江戸時代中期、神奈川県内のほぼ全域で地域内の家々を回っていた地蔵。平塚市内でも回り地蔵の習俗は行われており、「子育て地蔵」として信仰されていたという。平塚市域に住む人々の身近な信仰の形を知ってもらおうと、平塚市博物館では10月19日(土)から秋期特別展「お家(うち)をまわる子育て地蔵」を開催する。
1762年頃、伊勢原市三ノ宮にある保国寺で100体の小地蔵が作られた。小地蔵は銅製で30cmほどの大きさで、乳児を抱いている地蔵が多いという。当時、体の弱い子や小さく生まれる子が多かったこともあり、同寺の住職だった孝戒(こうかい)が、「子どもが元気に育つように」との願いを込めて作った。100体の小地蔵は、同寺近郷の100の村に勧請され、「子育て地蔵」として地域内の各家を回り祀られてきた。
同館によると、現在も市内岡崎の矢崎・大畑・西海地地域では回り地蔵の習俗が残っているという。小地蔵は厨子に入り1年中回され、各家には2、3日〜1週間程度置かれる。回って来ると、三角の布に綿を詰めたものに、子どもの生年月日と名前を書いて吊るすという。
特別展では平塚市内の回り地蔵(田村・真土・城所・北金目・片岡・千須谷・岡崎)、保国寺に納められた回り地蔵、宗源寺(纒)所蔵の大会(おおがい)念仏の道具など約200点が展示される。