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【HARVEST PARK 2024】楽しんでもらうこと、感じてもらうこと、そして根付いていくこと。~実行委員会コアメンバー3人への特別インタビュー~

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【HARVEST PARK 2024】楽しんでもらうこと、感じてもらうこと、そして根付いていくこと。~実行委員会コアメンバー3人への特別インタビュー~
左から八一農園の衣川晃さん、ミュージシャンのCaravanさん、ふるさとファーマーズの石井雅俊さん

 2023年の文化の日に産声を上げた、食・農・音楽を融合したフリーイベント「HARVEST PARK(ハーベストパーク)」。あの日、穏やかな茅ヶ崎の里山エリアに広がった「多様で自由でピースフルな空間」を主催者たちはどのような想いで見ていたのか。
 いつもより開花の遅れた彼岸花が揺らぐ10月上旬の県立茅ケ崎里山公園で、HARVEST PARK実行委員会の中心人物であるミュージシャンのCaravanさん、八一農園の衣川晃さん、ふるさとファーマーズの石井雅俊さんの3人にそれぞれの想いを語ってもらいました。

※HARVEST PARK 2024の開催情報はこちらの記事をチェック。

眼前に広がった世界 「そう、こういう世界が見たかったんだ」

― 昨年初開催だったHARVEST PARKには、茅ヶ崎の北部里山エリアのイベントとしては過去に無いくらいの来場者が集まりました。皆さんの元にはどんな声が届いていますか。

Caravan:みんな言ってくれたのは、「すごくピースフルで平和な空間だった」ということ。大人も子どももあれだけの人が集まっても揉め事なく、さらにはゴミも落ちていない。みんなルールを守っているんだけど、それでもみんな多様で自由で。なんか世界がこんなだったらいいなって思えた、そんな感想を言ってくれる人がいました。

僕らも「そう、こういう世界が見たかったんだ」って。結局、僕らはすごく少ない人数で頭の中に描いたものを具現化しようとしてて、純粋に「こういうの良くない?」っていうのを形にしてるんです。だからその辺はすごく動機が純粋で。そういうところがあの空気を作ったのかな、って思っています。

衣川:HARVEST PARKのいいところは子どもたちも楽しめる空間づくりをチームで徹底して作り上げていること。平和な空気はそこから生まれているんじゃないかな。会場内には恐竜の被り物をした子がたくさん歩いてるんです。あれがめちゃくちゃ平和の象徴なんですよね。HARVEST PARKのマスコット的存在だと思ってます。

Caravan:恐竜の名前を「シロ」って言います。そこに、ワークショップで子どもたちが自分たちサイズの「コシロ」の被り物を作って、シロが歩く後ろを列になって付いて行く。夕焼け時にシャボン玉が舞う中、シロたちが行進しているのを見ると、それだけで涙が出るんですよね。なんてきれいなんだろうと。

― Caravanさんは運営だけでなく、演者としてもステージに立ちました。あの場に立って感じたことを教えてください。

Caravan:単純に、グッときましたよ。HARVEST PARKは、アキラ(衣川さん)が「茅ケ崎里山公園っていう場所があって、あそこの多目的広場がすごくいいんだよ。そこでCaravanが歌っている姿が見えるんだ。イベントやろうよ」って言ってくれたことがそもそものきっかけで。

でも一回目をやるまでに4~5年かかった。ミーティングしては寝かせて、そしてコロナ禍もあって。やりたくてもやれない状況が繰り返されての初回だったから、やっとここまで来たんだなって。そっか、アキラが見たいって言っていた景色はこれかって。アキラは当日裏方に徹してくれていたけど、代わりに見せてもらったって感じがしてすごくグッときました。

衣川:何回もロケハンしたもんね。ここがステージでこの向きで、って。

― ステージに立ったCaravanさんを見て、衣川さんも感慨深かったのではないでしょうか。

衣川:これはリアルな話ですけど、普通に泣きました(笑)。他のメンバーもみんな泣いてましたよ。そう言うCaravanも、出番が終わった後泣いてました。

Caravan:いろんな思いが込み上げてきちゃって。うわー泣いちゃったよって思ったら隣でアキラがもっと泣いてた(笑)。言葉は出なかったけど、それがよかったなって。思い出してもじわっと涙が出てきますね。

みんなが自分ごとにして同じ景色を思い描いて歩んできたので、そこがグッとくるというか。青臭いけど、このイベントって本当に純度が高くて、突き動かされるものだけでやっている感覚なんです。

石井:全国へライブに行くほどのアーティストが一つのイベントのために、一年を通してゴミ拾いをしながら準備をするってなかなか無いことだと思うんです。みんなその想いに感化されて、そういう世界を作ろうとして、それが体現できたのが去年のHARVEST PARKだったと感じています。

文化の日に開催する意義 「地域のカルチャーとして根付かせて」

― それだけ素晴らしい一日だったんですね。皆さんの達成感がとても伝わってきました。

Caravan:まずは開催できたってことで一つ目標は達成できました。そして見たかった世界を見ることができた。でも一方で、来場者数が自分たちの想定をはるかに超えてしまい、フードやドリンクがお昼前に売り切れてしまったことは反省点です。

利益を求めてやっているイベントではないから全員を満足させるのは難しいと思うけど、僕らなりに誠意を持って、一人でも多く楽しんでもらえるようにと今は準備を進めています。

― 今年、新たに盛り込んだコンテンツはどんなものがあるのでしょうか。

Caravan:地域の人たちとコラボしたコンテンツを新たに盛り込みました。近くの香川小学校の子どもたちに、有志でオープニングアクト的な形で合唱をしてもらおうと思って。あと僕のライブにもゲストで入ってもらって、コーラスに参加してもらいますね。他にも里山公園の方から、花壇に植物を植えるというワークショップの提案をいただき、コラボすることが決まりました。去年は自分たちだけで企画を考えていたけど、今年はより地域や公園と一緒にってことが増えてきてますね。

― 地域とのコラボは元から目標として持っていた。

衣川:まさに、本来やりたかったことですね。子どもやお年寄りも含めてHARVEST PARKというイベントが楽しみになってくれたらいいなと。なかなか普段コミュニケーションを取ることのない人たちもいるので、年一のこのイベントで顔を合わせることができたらいいですね。ある意味、地域のお祭りみたいな。

子どもたちがCaravanのライブにゲスト参加してもらうのも、音楽カルチャーを体験してもらいたいから。それが彼らの未来につながって、将来ミュージシャンになる子も出てくるかもしれない。このイベントを文化の日にやるというのはそういった意味合いもあって、食べるという食文化もそうだし、カルチャーとして根を張っていくことが大事だと思ってます。

想いが想いを呼ぶ 継続がはぐくむハーベスト

― 先ほど「子どもたちも楽しめる空間づくり」という話がありましたが、どんなことをされるのでしょうか。

Caravan:例えば前回に引き続き、今回もアーティストの近藤康平さんがリーダーになって子どもたち全員で大きなコンパネに絵を描くというワークショップがあります。完成した絵は最終的にステージに飾られてセットの一部になるのですが、昨年描き上げたコンパネも形を変えて再利用して今年のステージのオブジェになります。

他にも、石を割って中から水晶を取り出すワークショップがあったり、シャボン玉を飛ばしたり、アウトドアブランドのKEENが輪投げをやってくれたりします。

― KEENが子どもたち向けに輪投げを、というのは意外で面白いですね。

Caravan:いろんなフェスへの出店経験があるので、僕たちがこういうイベントをやりたいって言ったら「じゃあ子どもがいっぱい来るから輪投げをやるよ」と提案してくれました。他の企業さんたちもそういった形で、僕たちに何をやるか提案してくれます。

― 協賛企業や出店者を集めるのも皆さんが直接やられていると聞きました。

Caravan:はい。でも闇雲にお願いしますと言っているわけではなく、イベントの趣旨に賛同してくれそうなところに話を持って行っています。本気で賛同してくれた人とやっていることで、この空気感が統一されている気がしますね。

石井:出店者の皆さんも「本当にいいイベントだったからまた来年も出たい!」と言ってくれて、結局今年は9割が同じ出店者です。これは本当にうれしかったですね。僕たちにとっての一番のハーベストでした。

― HARVEST PARKを語る上で欠かせないのが、毎月第1日曜に皆さんで行っている「里山クリーン」ですよね。活動がスタートして1年が経ちました。

Caravan:多いときは50人、少ないときでも30人くらいで活動を続けています。固定のメンバーの他にも地域の自治会長や議員さん、学校の先生が来てくれたりするようになりました。はじめは僕たちの仲間で始めたところが地域に少しずつ浸透してきて、新たに来た人がまた別の人を呼んできてくれたり、一年やって地域の方にも「こんな素敵なことをやってたんだね、知らなかったよ」なんて声もいただけたり、やっぱり地道にだけど伝わってきているのかな。

衣川:普段は会話しない近所の年配の農家さんが僕を見て挨拶をしてくれて。地域とのつながりを作りたいと思っていた僕からすると、とても嬉しい出来事でした。温かく見守ってくれている感じをすごい受けます。

Caravan:HARVEST PARKを年1回だけやるみたいなチームになっちゃうと、お祭りで派手なことをしたいだけの人たちになってしまう。そうなっちゃうと地域に迷惑ばかりをかける人に見られてしまうので、そうじゃないんだよっていうことを認めてもらうために、一年こうして月一回継続してやっていくことでこのイベントが根付いていくんじゃないかと考えてました。

“半歩前”の世界を作る。

― HARVEST PARKは「茅ヶ崎市の里山エリアに光を当てる」ことを一つのテーマにしています。開催することで問題視している不法投棄に改善は見られたのでしょうか。

Caravan:相変わらずな状況です。ゴミを捨てる人たちはこの辺の人たちじゃないから、たぶん情報が届いていないんじゃないかな。でも僕たちの活動に対する周囲からのサポート環境はいい方向に変化している感覚があります。とにかく継続しないと、ってことだと思います。一年じゃなかなか変わらないですね。

石井:今起こっていることはそんなに変わってないかもしれないけど、里山クリーンでゴミ拾いをしてくれている子どもたちは、将来きっと不法投棄なんてことはしないだろうって考えると、未来を変えている感覚は確実にあります。着実にいい方向に変わっていっている。

Caravan:マサくん(石井さん)はふるさとファーマーズの活動で、学校で農業と不法投棄の授業をすることもあるのですが、そういう問題があることに気づいてくれて、それは良くないなって思ってくれる子どもが増えていることは間違いないと思います。僕らが一歩踏み出すことで、未来を少し変えられたらいいなって。

衣川:このイベントには「半歩前の世界を作る」っていうテーマがあります。“半歩”というのは先に行きすぎちゃうとついて来れないし、でも同じことをやってても意味ないし、という想いから。理想を掲げてはいるけど、しっかり寄り添いながら半歩前を僕らはけん引していく気持ちでやっています。

“正しい“を考えるんじゃなくて ”楽しい“を感じる一日に

― 環境に関するトークステージを設けているのもHARVEST PARKの特徴の一つですね。

Caravan:ある意味HARVEST PARKの一番のカラーはそこです。音楽フェスはたくさんあるけど、演奏だったりの合間に、最前線で頑張っている方たちからの貴重なお話を聞けるっていうイベントは多くはないはずです。

― 環境問題を声高にアピールしているイベントは何となく参加しづらい感覚を持つ方もいらっしゃると思います。そのあたり何かケアしていることなどあるのでしょうか。

衣川:その感覚はすごい分かります。僕らは正しさをただ訴えるだけというのは逆に遠回りになると思っています。それより急がば回れで、かわいい、かっこいい、楽しいといった感情の方が大事。だから僕らは表現として文化芸術を選びました。音楽は人の心をたった3分で癒したり、映画は2時間で人を元気にしたりとか、文化芸術は人の心をいい方向にいざなってくれる。お説教ではなく、興味を持ってもらえるような表現ができるように気を使っています。

Caravan:僕らは一貫したものがあって、里山クリーンも「ゴミ捨て絶対反対!」を掲げるんじゃなくて「ハイキングがてらゴミを拾って歩こうぜ、お散歩しよう!」っていうスタンスなんです。NOと言って排除するのも大事なんだけど、否定じゃなくて「これっていいよね」という自分たちのYESを積み重ねていくようにしています。

例えば「このアイス美味しいよね、でもこれって動物性のものが一切入ってないんだよ」とか、「ライブ楽しいね、でもこのステージの電力は全部ソーラー蓄電池でやってるんだよ」とか。でもそれを前面に出すんじゃなくて、気づく人が気づく。わかってくれる人がじわじわ増えていくというか、逆にそれが当たり前になっていけばいいなと思うんです。

衣川:僕らは正しいイベントをやろうと思っているわけじゃない。楽しいイベントをやりたいだけなんです。日々の暮らしの中でも完璧に生きている人なんていない。ただ、この一日だけは理想に近づけたいという努力をしているだけ。その一日をみんなで共有すると「こういう空気いいな、幸せだな」って感じられる、その体験の方が大事。

― 一方的に伝えるのではなく、感じてもらうことを大事にしているんですね。

衣川:茅ヶ崎は海のイメージが強いから、北部に来るとここ茅ヶ崎なの!?って思う人たちも多いです。大山と富士山のシルエット、田んぼがあって稲穂が揺れている風景。そんな茅ヶ崎も実はあって、その存在を知ったらここはゴミを捨てる場所なんかじゃないって気づいてもらえると思ってるんです。そのためには来てもらって、感じてもらうこと。HARVEST PARKに来たことがきっかけで自分が住んでる町、茅ヶ崎という町を再発見してもらえたらいいなって。

茅ヶ崎というまちが持つ“独自のバランス”

― 茅ヶ崎には皆さんのように熱い想いを持って活動している方が多くいるように思います。

Caravan:水が合うというか、肌が合うというか、そういうのは感じますね。アキラみたいな生粋の茅ヶ崎っ子、ローカルな子もいれば、自分みたいにいろいろ転々としてきたけど居心地がよくて長く住んじゃったっていう人もいる。なんで居心地がいいんだろうと言えば、似たような感覚を持った人であったりライフスタイルだったり、この空気感がすごく落ち着くなって思います。

Caravan:HARVEST PARKだって、こんなイベントなんだよって言うと理解してくれる人がたくさんいる。じゃあこれが他の町で同じことをやっても同じことできるかな?っていうのはちょっと分からなくて。聞く耳を持ってくれる人が多かったり、同じような理想を漠然とイメージしている人が多かったりしますよね。やっぱり平和がいいよね、子どもたちがのびのびしている方がいいよねっていう感覚だったり、海や里山があるこの町っていいところだよねって、そんな価値観の人たちが暮らしているから話が通じるというか、共通言語も多いってことで成立しているのかなって気がします。

Caravan:茅ヶ崎って自然もあるけど、田舎ではない。穏やかな空気が流れてるけど都会的な空気もあるし、電車に乗れば東京にも箱根にも行けるアクセスの良さもある。すごく独自のバランスがある気がするな。

衣川:だけど、特に何かある場所でもない。隣の藤沢や鎌倉には観光スポットがあるけど、茅ヶ崎には何もないからサザンって言うしかないところがあるよね(笑)。じゃあ何があるんだろうって考えると、やっぱ人なんだろうなって。面白い人たちがいっぱいいますよね。だからHARVEST PARKみたいなことが市民だけでできるんだと思う。

それぞれの未来に続くイベントに

― 最後に、皆さん一人ひとりから今回のHARVEST PARKにかける想いを教えてください。

石井:自分たちはHARVEST PARKというイベントを茅ヶ崎の北側で開催する、ということを大事にしています。用意した楽しい仕掛けを見てほしいというのもあるけど、「こんな豊かな自然が広がる場所にゴミが捨てられているのか…残念」ということも感じてほしい。やっぱり北側の魅力をもう一回、茅ヶ崎の人も市外の人も再発見してもらえるようなイベントになったらいいなと思っています。

衣川:このイベントをすごい遠くまで広げよう、届かせようというつもりは全くないです。文化として根付くこと、地面に根を張っていくような感覚でこのイベントが残っていって、当たり前の存在になってくれたら嬉しいな。そしてあの平和な空気が当たり前になっていく。そういう意味で言うと“根付いていく“ということが僕からのメッセージであり、希望です。

Caravan:そうだね。やるからには根付かせて、地元の方たちに楽しみにしてもらえるようなものにしていきたい。去年は1回目でもあるけど、ある意味ゼロ回目でもあった。今回はしっかりその辺を整えて、いよいよ始まるなという感覚を持って臨みたいと思います。

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HARVEST PARK HP
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八一農園 HP
神奈川県立茅ケ崎里山公園

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開催日

2024年11月3日(日)
10:00開演~16:00終演

住所

神奈川県茅ヶ崎市神奈川県立茅ケ崎里山公園

費用

無料

問い合わせ

HARVEST PARK 実行委員会

メールアドレス

hpc@harvestpark-chigasaki.com

ホームページ

外部HPリンク

公開日:2024-10-22

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