横浜市戸塚区にある高齢者施設と、障害児・者向けの造形教室がアートを通じて交流を重ね、初めての企画「戸塚こらぼ作品展」が、戸塚郵便局向かいの「交流広場とつか」で2023年10月2日から31日まで開催されました。
今回作品展を行った高齢者施設は、介護付有料老人ホームを併設したサービス付き高齢者向け住宅「クラシック・コミュニティ横浜」。教室は、障害児・者向けの「バリアフリー造形教室 みんなのアトリエ」。
一見すると交わる機会は少ないと思われる二者が、どのようにして「こらぼ」して作品展を開くまでに至ったのか、その軌跡を取材しました。
<目次>
◎戸塚の異業種交流「こらぼ会」
◎5回の創作活動を経て
◎作品展を迎えてわかった「気づき」
戸塚区の企業・地域団体が交流する「こらぼ会」
作品展を開くきっかけとなったのが、戸塚区の地域団体や企業などが隔月で集まり、情報交換やコラボレーション企画などを考える「こらぼ会」。ここで両者が出会ったことをきっかけに実現しました。
戸塚町と吉田町で開講する全障害者向けの造形教室を主宰する白瀬綾乃さんが今年3月、こらぼ会に初参加した際、ご自身の取組を紹介。その話を聞いてすぐさま、「ぜひ講師として来てほしい」と声をかけたのが、クラシック・コミュニティ横浜(以降、クラコミ)支配人の田山隆之さんでした。
創作活動でコラボ。その目標は?
クラコミには「サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)」として単身や夫婦で入居し、悠々自適な生活を送る人や、認知症などで介護を必要とする場合「介護付有料老人ホーム」として入居する人が、同じ施設内で暮らしています。
施設のレクリエーションの一つとして「創作クラブ」があり、メンバー15人程が毎月さまざまな創作活動を行っています。その講師の一人として白瀬さんに来てもらえたらと、田山さんは考えたのです。
クラコミのアート活動
田山さんと白瀬さんは相談を重ね、次のこらぼ会でアドバイスを求めたところ、参加者の一人だった「交流ひろばとつか」スタッフの菅田紗央里さんが「同じテーマで高齢者と子どもたちが同じものを作ってみて展示したら、何か違いや気づきがあるのでは」と意見を寄せ、企画が動き出しました。目標は、創作クラブのメンバーと、みんなのアトリエに通う生徒さんがそれぞれに作った作品を、交流広場とつかで展示することです。
5回の創作活動を経て
白瀬さんを講師として迎えた創作クラブの活動は、5月からスタートしました。初回は、母の日にクラコミ内で飾られ、役割を終えた花束などを活用し、乾燥させ押し花にするための加工を行いました。
翌月には、押し花とアクリル絵の具を使って「押し花のスケルトンアート」の完成です。
7月は季節を意識して、ミニ植木鉢を逆さにして装飾した風鈴作り。8月は割り箸で描く抽象画に挑戦しました。この抽象画は、認知症の進行を緩やかにするリハビリとしても用いられる臨床美術のプログラムを応用したもの。墨汁で対角線となる線を描き、その後オイルパステルで色付けを行いました。
臨床美術士の資格を持つ白瀬さんは「上手いね」といった出来不出来を評価するような声掛けはしません。生徒さんが制作過程で頑張ったところを具体的に褒める声掛けをすることで、気持ちを前向きにアートに取り組んでもらうことを信念としています。
9月は、アルミホイルで手形をとって装飾する「手型でつくる立体ポップアート」を仕上げました。
作品展を迎えてわかった「気づき」
5回の創作活動を経て迎えた「戸塚こらぼ作品展」。創作クラブとみんなのアトリエの両者で制作された作品56点が、交流ひろばとつかの壁一面に飾られました。
この作品展では、タイトルや作者プロフィールをあえて掲示していません。白瀬さんは「見る人に『これって何だろう』と考えてもらうことで、世代も超えてアートを楽しんでもらえたら。次は創作クラブに生徒さんを連れて一緒に作品作りを」と話しています。作品展の場を提供した菅田さんは「高齢者と子どもで同じものを作ったら何か違いが楽しめるかなと思いましたが、アートは世代を超えますね」と感慨深く作品を眺めていました。
田山さんは「入居者の皆さんには、学び続けることが元気の秘訣となって施設での生活を楽しんでいただきたいですね。今回は当施設が考えている生涯学習の一つで、目標に向かって取り組むことが出来ました」と話し、10月23日には入居者の皆さんと作品展に出かけ、アート鑑賞を楽しみました。
クラシック・コミュニティ横浜では資料請求、介護相談や見学を随時受付中。入居などを検討中の方は下記の手順で。
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