上のお産をサポートしてきました。自身も0歳から中学生まで4人の子育て真っ只中。「夫や義両親はいつも背中を押してくれる。感謝しています」
レスリング金メダリストの伊調馨さんが同じ中学で、誘われるかたちで柔道を始めると、県2位などの実力者に。卒業と同時に離れたが、長男が柔道教室に通うようになると、自身も再開。全日本柔道連盟指導者ライセンスも取得し、今では「寒川柔友会」の指導者として子どもたちに柔道を教えています。
「どんなに自立して気丈な女性でも、産後は休息と支援が必要」。しかし、母親が休むことにマイナスな印象を持つ人が一定数いるといいます。「全てのママが産後ケアを受けるのが当たり前。その意識が根付くことが、産後うつ予防と虐待を未然に防ぐことにつながると確信している」。力強くうなづきました。