秦野市自慢のおいしい銘品、高い技術力を生かした製品、豊かな自然に育まれた特産品、ゆったり楽しめる素敵なサービス……そんな秦野市人気の「ふるさと納税」の返礼品を提供している人々の素顔を探りに現場を訪ねてきました。ここでは晶扇コーポレーションと秦永ダンボールを紹介します。
※一時的にマスクをはずし、写真撮影を行っています。
<目次>
◆晶扇コーポレーション「現代の名工」がこだわるまくら正座椅子
◆幅広い世代が携帯できる秦永ダンボールの画期的”防災用帽子”
晶扇コーポレーション「現代の名工」がこだわるまくら正座椅子
正座をする時に足がしびれてしまうことを防いでくれる便利な「正座椅子」。
この正座椅子をスタイリッシュに、かつコンパクトに携帯できるよう工夫し、さらに日本が誇る高い技術で座り心地を追求したのが秦野市にある晶扇(あきお)コーポレーションです。
茶道を学んでいる人など正座をする機会の多い方や、座卓を使う若い女性が「かわいくて高さもちょうどいい」と椅子代わりに購入するなど、じわじわと広がっている晶扇コーポレーションの「まくら正座椅子」について、話を聞きました。
小さな気づきから新たな商品を開発
「最初のきっかけは、お寺に行った時に籐(とう)の正座椅子がうず高く積んであったのを見たことです」
一級家具製作技能士である代表の藤元晶扇さんはそう話します。正座椅子はお年寄りが使っていたそうですが、籐製なので高さの調整ができず、体格によっては使いにくそうにしている様子も見てとれました。法事などでは座布団を枕代わりにして寝ている方もいたそうです。
「どうにかならないだろうか」そんな気づきから、「枕にもなる正座椅子を作ってみよう」と開発に着手しました。
大きな特徴は、持ち運べるほどコンパクトに折りたためること。
足を収納したときの時の大きさは横幅24㎝×縦幅15.5㎝×高さ7㎝。足部分には神奈川県産ヒノキの間伐材を活用し、天板には軽い素材を使っています。足部分は使用者が簡単に組み立てられるようにしつつ、高い安全性を保つことができるように職人の技術が光ります。
- 取材メモ まくら部分は長く使ってもらえるようへたれにくい2層の高性能ウレタンを使って座り心地にこだわり、一級家具製作技能士が布を張って仕上げています。厚生労働省のグッドスキルマーク認定製品です。
「中身まで嘘偽りなくこだわる。それをモットーに仕事を続けています」
技術を売り、信頼を得て飛躍
藤元さんが秦野で会社を起業したのは30歳のとき。
祖父が家具職人で椅子張りを主に行っていたことから、父、そしてそのあとを継いで3代目として東京で修業をしていたそうです。しかし、専門的な仕事も多かったことから「もっと幅広く、色んなことをやってみたい」と、起業することを決意。
秦野に居を移し、椅子張り職人としてゼロからのスタートをすることにしたそうです。
「本当になにも持たずに起業したので、お客さんもいなくて最初はどうしようかと思いましたね」と昔を振り返る藤元さん。思いついたのが「東京国際家具見本市」への出展だったそうです。
- 取材メモ 家具やインテリア製品が一堂に会する展示会で、当時は「製品」がずらりと並ぶなか、藤元さんが展示したのは「技術」。同じデザインのソファを6つ並べ、そのすべてのソファで中身のウレタン素材やステッチの方法などを変えて展示し「こんなことができる」と自身の技術を売ったのだとか。
「展示ブースに来た人は最初戸惑っていましたけど、そこで認めてくれた人たちが今につながっています」
以来、椅子張りだけでなく、内装や外装、オブジェ製作など、さまざまなことにチャレンジしてきた藤元さん。現在は2人の一級家具製作技能士を含め、5人のスタッフで仕事にあたっているのだとか。
仕事のモチベーションは「お客さんの笑顔」
「いろんなことをやってきたので、お客さんの要望に対して、これならこういう方法でできる、とアイデアがすぐ浮かびます。他でできないことがうちに回ってくることも多く『最後の砦の晶扇』と呼ばれてます」と笑顔で語る藤元さん。
2022年には卓越した技能をもつ職人に国から贈られる「現代の名工」を受賞。常に自身の技を磨きつつ、新たなチャレンジを続けてきた藤元さんは「お客さんの喜んだ顔がやりがい。それにつきます」と話してくれました。
晶扇コーポレーションのふるさと納税返礼品
- 052-02まくら正座椅子(ブルー) 寄附金額:52,000円
楽に正座できたり、休息時にちょい掛けしたり、折りたたんで枕にも、座布団代わりにもできるまくら正座椅子。たたんでバッグに入れて持ち運びできる大きさです。
※この他にも寄附金に応じた返礼品があります。
会社情報/晶扇コーポレーション
神奈川県秦野市春日町1-33 TEL 0463-89-5280
https://www.isu-sofa.com/
幅広い世代が携帯できる秦永ダンボールの画期的”防災用帽子”
ダンボール素材のヘルメットとして、さまざまなメディアで取り上げられ脚光を浴びている「アウトリーチ防災用帽子」。2016年には第11回日本版イグノーベル賞ものつくり部門ダンボール賞を受賞しています。
そんなユニークでありながら、高い技術で「ここにしかない」製品を生み出しているのが、秦永(しんえい)ダンボールです。
他社ではできない「特別」を模索
現在、代表取締役を務めるのは2代目の小澤範雅(おざわのりまさ)さん。父である先代から仕事を引き継ぎ、仕事の最適化を進めるなかで生まれた時間を活用し、「他社ではできないものを」とダンボールの可能性を模索してきました。
- 取材メモ 情報収集に奔走する中で、小澤さんが注目したのが産業技術総合研究所の特許技術「多孔質シリカ被膜加工」。ダンボールで幅広く採用されているハチの巣のようなかたちの「ハニカム構造」の表面にこの加工を行うと、耐水性や難燃性が上がるほか、ハチの巣の接着部分が強固になるため強度も上がるかもしれないと考えたそうです。
こうして研究所と共同開発を進めた結果、「ダンボール」という紙素材でありながら、紙の弱点を克服した新たな素材が誕生。この新素材は秦永ダンボールの強い武器となりました。
娘の声きっかけに開発された「防災用帽子」
新たな素材は開発当初、建築材として使われていましたが、当時小学生だった小澤さんの娘さんの一言で、この素材を使った独自ブランドの開発に乗り出したそうです。
「学校で配られた防災頭巾を座布団に使っていたらぺちゃんこになっちゃった。これ、いざというときに役に立つのかなぁ」
ここでひらめいた小澤さん。
「そうだ!ダンボールで衝撃を吸収するヘルメットを作ることができれば、小さく折りたためるし、防災にも役立つはず!」
- 取材メモ 紙は”折る”ことで強度を格段に上げることができます。小澤さんは折り紙工学の権威である明治大学の萩原一郎教授と共に「防災用帽子」の開発を進めました。
軽くてコンパクトだけど”強い”。ダンボールで広がる可能性
何度も議論を交わし、大幅なモデルチェンジを繰り返した末に出来上がった製品は、重さわずか150g程度、折りたたんだ状態で薄さ約1.5㎝、縦幅約5㎝、横幅約30㎝という紙素材ならではの軽さと薄さを実現。
それでいて、折り紙工学を駆使したこの防災用帽子は子どもでも簡単に開くことができ、上からの落下物にはおよそ5㎏まで耐えうる強度となっています。
さらに、1300度のバーナーで燃やしても燃え広がらず、水に濡れても強い製品が完成しました。
「この軽さでこの強度は他にはないと思います。こういう製品を作れるのは、独自素材を持っている強み」と小澤さんは胸をはります。
- 取材メモ ”手を差し伸べる”という意味で”アウトリーチ”と名付けられたこの防災用帽子は、発売以来多くの人に注目され、組合や保育園などで活用されているほか、大手通販サイトでの取り扱われたり、ふるさと納税返礼品にもなっています。
「紙素材なのでリサイクルでき、このカーボンニュートラル時代にも合っているのでは」と小澤さん。
他にはない独自の技術や製品を生み出すため、試行錯誤してきたからこそ新たなアイデアが瞬間的にひらめくこともあるそうで、「今後は今の技術を、さらにどう生かしていくかを模索しながら、時代に合わせ柔軟にやっていきたいですね」と話してくれました。
秦永ダンボールのふるさと納税返礼品
- 007-16アウトリーチ防災用帽子 寄附金額:7,000円
地震災害時に着用する「安全で、軽く、燃えにくく、水に強い」耐水・難燃ペーパーハニカムダンボール製の防災用帽子です。たためるので、枕元に置いたり、バックやランドセルに入れて携帯できます。色は、黒、青、赤の3色から選べます(色の指定がない場合は、秦永ダンボールの判断で発送)。
※この他にも寄附金に応じた返礼品があります。
会社情報/有限会社秦永ダンボール
本社:秦野市鶴巻
伊勢原工場:神奈川県伊勢原市三ノ宮下谷戸1106-1 TEL 0463-97-3608
https://www.d-sinei.com/