江の島の近代歴史遺産を活用した新たな観光施設が11月12日、江の島サムエル・コッキング苑内に完成しました。かつて英国人貿易商の別荘と庭園だった時代に使われた温室遺構を活用して、植栽温室をイメージした展示体験棟に改修されています。
建物は鉄骨平屋造で延べ床面積は約60平方メートル、高さ約5m。現存するレンガ造りの温室遺構は、国内では唯一とのこと。全面ガラス張りとなっており、室内から貴重な遺構を覗き見ることができます。
同苑前身の庭園は、明治時代に英国人貿易商のサムエル・コッキング氏が私財を投じて造成しました。南国植物を育てるためのスチーム温室が整備され、その規模は当時、東洋一の規模とされる程の出来栄えでした。新しく建設された棟内にはパネルや写真でコッキング氏の功績も紹介しています。また、南国由来の観葉植物も展示しており、往年の雰囲気を演出しています。
12日の落成式で鈴木恒夫市長は「施設名にあるコッキング氏の由来を知らない人も多かったと思う。歴史のストーリーを発信する大変有意義な施設ができた」とあいさつをしていました。また市観光協会の湯浅裕一会長は「コロナで打撃を受けた江の島の観光業にとってうれしい限りだ」と歓迎しています。
藤沢市は江の島を基軸にした「通年型観光」の推進を掲げており、近年はイルミネーションを中心に夜間の観光振興が盛り上がっています。一方で、日中の客足増が課題に挙げていました。来年には交流や体験ができる施設なども新設を予定しているとのことで、回遊性を高め、1年を通じて楽しめる施設としてのPRを目指しています。