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【イベント報告レポ】不安な世の中だからこそ、真に平和な1日を。2年目のHARVEST PARKが体現した、次世代へ手渡したい世界

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【イベント報告レポ】不安な世の中だからこそ、真に平和な1日を。2年目のHARVEST PARKが体現した、次世代へ手渡したい世界
photo by 牧野 弘

2024年11月3日、茅ケ崎里山公園で食・農・音楽をテーマにしたフリーイベント「HARVEST PARK 2024」が開催されました。里山エリアの不法投棄問題へのアクションとして始まったHARVEST PARKの開催は今年で2回目。前日の荒天から一転、澄み渡る青空のもと子どもから大人、高齢者まで1万5千人もの来場者が集い、里山の美しい景色の中でライブやトーク、ワークショップや飲食を楽しみました。当日の様子を、ボランティアスタッフとして参加した池田美砂子がレポートします。photo by 牧野 弘

文化の日、「楽しい」と「美味しい」から美しい里山への第一歩を。

photo by 牧野 弘

HARVEST PARKは、いわゆる音楽フェスではありません。「多くの人がここに来て美しい景色を発見することで、ゴミを捨てる人も減るのではないか」という想いから、まずは多くの人に里山エリアの豊かな自然の中で音楽や食、農という地産カルチャーを楽しんでもらうことから「美しい里山」への第一歩を踏み出そうと2023年11月3日(祝)に第1回目のHARVEST PARK(レポート記事はこちら)を開催しました。

その後も毎月里山エリアのクリーン活動を開催し続け、今年も同じく文化の日、約束通りHARVEST PARK 2024の開催が決定。この日を待ち望んでいたかのように、オープン早々から多く人々が駆けつけました。

子どもたちの歌声に誘われるように

photo by 牧野 弘

雨上がりの清々しい空気の中で始まったHARVEST PARK 2024。主催者でありメインアクトを務めるシンガーソングライター・Caravanさんはステージに上がり、「こんな不安な世の中だけど、ここは最高に平和なイベントにしたいと思います」と力強いメッセージを送りました。

続いてオープニングのステージに上がったのは、茅ヶ崎市立香川小学校の児童のみなさん。来場者の拍手に出迎えられ堂々と挨拶した子どもたちが、瑞々しい歌声を披露してくれました。

photo by 牧野 弘

子どもたちの歌声が響き渡った会場は、一気にあたたかな空気に包まれました。

芝生広場ではシャボン玉や輪投げ、アートワークに興じる子どもたちの姿が至る所で見られました。それを見守る大人たちにも自由な空気が伝播するように、伸び伸びと寝転んだり、思い切り駆け回ったり。この日、この時、この空気を五感をフル活用して楽しむ様子がとても印象的でした。

photo by 牧野 弘

芝生広場の中央で開催されていたのは、ライブペインティングパフォーマー・近藤康平さんによるワークショップ。子どもたちの創造性が爆発していた。 photo by 牧野 弘

風船で彩られたトークステージに目を向けると、ファシリテーターに初挑戦する高校生と大学生の姿が。Caravanさんと「はちいち農園」農主・衣川木綿さんの隣に座り、堂々と自分の言葉で問いかける様子に来場者からはあたたかな眼差しが注がれていました。

トークのファシリテーションを担当する高校生のMOMIJIさん(左端)と大学生のERIKAさん(右端)。ふたりとも環境問題に関心があり、メインファシリテーターの環境活動家BENIRINGOと一緒に「こBENIRINGO」として活動している。photo by 牧野 弘

全53店の出店ブースにも、ワークショップに夢中になる子どもたちの姿がありました。

手を泥だらけにして粘土団子づくりに取り組んだり、あれこれ工夫を凝らしてダイタイ染めにチャレンジしたり、カラフルなクレヨンやペンを使って端材にイラストを描いたり。どのワークショップでも、自然とのつながりを自然体で楽しむ様子がとても印象的でした。

「自然菜園LIFESTYLE」のブースで開催されていた、できるだけ多種の種子を混ぜ、土と水を投入して団子状にしていく粘土団子づくりワークショップ。粘土団子は、乾燥して大地に放つことでその土地にあったものだけが芽を出すため、自然農法の究極の方法として知られ、砂漠の緑化方法としても注目されている。photo by 牧野 弘

まな板など木製品を販売する「woodpecker」のブースでおこなわれていたのは、まな板をつくるプロセスで出た端材を使ってみんなでもう一度大きな木をつくるワークショップ。子どもたちがカラフルに彩った端材が次々に貼られ、世界に一つの「HARVEST TREE」が形づくられていた。photo by 牧野 弘

「選べる」喜びを、全ての人に。

昼前になると、飲食ブースやキッチンカーの前に、、どこもずらり長蛇の列ができはじめました。ヴィーガンのカレーや地場産有機野菜たっぷりのご飯ものもあれば、丁寧に作られたボリュームたっぷりのハンバーガーもあり、誰もが好みや気分に合わせて選択できる嬉しいラインナップ。

気温がぐんぐん上昇したこの日は、気候変動へのアクションにつながる不耕起栽培大豆のヴィーガンアイスクリームを嬉しそうに味わう人々の姿も多く見られました。

気候変動へのアクションとして立ち上がったアイスクリームブランド「SOYSCREAM!!!」。味わうことで全国の不耕起栽培農家(耕さないことで土の中に炭素を貯留し地球温暖化の緩和に貢献すると言われている農法)を応援することができる。photo by 牧野 弘

ゴミを出さず美味しい飲食を楽しんでもらうため、飲食にはリユース食器を使用。中には食器を持参する来場者の姿も。photo by 牧野 弘

午後に向けて、物販ブースに立ち寄る人々の姿も増えてきました。地元アーティストによる雑貨類やアート作品、自然由来の素材を使った衣類や小物、添加物不使用の食材等のブースが並ぶ中、地元有機農家3軒による共同出店や、はちみつ屋と藍染屋、ハギレを使ったワークショップが一体となったブースなど、想いやコンセプトをともにする方々のつながりが体現されたブースの存在も印象的でした。

のうえんこえる(茅ヶ崎市・藤沢市)、島次郎農園(茅ヶ崎市)、good family farm(茅ヶ崎市)が共同で出店した「BIO FARMERS CHIGASAKI」のブースには、旬の採れたて野菜がずらり。この土地ならではの「HARVEST」を体現していた。photo by 牧野 弘

気づきも行動も、この場所で。

トークステージのファシリテーターを務めていたのは相模川の河口クリーン活動などにも取り組む環境活動家・BENIRINGOのふたり。自らの活動経験に基づいたファシリテーションにより、一歩踏み込んだトークが展開されていました。photo by 牧野 弘

HARVEST PARKのコンセプトを最も色濃く体現していたのが、ライブステージと向かい合わせに設置されたトークステージです。太陽光パネルが施され100%再生可能エネルギーで電気を賄ったステージには、環境問題をはじめとした社会課題へ取り組む4組のゲストが登場しました。

冒頭の主催者トークに続いて「エシカルで自分も社会も幸せに」というテーマで登壇した末吉里花さん(一般社団法人エシカル協会代表理事)は、暮らしの中に当たり前にあるものの背景を知ることの大切さについて語り、エシカルな流れをつくっているHARVEST PARKの出店者についても言及することで来場者が行動につなげるためのヒントを指し示してくれました。

また、「地域の元気とJリーグ」をテーマに語った辻井隆行さん(Jリーグ執行役員)からは、気候変動によってJリーグの中止試合数がこの10年で4倍にもなっているという衝撃の事実が語られ、Jリーグの地域でのさまざまな取り組み事例から、今私たちにできることを深く考えさせられた時間でした。

「多くのサポーターがいて影響力が大きいからこそJリーグから発信していくことで気候危機についてより多くの人に知ってもらう機会になるのでは」と語る辻井さん。YouTube動画で先週が環境のことを伝えたり、地域の子どもたちへのサッカー教室でも気候変動について伝えるなどさまざまな取り組みを行っている。photo by 牧野 弘

「ビーチクリーン×ゼロウェイスト」をテーマに登壇したのはリユース食器の普及に取り組む義積真吾さん(株式会社カマン代表取締役)。相模川河口のクリーン活動を継続しているファシリテーターのBENIRINGOと「ゴミ問題」という共通項で共鳴し、ゴミの現状から日本各地でのリユース食器の導入事例と現在地、これからの展望まで深い対話が交わされていました。最後に語られた「日本は世界的にみてもゴミが落ちていない綺麗な国。マインドは既に備わっているので、システムさえできれば先進的な取り組みも実現していける」という力強い言葉には、これからへの希望を感じることができました。

大学時代から環境に興味はありながらも別の職業に就き、子どもができたことをきっかけに現在の事業をスタートさせたという義積さん。より多くの人にリユース食器を使ってもらうために今期の湘南ベルマーレのホームゲームにおいて全キッチンカーに導入する実証実験を行うなど精力的に活動を展開している。 photo by 牧野 弘

熱を帯びた対話が続いたトーク会場のすぐ近くには、ペットボトルをリサイクルしたオリジナル風呂敷を使った資源循環ワークショップのブースが賑わいを見せていました。HARVEST PARKはゴミ問題に端を発していることもあり、会場内にゴミ箱を設置していません。でも風呂敷さえあれば購入したものやゴミの持ち帰りに困ることなくイベントを楽しむことができます。そんなメッセージが込められたワークショップは常に大盛況で、会場内にはカラフルな風呂敷を手にした人々が至るところで買い物を楽しむ様子が印象的でした。

風呂敷のワークショップを開催していた化粧品ブランドLUSHの担当者は「日本が誇る風呂敷をバッグとして使えるようになることで、最後にはプラスチックごみの削減に向けた行動を自ら起こし、ライフスタイルにまで落とし込む機会になったら」と語った。この日のためにオリジナル風呂敷「Knot Wrap (ノットラップ) 」を約3,000枚も無償提供したと聞き、頭が下がる思い。photo by 牧野 弘

それ以外にも、飲食物にはすべてリユース食器が使用され、ゴミ箱の代わりに回収ボックスが設置されていたり、再生可能エネルギー100%の電力会社のブースではその場で切り替え手続きができるようになっていたり、来場者が行動につなげられるきっかけが至る所に散りばめられていました。トークのインプットをすぐに行動やアウトプットにつなげられる環境づくりに、HARVEST PARKならではの強い信念を感じることができます。

そして何より、ゴミが落ちておらず発電機の音も少ない会場は本当に気持ちよく、いつまでもここにいたいと思える心地よさに満ちていました。

会場内4箇所に設置された回収ボックス。ゴミ箱と間違える人も多い中、ボランティアが見守り、このボックスの意味を伝える姿も。photo by 牧野 弘

共感が生み出した、”楽しみながら運営する”というパワー

photo by Mariko Shinchi

HARVEST PARKを語る上で欠かせないのがボランティアスタッフの存在です。会場内には至る所にスタッフTシャツを着た方々の姿があり、駐車場・駐輪場の整備からクリーン活動、リユース食器の回収まで、精力的に動く様子が印象的でした。

中には大人と一緒に作業をおこなう子どもの姿も。大人の背中を追いかけながら、誰よりも笑顔で行動していたのは彼だったかもしれません。最後まで休むことなく、会場内を駆け回っていました。

風で飛ばされそうなテント対策として土嚢を運ぶボランティアスタッフの皆さん。一生懸命後を追う子どもボランティアに声をかけると「ぼくは楽しいからやっているんだよ!」とキッパリ。photo by Misako Ikeda

ボランティアスタッフといえば、ここで後日談を少し。

イベント翌日、会場近くのキッチンでは1万個ものコップと5,000枚を超えるリユース食器を一つひとつ丁寧に手洗いするボランティアのみなさんの姿がありました。

初年度同様、イベントの飲食用に導入されたリユース食器ですが、昨年は業者からレンタルしたものを使用していました。でも今年は「HARVEST PARKを10年続けていく」という決意の元、自分たちで食器類を購入し所有する道を選びました。

「手間をかけることでゴミを極力減らしていく。このあり方が、HARVEST PARKからまちへ文化として根付かせていく」という想いを共にし、イベントの余韻を楽しむように手を動かすボランティアのみなさんの姿が印象的でした。

イベント翌日、約20人で3時間半もの時間をかけてリユース食器を洗い上げたボランティアのみなさん。リユース食器の回収率は、ボウル・プレートは96.0%、スプーン・フォーク類は93.1%、ドリンクカップは破損も多くあったため70.8%だったとのこと。photo by Misako Ikeda

平和って、こういうこと!

イベント終盤には、場内に全長4.0mの外骨格恐竜「シロ美」が登場し、子どもたちのボルテージも一気に上昇!ワークショップで「コシロ」になった子どもたちがそのあとを追い、自由で平和な空気が会場を包み込みました。1万5,000人の来場者誰もがこの場を楽しみたいと願い、お互いを許容しあうHARVEST PARKの空気を象徴するような光景です。

photo by 牧野 弘

photo by 牧野 弘

満を辞して登場したメインアクト・Caravanさんの1時間に渡るステージでは、アーティストとして参加したおおはた雄一さんが再度ステージに上がってセッションを披露したり、主催者として1日中場内を駆け回っていた「はちいち農園」の衣川晃さんがコーラスとして登場したり。

ミュージシャンとしても活動している「はちいち農園」のファーマー・衣川晃さんがステージへ。このふたりのつながりから始まったHARVEST PARKを体現するようなパフォーマンスに会場は沸きました。photo by 牧野 弘

そしてオープニングに登場した香川小学校の子どもたちも、Caravanさんのコーラスとして再びステージへ。

香川小学校の児童たちがCaravanさんのコーラスとして登場。Caravanさんは「子どもたち、最高。先生もまた最高!」と語り、場内からは大きな拍手が沸き起こりました。photo by 牧野 弘

透明感のある歌声に聴き入ってると、ふと一人の幼児の姿が目に入りました。小学生と共に躊躇うことなくステージに上がって歌い、その後もCaravanさんの後ろにそっと立ち、背中をじっと見つめているありのままの姿。

photo by 牧野 弘

彼の存在に気づきながらも誰一人それを止めることなく、笑顔で見守るおおらかな空気が、そこには確かにありました。「これがHARVEST PARKなんだ」と、私の中で腑に落ちた瞬間です。

大人は子どもに導かれるように楽しみ、子どもは大人の背中を追いかけ憧れて。
ルールがなく、お互い様の空気に包まれ、誰もがお互いの自由を許容しあう世界。

次世代に手渡したい真に平和な世界ってこういうことだなぁと感じるとともに、私自身もこの場に身を置き、このあり方を体感できていることにじわじわと感謝の気持ちが芽生えました。

Caravanさんは、イベント開催前の主催者インタビューで「イベントは華やかな部分ばかりをつい表現しちゃうけど、僕らはちゃんと地に足をつけて信念を持ってやっていきたい。それが文化として根付くということなのかな」と語っていました。

HARVEST PARKを体感した人々を通してこのあり方がじわじわと根付き、いつか本当にこの地の文化となる日も来るかもしれない。そんな期待とワクワクを込めて、このレポートを終えたいと思います。

来年もまた、この日この場所で!

主催者のCaravanさん(中央)、「はちいち農園」衣川晃さん(左)、衣川木綿さん(右)と来場者の皆さん。 photo by 牧野 弘 

HARVEST PARK 2024開催概要

日時:2024年11月3日(祝) 10:00〜16:00
場所:神奈川県立茅ケ崎里山公園(茅ヶ崎市芹沢1030) 
入場料:無料

来場者数:1万5,000
リユース食器回収率:ボウル・プレート96.0%、スプーン・フォーク93.1%、ドリンクカップ70.8%

後援:茅ヶ崎市、茅ヶ崎市観光協会、 茅ケ崎FM、神奈川県立茅ケ崎里山公園
協力:ふるさとファーマーズ
協賛:Allbirds 、株式会社中央物産、株式会社エネマン、G&ECO、GOHEMP、go slow caravan、Jリーグ、KEEN、みんな電力、パタゴニア プロビジョンズ、STUDIO BYRD、SOYSCREAM!!!、TERRA

主催:HARVEST PARK 実行委員会

ホームページ:https://harvestpark-chigasaki.com/
Instagram:@harvest_park
X:@HarvestParkCGSK
YouTube:@HarvestPark-Chigasaki
問い合わせ先:hpc@harvestpark-chigasaki.com

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住所

神奈川県茅ヶ崎市/茅ケ崎里山公園

公開日:2024-11-18

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