海が近く、空が広く、暮らしの中に自然がある。
そんな湘南・茅ヶ崎の暮らしに憧れて、東京から家族で移住してきた株式会社enishe代表の佐藤啓太さん。しかし、理想の暮らしの中で最初に感じたのは、思いがけない孤独だったといいます。知り合いのいない土地で、子育てをしながら日々を過ごすことの難しさ。やりたいことはあっても、一歩を踏み出すきっかけが見つからないもどかしさ。
移住して初めて気づいた、「つながり」の大切さ
株式会社enishe(エニシェ)は、茅ヶ崎を拠点に、ブランドマーケティング事業やアパレルブランド「オカサーファーズ」、メキシカンダイニング「mesavia(メサビア)」の運営を行う会社です。代表を務める佐藤啓太さんは、大阪出身。東京での暮らしを経て2024年に家族で茅ヶ崎へ移住しました。
海のそばで暮らし、自然の中で子どもを育てる。東京での仕事を続けながら、もっと自由で、自分たちらしい暮らしをつくっていく。移住前に思い描いていたのは、そんな前向きな未来でした。
けれど、実際に暮らし始めると、最初に立ちはだかったのは「人とのつながり」の壁だったと佐藤さんは振り返ります。知人も友人もいない土地で、日々の子育てをしながら暮らすことは、想像以上に大変だったといいます。地域の子育て支援施設に足を運んでも、そこで自然に友人関係が生まれるとは限りません。既存のコミュニティに入っていくにも、最初の一歩には勇気がいります。
「移住する前に、もう少し気軽につながれる場所があったら、全然違ったと思うんです」
佐藤さんはそう語ります。
- 移住を決める前に、街の雰囲気を知ること。
- 移住した後に、気軽に話せる人がいること。
- やってみたいことを、誰かに話せる場があること。
それは制度や情報だけでは埋めきれない、暮らしの入口にある大切な支えなのかもしれません。

enisheメンバーの西野さん(左)と石附さん(右)と。二人も佐藤さんとの何気ないコミュニケーションから事業にジョインしたといいます
仲間ができたことで、やりたかったことが動き出した
佐藤さん自身も、仲間との出会いによって、少しずつ暮らしが変わっていったといいます。オカサーファーズやmesaviaを立ち上げ、ポップアップやイベントを通じて人と出会う。そこで知り合った人が、モデルとして関わったり、マーケティングの仕事を手伝ったりするようになる。飲食の経験を持つ人、アパレルに関わってきた人、地域で何かを始めたい人たちが集まり、少しずつ新しい動きが生まれていきました。

(左)オカサーファーズ:湘南のあそびをひらくアパレルブランド(右)mesavia:湘南のあこがれを叶えるタコスブランド
佐藤さんは、そうした経験を通じて「人とつながることで、いろんなことが解決する」と感じるようになったといいます。一人では始めにくかったことも、誰かと話すことで動き出す。やりたいことが明確でなくても、気の合う人と出会うことで、自分の中にあった思いに気づく。移住者にとって必要なのは、何かを教えてくれる場所だけではなく、自然に関係性が生まれる場所なのかもしれません。

移住者同士が気軽につながれる場の必要性を感じたことが、活動の原点になっています。
「湘南で何して遊ぶ?」から始まるコミュニティ
今回、enisheが始動する「湘南のあそびをひらく」プロジェクトは、そうした佐藤さん自身の経験から生まれました。プロジェクトのミッションは、「『いいな』を、動き出せるかたちにする」こと。茅ヶ崎を起点に、小さな「やってみたい」を叶えるきっかけづくりと、場の提供を行っていく取り組みです。
佐藤さんは、湘南に移住してきた人や、これから暮らしたい人たちに向けて、「湘南で何して遊ぶ?」という問いを入口にしたコミュニティメディアやイベントを展開していきたいと話します。そこでは、移住者の暮らし方や働き方、地域で始まった小さな挑戦を紹介しながら、参加した人が自分の「やってみたい」に気づき、誰かとつながるきっかけをつくっていく予定です。

移住前から、知り合いがいる街へ
「移住してから友達を探す」のではなく、「知り合いができた状態で移住できる」。佐藤さんが目指すのは、そんな新しい移住の入口です。移住を考えるとき、多くの人が気にするのは、住む場所、子育て環境、通勤、仕事、家賃などの情報です。もちろん、それらは大切です。一方で、実際に暮らし始めた後に日々を支えるのは、もっと身近な人との関係だったりします。
- 困ったときに話せる人がいる。
- 休日に一緒に出かけられる家族がいる。
- 自分のやりたいことを、面白がってくれる人がいる。
そうしたつながりがあるだけで、街の見え方は大きく変わります。「湘南のあそびをひらく」は、移住を検討している人にとっては、地域の空気を知る入口に。すでに暮らしている人にとっては、まだ出会っていない誰かとつながるきっかけに。そして地域にとっては、新しい挑戦が生まれる土壌になっていくことを目指しています。

メディアでの発信やイベントでの接点を通じて、移住前から地域に知り合いがいてスムーズに暮らせる状態を目指すといいます。
遊びが、仕事を生み、暮らしを変えていく
佐藤さんが描く未来は、単なる交流イベントにとどまりません。オカサーファーズやmesaviaの活動を通じて、すでに「遊び」から仕事が生まれる流れも起きています。佐藤さんは、将来的には湘南を代表するブランドマーケティング会社をつくり、地域の中で仕事や挑戦が循環する形を目指したいと語ります。東京で働くために通うだけではなく、茅ヶ崎に暮らしながら、茅ヶ崎や湘南の中で面白い仕事をつくる。地域で暮らす人たちの感性やスキルが、街の新しい魅力を生み出していく。それは、移住者を受け入れるだけでなく、地域そのものを面白くしていく取り組みでもあります。

交流の場としてだけでなく、仕事や住まい探しなど、新たな暮らしを支えるマッチングの役割も。
小さな「やってみたい」が、街をひらいていく
第一弾として、今夏には移住者同士の交流イベントが予定されています。大きな決意や明確な目標がなくても、同じように移住してきた人の話を聞いてみる。そんな小さな一歩から、茅ヶ崎での暮らしは少しずつひらけていくのかもしれません。
憧れの街に移り住むことは、ゴールではなく、暮らしをつくり始めるスタートです。そのスタート地点に、気軽に立ち寄れる場所があること。誰かと出会い、自分の「いいな」を動かし始められること。佐藤さんが始める「湘南のあそびをひらく」は、移住者にとっての居場所づくりであり、茅ヶ崎という街の新しい関係性を育てる試みでもあります。

株式会社enishe
ホームページ:https://enishe.co.jp/
オカサーファーズ
ホームページ:https://okasurfers.com/
インスタグラム:https://www.instagram.com/oka.surfers/
mesavia
住所:茅ヶ崎市中海岸4丁目12986−52 サザンビーチヒルズ 1F
定休日:水曜日
営業時間:10:00~17:00
インスタグラム:https://www.instagram.com/mesavia.chigasakitacos/

















