健康寿命日本一を目指す藤沢市が取り組む「ふじさわ歩くプロジェクト」では、就労世代をターゲットに歩くきっかけづくりを行い健康づくりを推進しています。
今回は、トクトク歩数チャレンジグループ歩数チャレンジ(事業所の部)に初参戦ながら好成績を残したメルシャン株式会社藤沢工場に話を伺い、好成績の理由や社内で取り組む健康づくりについて深掘りしました。
ワインのまち藤沢の屋台骨
メルシャン株式会社藤沢工場は、大手ワインメーカー「メルシャン」の国内製造拠点として、さまざまなワインを生み出し日本のワインブームを牽引しています。
2020年に創業100年を迎えた藤沢工場は、長年にわたり藤沢の地でワイン造りを行っています。現在製造する品目数は約600品目で、200人ほどの従業員が日夜、手ごろな価格で食卓を彩るデイリーワインのほか梅酒や焼酎などを手掛けています。
藤沢工場が藤沢にあることで、神奈川県の果実酒の年間出荷量は日本一(※)を誇ります。ここから、「海とワインが似合うまち藤沢」をキーワードに、藤沢のワイン文化をPRしようと藤沢商工会議所青年部と連携して「藤沢ワイン祭り」を盛り上げたり、藤沢市のコーディネートのもと、地元企業と協働してメルシャンワインを使った新商品を開発したりするなどの地域の活性化にも取り組んでいます。
(※出典:2020年度国税庁酒税関係総括表 都道府県別の課税状況)
動機は優勝賞品 参加して得た思わぬ“収穫”
11月の1カ月間、チームごとの平均歩数を競い合うふじさわ歩くプロジェクトの「トクトク歩数チャレンジ」に同社は、優勝を狙う「チームメルシャン」と、イベント参加を楽しむ「チーム無添加」の2チームで参加しました。
工場長を務める大金修さんは、「グループ歩数チャレンジの存在は、総務課の担当者からの連絡で知りました。参加の動機は、正直に言えば優勝賞品の地元紙の約17万円相当の広告スペースです。それに、ワインの移動作業などで歩く機会が多い当社は優勝を狙えると思っていました」と若干の悔しさをにじませながら話します。
当初は景品が目当てだったものの、イベントへの参加を通して思わぬ効果があったと教えてくれたのは、製造課の馬越脇晃治さんと杉浦拓巳さんです。
- 製造課で班長を務め、チームメルシャンのメンバー選出も担った馬越脇さんは、「班長という役職上、現場と比べて歩く機会が少なくなるので休日は子どもに『今日は公園へ遊びに行こうか』と持ち掛ける機会が増えて、家族仲が深まりました」と喜びます。
- 杉浦さんは、「ずっと気になっていた、表丹沢の塔ノ岳に挑戦するきっかけになってくれました。行きたい気持ちを後押ししてくれましたし、この日だけで6万歩以上を稼ぐことができたので、チームにも貢献出来ました」と充実した表情です。
こうした思わぬ“収穫”もあり、各メンバーが精力的にイベントに取り組み、チーム同士のコミュニケーションが促進されたことで、初参加ながら最終成績は30事業所39チーム中、4位。3位のチームに平均歩数8.2歩差にまで肉薄する好成績を修めました。
毎朝のラジオ体操と二次健診の受診率100%
トクトク歩数チャレンジに限らず、藤沢工場は日常から多彩な健康づくりに取り組んでいます。24時間体制で製品を製造し続けている中で、毎朝8時30分に工場全体で取り組むラジオ体操は、長年の伝統です。杉浦さんは入社2年目ですが、「現場では身体をよく動かすのでストレッチ効果があるほか、『さぁ仕事が始まったぞ』と気持ちを切り替えるスイッチになっています」と話します。
アルコールを取り扱う工場として、健康診断にも力を入れています。大金さんは、「健康診断で肝機能の数値が悪くて精密検査が必要と指摘された時、受診をせずに放っておく方がいるかもしれませんが、せっかく見つかった改善点をそのままにしてしまうのはもったいないことです。藤沢工場では、きちんと病院を受診したか総務課が中心となって確認していて、ここ2〜3年の二次健診受診率は100%です」と胸を張ります。
工場長の呼びかけで高まる健康意識
藤沢工場では、工場長の大金さんが呼びかけたことで新たに始まった取組があります。そのひとつが血管年齢診断です。血管年齢測定器に指をかざすと血管の状態や脈拍数を読み取り、より良い健康状態になるためのワンポイントアドバイスをする優れものです。また、センサーに手のひらを30秒ほど当てるだけで推定野菜摂取量が分かる「ベジチェック」を導入しており、いずれも従業員が関心を持って好評を博しています。
大金さんは、「工場とお付き合いのある生命保険会社から提案を受け、総務の担当者に提案をつなぎました。自分ではなかなかチェックすることができない部分を手軽に確認できて、関心を持って取り組んでいる社員もいます」と話します。
2019年に導入された口腔保健指導も大金さんが主導したものです。年1回、歯科衛生士が工場を訪問して希望者に対して歯の状態の確認や、歯の磨き方の指導などを行っています。「自分が若いころは口腔ケアを怠った生活を送っていましたが、年齢を重ねると健康に生活するために歯がいかに重要か理解することができました。こうした反省があり、従業員にも日ごろから気遣ってほしいという思いで導入を要望したんです」と大金さんは胸中を語り、「実際、口腔指導をきっかけに歯の健康を意識する従業員が増えているようでうれしいですね」と目尻を下げます。
「健康づくりを続けていく」
長年の伝統とトップの意識的な働きかけによって醸成されていく藤沢工場の健康づくりの取組。今後に向けて大金さんは、「従業員が健康であることで生産効率が高まり、業績向上につながるという健康経営の考えは当社の方針に組み込まれていますし、個人的にも推進していくべきものだと考えています。工場長として、出来る範囲から従業員の健康づくりの取組を続けていきたいと思います」と朗らかな笑みを見せています。