東京多摩地域最大級の都市「八王子」。かつて織物産業の中心地として栄え、現在は「工業の街」として注目を集めています。工業都市の概要とその中で活動する団体の取り組みを紹介します。
八王子の工業界について
そもそも八王子の工業はどれくらいの規模でしょうか?まず、八王子市内で工業に従事している企業、事業所の数ですが2018年度統計情報では「503」(従業者4人以上の事業所)とあります。
業種別ですと、
1位 生産用機械器具製造業・・・72社(14%)
2位 電気機械器具製造業・・・・54社(10%)
3位 金属製品製造業・・・・・・52社(10%)
4位 業務用機械器具製造業・・・51社(7%)
5位 デバイス・電子回路製造業・37社(6%)
6位 食料品製造業・・・・・・・33社(6.5%)
7位 印刷・同関連業・・・・・・32社(6.3%)
8位 プラスチック製品製造業・・30社(5.9%)
9位 繊維工業・・・・・・・・・21社(4%)
となり、その他製造業が142社(24%)あります。
他エリアと比較しての特徴や強み
全国平均と比べ、八王子市は工業、建設業など加工業である「二次産業」が盛んです。全国平均は26.6%ですが八王子市は31.2%です。その中でも、「生産用機械器具製造業」は事業所数、常用従業者数、製造品出荷額、給与総額においていずれも「1位」です。
発展の背景
八王子は1970年代の高度経済成長期からものづくりの街になりました。
かつて繊維業で繁栄しましたが、その頃、中国の繊維業が国内繊維業を圧迫して市内でも多くの繊維業者が倒産してしまいました。一方、「工場立地法」が施行され、都内での事業が難しくなった工業事業者は、土地を求めて「西」へやってきました。八王子は交通アクセスの良さも相まって人気を集めました。その中で市内には7つもの工業団地が誕生しました。この数の多さは他の地域に比べても特徴的です。
また、八王子は地下水も豊富で、繊維業はその地下水のおかげで繁栄できた側面もありました。一方、工業界では「プリント基板製造業」がその工程上、多くの水を使います。現在の八王子には同業の企業が少なくありません。業界の衰退にともない繊維業者が少なくなった八王子に、多くの「プリント基板屋さん」が進出した背景には「地下水の恩恵」があるようです。
今後の課題
高度経済成長期に設立されて、現在、2代目、3代目の経営者となっている会社が多いようです。事業の継続にあたり、スムーズな承継が課題のひとつになっています。
八王子商工会議所工業部会とは?
そのような八王子の工業界を牽引しているのが、八王子商工会議所工業部会です。会員数はおよそ600社。仲間同士、ライバル同士で研鑽を積み、その発展に貢献しています。
概要と取り組み
工業部会は現在(2021年10月21日時点)、593社が所属しています。活動の目的は
「受発注促進と取引斡旋の推進」「次世代経営者育成事業の推進」「産・学・公連携事業の支援」で、年間を通じての主な事業としては工業技術、経営改善のための講演、講習会開催、工業振興に資するための視察研修の実施などがあります。
コロナ禍でここ最近は開催できておりませんが、視察研修も行っています。国内視察では「異業種交流ツアー」と称して、味の素、花王、サイボクハムなど関東圏にある工場に訪問してきました。海外視察も開催しており、これまでオーストラリア、イタリア、インド、台湾、ドイツ、トルコ、ロシアなど各地へ視察した実績もあります。
また、その取り組みの中では「ペーパーレス化」「事業報告会などはリアルとズームでのハイブリット開催」といった時流に沿った対応もしています。
次工研の存在
部会ならではの取り組みとして、代表的なものに「次工研」の活動があります。次工研とは「次世代工業研究会」の略で、「若手経営者」らによる集まり。現在(同)、64社が所属しています。
「八王子工業の健全なる発展のため、人材育成や人・技術のネットワークづくりの促進」を活動の目的にかかげ2012年にスタートしました。定期的な勉強会や交流会の実施、工場見学などを開催しており、同じ業界で切磋琢磨する経営者同士の心の拠り所にもなっているようです。「仲間とつながりができる。情報交換の場にもいい」と会員からの評判です。
今後の発展
工業部会では、地域の小規模事業者~大手企業まで繋がりをもち、八王子の工業の交流がさらに活性化できるように活動しています。今後はさらにその動きを強化するとともに近隣の会議所とも連携を図り、より広い範囲で活動していく予定です。
八王子注目企業の紹介
工業部会の中で活発な活動をしている4社を紹介します。各社に記者が出向き、その様子をレポートしました。それぞれの「すごみ」をご覧ください。