「どっこい、どっこい」
週末になると円蔵地区の千ノ川沿いに、威勢の良い掛け声とのびやかな茅ヶ崎甚句、鈴の音が鳴り響き渡ります。賑やかな声の主は、中学生ぐらいの男子たち。コロナ禍で多くの祭りが中止となる中、「どうしても担ぎたい」と神輿を手作りしてしまった彼らに、その思いを聞きました。
この日、集まっていたのは円蔵や鶴が台をはじめ、下寺尾、寒川に住む小中高生です。学校も年齢も異なる彼らの共通点は「神輿・祭りが好き」ということ。幼い頃から折に触れて各地の祭りで出会い、自然と仲良くなった「神輿仲間」です。
コロナ禍で担ぐ機会、失われ
しかしこの3年間は、コロナの影響で浜降祭や各神社の祭礼も中止が相次ぎました。
「神輿が好きすぎて、毎日でも担ぎたいくらい。この3年、お祭りがなかったので担ぎたくて仕方がなかった」と話すのは高橋輿輝さん(円蔵中3年)です。
そんな中、寒川の先輩たちが神輿を自作したことを知り、永田一道さん(同2年)らとともに「オリジナル神輿」の制作に着手することに。小遣いを出し合い、100円ショップで木材や釘を揃え、見よう見まねで完成させました。
手作り感あふれる無骨な神輿ですが、白いさらしで神輿と担ぎ棒を固定する「もじりがけ」や、鈴を結ぶ「わらじ編み」など、伝統技法もしっかり取り入れています。
もちろん、作るだけでは飽き足らず、週末や放課後に、川まで出向いて担ぐようになったそうです。
卒業を祝し渡御
快晴となった3月19日、メンバー6人が集まり、この春、小・中学校を卒業した3人の門出を祝う「卒業記念渡御」を行いました。
前後に分かれて担ぐと、誰彼ともなく茅ヶ崎甚句を唄いだし、それに合わせて「よい、よい」と合いの手が入ります。それぞれ交代しながら笛を吹いたり、神輿の「タンス」を叩いたりと、小気味良くリズムを取ります。
一息ついた彼らは「血がたぎって楽しい」「終わった後、疲れているのに爽快な気分になる」と満面の笑みです。
近隣の小さい子どもたちとの交流も
こうした姿を地元住民らも温かく見守っています。円蔵在住の城間千春さんは自身も神輿が好きなこともあり、少年たちとすぐ顔馴染みになったそうです。
城間さんの子や親戚の子らと交流する機会も生まれており、城間さんは「コロナ禍で御神輿をあまり知らない4歳の娘も、身近で見られて、実際に担がせてもらい、貴重な思い出になった」と微笑みます。
また、通り掛かりの高齢の女性も「とても素敵。応援したいわ」と話していました。
文化継承に一役
高橋さんらは未経験の友人も勧誘しており、最近、新たに神輿に関わるようになったメンバーもいるそうです。
「神輿の担ぎ手は男の人が多くて少し怖い印象があるけれど、賑やかで誰でも楽しめることを伝えていきたい。伝統を自分たちが盛り上げていけたら」