川崎市と小田急電鉄(株)は5月1日から、麻生区内で自治会・町内会向けSNS「いちのいち」の実証実験を開始した。同SNSは、電子回覧板やスケジュールなどの情報を共有することができるコミュニケーションツール。5つの自治会・町内会を対象に、同SNSを使って、担い手不足や情報発信・共有などの課題に関する検証を行い、今後、市内沿線の自治会・町内会でも活用できるか検討していく意向だ。
「いちのいち」は、自治会・町内会が抱える担い手不足や、回覧板の煩雑さ、若年層を中心とした地域とのつながりの希薄化、高齢者の社会的孤立などの課題を住民が主体となって解決することを目的に、小田急電鉄が開発したSNSだ。
各会で管理し、住民はパソコンやスマートフォンで、名前と住所を登録。加盟自治会・町会限定で、投稿やコミュニティの作成、スケジュールなどの情報を共有することができ、住民や地元商店、行政とも双方向でのやりとりもできる。これまでに秦野市などでも導入されているという。
川崎市は、小田急電鉄と沿線価値向上に向けたさまざまな取り組みを進めており、地域のデジタル化推進もその一つ。市内でも高齢化が進む麻生区で、「いちのいち」導入に向けた実証実験を行うことになった。
実施しているのは、事前に希望した「金程町会」「細山町会」「新百合ヶ丘駅南町内会」「栗平白鳥自治会」「北イトーピア自治会」の5団体。同SNSを活用して自治会内の運営、住民の情報共有を行う。今後は、市や区からの情報なども発信していく予定で、災害時の避難所開設や安否登録機能を用いた防災訓練の実施も検討しているという。
「小回りが利く」
金程町会では、役員らを中心に「花の開花」などの話題や町内会からのお知らせなどをSNS上で発信。「小さな情報もあげることができ、小回りが利く」と伊藤久史会長は実際に活用した印象を語る。今後は「公園清掃やパトロール、小学校の見守りなどのスケジュールや情報を共有していきたい」と語る。
実証実験は10月末まで行われ、その後各会からアンケートを取って、有効性を検証していく意向。市の担当者は「今後、麻生区内のほかの自治会・町内会や、沿線の他の区の自治会・町会での取り扱いについて検討していきたい」と今後の展望を話している。