【取材レポ】三浦半島の銭湯めぐり「当り湯」「明徳湯」「銀泉浴場」「あづま湯」「クアーズMISAKI」

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【取材レポ】三浦半島の銭湯めぐり「当り湯」「明徳湯」「銀泉浴場」「あづま湯」「クアーズMISAKI」

広い湯船で手足を思いっきり伸ばし、ゆったりとお湯につかりながら、心と身体を解きほぐす至福のひと時。銭湯の醍醐味は言わずもがな。家風呂では味わえない非日常感を手軽に味わうことができます。地域に暮らす人たちがコミュニケーションを交わす社交場でもあり、生活の一部に溶け込んだ存在です。そんな、銭湯ですが、厳しい経営環境に置かれています。家風呂の普及による銭湯離れは、今さらではありませんが、昨今の新型コロナの影響による客足の減少、燃料費の高騰などが重なり維持存続を困難なものにしています。

事実、銭湯の数は激減しています。横須賀浴場組合連合会が2014年(平成26年)に発行した「横須賀銭湯ガイドマップ」には、23軒の浴場が紹介されています。これが2022年9月現在で13軒に。街の風景から銭湯が姿を消しつつあります。

  • 昭和の風情を色濃く残す「銭湯文化」を絶やさない! エールの気持ちを込めて「三浦半島の銭湯レポート」を届けます。

※今回はタウンニュース記者に加えて、「横須賀みんなのカレー食堂」(https://currynews.net/)主宰者で無類の銭湯フリークである村尾直人さんにもレポートをお願いしました。村尾さんが「明徳湯」「銀泉浴場」を紹介しています

横須賀市上町「当り湯」 昭和の銭湯を真空パックしたような空間

昭和2年築の立派な建物がひと際目を引く

鶴久保小学校の目の前、宮造りの建物が目を引く昭和2年築の「当り湯」。暖簾をくぐると銭湯のイメージそのままの風景がありました。脱衣所は板張りの床に木のベンチ。重厚でレトロな体重計が風情を漂わせています。浴室は、両側にカランが配置され、奥に2つに仕切られた浴槽が。その頭上の壁面には、富士山と里山の風景をモチーフにしたペンキ絵が描かれています。聞けば、ペンキ絵師として著名な故・笹野富照氏の作品とのことでした。

昭和レトロ感満載の脱衣室。タイムスリップした気分を味わえる

「昔ながらの薪を使った沸かし湯で、湯冷めしにくいのが特長です」と説明してくれたのが達章太さん。この銭湯の跡取りで大学に通いながら、家業を手伝っていると言います。伝わるエピソードをたずねると、不入斗の体育館で相撲巡業「横須賀場所」が開かれていた頃の話を聞かせてくれました。

「横須賀場所の開催中、力士らが汗を流しに訪れるのが定番であり、入口の扉を外して迎え入れていたと聞いています」と章太さん。浴室の壁には手形やサインが掲げられているのはその名残なのですね。このほかにも、約10年前にはテレビドラマ「タンブリング」の銭湯シーンの撮影場所として使われたことがあり、三浦翔平さんや賀来賢人さんら出演陣と会話を交わしたことが今でも印象に残っているそうです。

現在は新型コロナ感染に最大限の注意を払って営業。店内の張り紙にはこんな言葉がありました。「パンツの次はマスクをくらいの気持ちでご自身とお相手にご配慮を」。ユーモアセンスいっぱいです。

住所/横須賀市上町4-99
電話番号/046-822-2857
営業時間/14:30~21:00(時短営業中)
定休日/金曜日

横須賀市平作「明徳湯」 4つの風呂とサウナ 銭湯ファンの心のオアシス

モダンな外観は銭湯とは思えない

明徳湯は、衣笠から池上十字路に抜ける県道から平作の消防出張所に向かって100mほど入った住宅街の真ん中に位置。明るいアイボリーのタイル張りでモダンな外観は、ここが銭湯だとは思えない佇まいです。

湯船は4つあり、ノーマル湯・週替わりの薬用風呂、深さのある熱めの湯、水風呂で構成。湯船と水風呂に交互に浸かる「温冷交代浴」で〝ととのう〟体験ができます。90度以上あるドライサウナもありますので、徹底的に汗を流したい人も満足できそう。洗い場の床も壁も清潔に保たれており、とっても快適。お湯につかっている人同士のちょっとした会話もあり、心も温かくなる場所になっています。

3つの異なる種類の湯船がならぶ

開店時間の15時に訪問しましたが、すでに開場を待つ人の列が。地域にとってなくてはならない憩いの場のようです。クレジットカードやQRコード決済など20種類以上の支払いに対応しているのも便利です。

住所/横須賀市平作8-6-2
電話番号/046-851-0382
営業時間/15:00~22:00
定休日/火曜日

横須賀市鴨居「銀泉浴場」 湯沸かしに建築材料、周囲に漂う木材を燃やす香ばしい匂い

住宅地の中にひっそりと佇む

「銀泉浴場」は昭和20年代から続く、地域の方々の「風呂場」として愛されてきた銭湯です。浦賀から観音崎へ続く県道から一本入った場所にあり、住宅地の中にひっそりと佇んでいます。ガスを使わず、湯沸かしには建築材料を使っているので、周囲には木材を燃やす香ばしい煙の匂いが漂っています。

入口の暖簾をくぐると昭和中期の日本家屋の雰囲気そのままの脱衣場が とっても懐かしい気持ちになりますね。湯船は縦長の半円形で、美しいタイル貼り。壁面に描かれた富士山を見ながら、肩まで薪で沸かした湯に浸かっていると、何とも贅沢な気持ちになります。洗い場にシャワーがないのも昔の銭湯そのもの。

富士山を描いた見事なペンキ絵

湯上りのミルクやコーヒー牛乳は格別です。ここは多くの人の昭和の懐かしい思い出が詰まった場所。令和の時代の今だからこそ訪れて欲しい銭湯です。

住所/横須賀市鴨居2-8-8
電話番号/046-842-0469
営業時間/16:00~22:00
定休日/不定休

逗子市沼間「あづま湯」 地域からの熱い要望で復活、感謝の想いで湯に浸る

東逗子駅から徒歩6分の住宅地にある

東逗子駅から徒歩で約6分の住宅地にある「あづま湯」は戦後すぐの昭和22年創業。以来、地域住民に愛されてきました。時は流れて平成30年、かつては逗子市内だけでも6つあった銭湯は「あづま湯」のみとなり、施設の老朽化で改修工事を実施。しかし、新型コロナの感染拡大や複雑な許可申請などさまざまなハードルが立ちはだかり、オーナーの唐澤三雄さんは「もう辞めてしまおうか」という考えが何度も頭をよぎったそう。それでも令和2年8月にリニューアルオープンできたのは、地域住民の後押しだったと言います。

沢山の人の想いが詰まった建物は2年たった今でもピカピカ。脱衣所や浴室も清潔感が漂います。少し熱めの湯に浸れば、思わず「復活してくれてありがとう」と心の中でつぶやくことでしょう。

「毎日の健康づくりに」と話すオーナーの唐澤夫妻

住所/逗子市沼間1-19-11
電話番号/046-871-3929
営業時間/15:00 ~ 22:30( 土日祝は13:00より営業)※ 21:00 最終受付
定休日/祝日の場合を含み毎週木曜日休業

三浦市天神町「クアーズMISAKI」 三浦市唯一の銭湯、なんと天然温泉!

三崎口駅から三崎港に向かうバスに揺られて約15分、「天神町」バス停から徒歩3分の場所に佇む三浦市唯一の銭湯がココ。美肌・胃腸に効果があるとされる「メタケイ酸」を豊富に含む天然温泉です。

昭和31年の創業で、元々は旅館だったそう。ここで結婚式を挙げた人も多いのだとか。2代目のご主人・石川雅司さんは料理人でしたが、先代の父を事故で亡くし、32歳で跡を継ぎました。幼い頃から風呂洗いや番台に立つ手伝いをしていたそうで、「同級生の女子が来ると恥ずかしかった」と当時を懐かしみます。

脱衣所に入ると、日本では珍しい女性ペンキ絵師・田中みずきさんが描いた富士山がお目見え。大浴場にはジェットバス・電気風呂・檜風呂・ミニプールがあり、別料金でサウナも利用可能。ランナーや海水浴客、釣り帰りの観光客のほか、今も地元住民から愛され続けています。

「この辺は独り暮らしが多いからね。『あの人、最近来ないけど、どうしたんだろうね?』なんて皆で心配しちゃったり。要するに地域の社交場ですよ」と笑みを浮かべます。建物の2~3階と近くにアパート物件があり、住めば入浴無料(サウナは半額)になるユニークなサービスも特徴的です。

住所/三浦市天神町7-11
電話番号/046-881-4171
営業時間/15:00~22:50
定休日/月・木曜(祝日は営業)

住所

神奈川県横須賀市

公開日:2022-09-08

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