Googleマップを見ていると、近所に不思議な名称をしたスポットがあることに気が付くことがあります。今回見付けたのは、「羽鳥の道祖神 おしゃれ地蔵」。その正体を探るために現地へ向かうと、ファンデーション、口紅でバッチリメイクを決めた石像を発見しました。誰が、いつ、どうして―。その正体に迫ります。
この「おしゃれ地蔵」は、旧東海道・県道43号線、引地川橋から徒歩5分、「スーパーセンタートライアル藤沢羽鳥店」のすぐ脇にあります。大きさは高さ約30cmで赤い地蔵堂の中に鎮座しています。石造りの双体道祖神ですが、現在は光背にコンクリートが塗られており、詳細が分からない状態。ただ、周囲には花や飲み物に加え、化粧品が備えられていました。
藤沢市の郷土歴史課に連絡してみると、実際には地蔵ではなく道祖神だとか。郷土歴史課は「地域の神様への親しみある愛称として地蔵と呼ばれていますね」と教えてくれました。教育委員会の案内看板には「女性の願い事なら、何でもかなえて下さり、満願のあかつきには、おしろいを塗ってお礼をする」という伝承が書かれています。仏に願いをかけ、成就の際にお礼に掃除をする風習は全国的に見られるものです。また反対に高野山には「化粧をすると美人になる」伝承の地蔵がありますが、この羽鳥の場合は、「道祖神が」「子宝だけでなく女性の願いをなんでもかなえる」「お礼に化粧をする」という例は全国的にも珍しいでしょう。
この看板の記載は1989年に同委員会が発行した「市文化財総合調査報告書」に依ります。像自体は銘文から1788年のものと推測されますが、「信仰自体がいつからか、なぜ女性なのかなど、由来は不明」と郷土歴史課。道を挟んで向かいの養命寺も「所縁はなく、詳細は分からない」と話していました。
「おしゃれ地蔵」を管理している人は誰なのか郷土歴史課の方でも探したことがあったそうですが、「周辺に確認したが、管理者は分からなかった」とのこと。管理者不明ながらも、赤い地蔵堂はきれいに掃除され、定期的に化粧も変化しており、地元住民からの信仰の様子がうかがえます。真実は、穏やかな表情を浮かべる道祖神だけが知っているのでしょう。
おしゃれ地蔵へのアクセスは、小田急江ノ島線・藤沢本町駅から歩いて14㎞ほど。みんなで歩いて #enjoylocal