この情報は2022年取材時のものです。
玉川学園の生徒たちは、自分の感性や素朴な疑問を出発点に、さまざまなことに挑戦しています。今回は、6年生から12年生(高3)10人が所属し、年間50回の演奏会を行う伝統あるハンドベル部が挑戦中のプロジェクトをご紹介。
ゴールは「聴覚に障がいがある方と一緒に楽しむハンドベル演奏会」
2025年に大阪で開催される日本国際博覧会、通称「EXPO2025大阪・関西万博」。展示パビリオンをプロデュースする8人のうちのひとり・中島さち子さんが主導するテーマ事業「未来の地球学校」に参加し、東京都立葛飾ろう学校の児童・生徒に出会いました。
- そこから「聴覚に障がいがある人と一緒に楽しむハンドベル演奏会」の開催を目指し、試行錯誤の始まりです。
- コロナ下でも、葛飾ろう学校の生徒たちとZoomで交流
- 試験的に演奏会を開催。2つの会場をZoomでつなぎ、演奏と映像が見えるように
手づくりのプログラミングで雪だるまを動かす「雪やこんこ」
音符が見える演奏と言われるハンドベルを、もっと「見える演奏」にするため考えたのが、映像との連携です。プログラミングを駆使して音を映像や振動に変換することで、聴覚を超えた新たな「音」の「楽」しみ方の開発に取り掛かりました。
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試作の動作テストを行います
「雪やこんこ」で知られる、童謡「雪」の音に合わせて動く雪だるまの映像を用意。高音が鳴るとザーザーとたくさん雪が降ってきたり、低音が鳴るとゆっくりハラハラと舞い落ちてきたりと、音の違いを表現するようにプログラミング。「未来の地球学校」に参加する他校の生徒たちに相談できることも魅力です。プログラミングが得意な人にお願いすることもできましたが、「演奏する人が音の色や合奏したときの音色をイメージして表現することが大切」と、すべて部員たちで考えて作り上げました。
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プログラミングも部員の手づくり
チャレンジし続けることが「玉川学園らしさ」
ハンドベル部では、介護施設や児童福祉施設などでの演奏会が終わるたびに、終了後のお客様との交流を重視してきました。
- 演奏の感想を直接聞けることは、次のステップにつながります。
部員たちは常に聴いている人に寄り添う演奏を心掛けてきました。耳が聞こえにくい人に伝わる演奏を目指して、今度は葛飾ろう学校の生徒たちに感想をきいて、これまでの試作的な演出をよりレベルアップさせていく予定です。
- 「聞こえない人に(音を楽しむことを)伝えよう」と、チャレンジし続けています。
- 普段の練習風景
- わからないことがあれば、すぐに部員同士で確認します
ハンドベル部の2022年
ハンドベル部は、2022年3月に、コロナ下でもなんとかプロジェクトを進めようと、葛飾ろう学校とZoomでつなぎ、試験的に演奏会を開催しました。
童謡の「さくらさくら」や「雪」「夢をかなえてドラえもん」など、4曲をプログラミングの映像演出とともに披露しました。演奏の感想を聞くと、葛飾ろう学校の生徒たちは手話で「すごい」「もう1曲みたい」などと伝えてくれました。
8年生(中2)の鈴木永恋さんは「難しかったけど、ハンドベルだからこそ意味のある演奏ができた。楽しんでもらいたい気持ちが伝わったようでうれしい」と本番を振り返ります。また、同部OGでコーチを務める野崎新さんは「初めての試みだったので予想できなかったけど、伝わったみたいでよかった。これからは、演奏するときの表情やベルの振り方など、目から伝わる、音以外で表現しているものを大切にしていきたい」と意気込みを語ってくれました。
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コーチを務めるOGの野崎さん(左)と現役部員の鈴木さん(右)
おわりに
玉川学園ハンドベル部では、毎年夏に東北の被災地を中心に演奏旅行を行っています。また、関東を中心として高齢者センター、幼稚園などでも演奏しています。特徴的なのは、演奏後に聞いてくれた人たちとの交流会。感想などを直接聞くことで自信につながり、受け答えや伝える力を自然と養っているようでした。
- これからも続く、ハンドベル部の挑戦を皆さんも見守ってください。