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看護師が街に出る。茅ヶ崎で日常と医療を近づける、おのでらげんきさん

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看護師が街に出る。茅ヶ崎で日常と医療を近づける、おのでらげんきさん

看護小規模多機能型居宅介護事業所「ぐるんとびー」で看護師として働く一方、茅ヶ崎東海岸南の「TUCKSHOP」では、聴診器を下げたカフェ店員としてお客さんを迎えるおのでらげんきさん。

これまでにも、看護師がお酒を提供するバー「Love Me Tender」や、男性が気軽に参加できる「おっさんずヨガ」、街の人と医療従事者が交流する「癒療酒場」など、一見すると医療とは結びつかないような活動を続けてきました。

それぞれの活動に共通しているのは、医療を病院や診療所の中だけに置かず、もっと日常の近くに届けたいという思いです。

茅ヶ崎で生まれ育ったおのでらさんが、病院を飛び出して街の中で看護師として活動するようになった理由と、これから実現したい「日常と医療を近づける仕組み」について伺いました。

病院の中だけでは、届かないものがある

おのでらさんは茅ヶ崎市小出の出身。大学卒業後は、横浜市内の大学病院に勤務し、循環器病棟で約5年間、看護師として働きました。

高度な医療を提供する現場で患者と向き合う一方、長期入院や再入院を繰り返す人たちを見ながら、次第に疑問を感じるようになったといいます。

「病院では治療をして、できる限り元気になってもらいます。でも、街に戻った後にまた体調を崩して、病院へ戻ってくる人もいる。暮らしの中にまだ解決できていないことがあるんじゃないかと思うようになりました」

病気になった人を病院で待つのではなく、病気になる前や、生活の中で困り始めた段階から関わることはできないか。

そんな思いから大学病院を退職し、訪問看護の世界へ。病院を出て、一人ひとりが暮らす自宅や地域に足を運ぶ中で、医療と日常の間にある距離を、より強く意識するようになりました。

「普段、看護師がいない場所」にいる意味

おのでらさんの活動を広く知られるきっかけとなったのが、看護師がお酒を提供するバー「Love Me Tender」です。活動の出発点は、街の中に健康について相談できる「保健室」のような場所をつくろうとしたことでした。しかし、いざ開いてみても、相談に訪れる人はほとんどいなかったといいます。

「健康相談ができますと言われても、特に症状がなければ行きませんよね。どうしたら来てもらえるんだろうと考えて、だったらお酒を出したらいいじゃん、と思ったんです」

お酒を飲みながら会話を楽しみ、その流れで血圧を測ったり、体調や家族の介護について話したりする。医療相談を目的に集まるのではなく、楽しい時間の中から自然に健康の話が生まれていきました。そこでおのでらさんが気付いたのは、看護師が普段いる場所で待っているだけでは、出会えない人がいるということでした。

「病院や保健室に看護師がいるのは普通です。でも、バーのように、普段は看護師がいない場所に看護師がいると、『ここに相談できる人がいたんだ』と見つけてもらえる。看護師がいない場所に、あえていることに意味があるんだと思いました」

病院へ行くほどではないけれど、少し気になる。家族のことで困っているけれど、どこに聞けばいいのか分からない。そうした小さな不安を拾うため、おのでらさんは看護師の方から街へ出ていきます。

看護師がバーテンダーになる「LOVE ME TENDER」の様子。お酒の瓶の横に血圧計が見えます。

医療・福祉・介護と、街との「交差点」をつくる

現在、おのでらさんがカフェ店員として働いているのが、茅ヶ崎の複合施設「TUCKSHOP」です。

基本的な仕事は、飲み物や食事を提供するカフェの業務。それでも、お客さんとの何げない会話の中で健康や介護の話が出れば、看護師として相談に乗ることもあります。

「わざわざ相談窓口へ行かなくても、カフェで話しているうちに、『実は親の介護が心配で』という話が出てくることがあります。立ち話くらいの気軽さで相談できることが大事だと思っています」

TUCKSHOPでは、街の人と医療・福祉・介護の専門職が、お酒を囲みながら交流する「癒療酒場」も開催しています。

「医療酒場」とすると、医療関係者だけの堅い集まりに見えてしまうため、名前には人を癒やすという意味の「癒療」を使用。医師や看護師だけでなく、介護職、柔道整復師、地域で人を元気にしたい人など、さまざまな人が集います。

専門職にとっては、街の人が抱えている困り事を知る機会に。街の人にとっては、専門職と気軽につながる機会になります。

「TUCKSHOPやを、医療・福祉・介護と街との交差点のような場所にしたいと思っています。専門職だけで福祉を考えるのではなく、子どもも大人も、障がいのある人もない人も、同じ場所にいて、その中から相談や助け合いが自然に生まれる形が理想です」

制度や相談窓口を先に用意するのではなく、人と人との関係をつくり、その中に専門職がいる。おのでらさんが目指しているのは、医療や福祉を特別なものとして切り離さない場づくりです。

癒療酒場では医療従事者をはじめ、多くの方がお酒を片手に医療や介護を話し合います。

「おっさんずヨガ」から始まる健康との接点

おのでらさんが仲間と続けている活動の一つに、男性を主な対象とした「おっさんずヨガ」があります。始まりは、知人との何げない会話でした。

「ヨガをやってみたいけれど、男性一人で教室へ行くのはハードルが高いという話になったんです。それなら、おっさんだけでやればいいんじゃないかと」

健康に良いと分かっていても、最初の一歩が踏み出しにくい。運動不足や血圧が気になっていても、医療機関へ相談するほどではないと感じている人もいます。おっさんずヨガは、そうした人たちが楽しく体を動かし、健康に関心を持つための入口になっています。

おのでらさんにとって、ヨガをすること自体が最終目的ではありません。参加者と顔の見える関係をつくり、困ったときに医療や介護の相談ができる環境をつくることも、大切な目的です。

「『健康相談を受けてください』と言っても、なかなか人は来ません。でも、ヨガをしていたら、そこに看護師がいた。そのくらいの自然な出会い方がちょうどいいと思うんです」

お酒やヨガ、カフェでの会話。おのでらさんは、医療とは一見関係のない「楽しいこと」を入口にして、医療や介護にアクセスする際の心理的なハードルを下げようとしています。

男性が気軽に参加できるおっさんずヨガは毎月茅ヶ崎のビーチで開催。

日常と医療を近づける、新しいサポートへ

おのでらさんが現在構想しているのが、企業で働く人とその家族を、看護師が継続的に支える事業です。特に想定しているのは、働きながら親などの介護を担う「ビジネスケアラー」と呼ばれる人たちです。家族の物忘れが増えた。介護の申請方法が分からない。病院や行政の窓口へ相談したものの、何を伝えればよいのか分からない。介護は、ある日突然始まることがあります。本人の病気や服薬、生活状況が整理できていないまま、家族だけで問題を抱え込んでしまうケースも少なくありません。そこでおのでらさんが担いたいのが、状況を整理し、必要な医療や介護のサービスへつなぐ「通訳」のような役割です。

「僕が直接すべてを解決するのではなく、家族が何に困っているのかを整理して、地域包括支援センターやケアマネジャー、病院など、適切な窓口に適切な内容でつなぐことが大切です」

相談窓口を設置するだけでは、必要な人に使ってもらえない可能性があります。そのため、新しい事業でもおっさんずヨガなどの参加しやすい活動を入口にすることを考えています。まずは楽しく体を動かし、顔見知りになる。その中で、「そういえば看護師さんがいたな」と思い出してもらえる関係をつくります。

「企業で働いている人たちが、医療や介護の不安を抱えながら仕事や生活を諦めることがないようにしたいです。困り事があっても、それまでと同じように暮らし続けられるよう、日常と医療を近づけるサポートができたらと思っています」

病気や介護の問題が大きくなってから対応するのではなく、日常の中で小さな変化や不安を受け止める。病院でも行政でもない、もっと身近な場所に相談できる看護師がいることが、働く人やその家族の安心につながると考えています。

人と人との距離が、ちょうどいい街

病院を離れ、さまざまな活動を始める上で大きな存在となったのが、茅ヶ崎で出会った人たちでした。地域の活動拠点に足を運び、医療とは異なる分野で活動する人たちと出会う中で、おのでらさんの視野は広がっていきました。

お酒を出してみたらどうか。男性だけのヨガをやってみたらどうか。カフェに看護師がいたら面白いのではないか。一人の発想だけでは生まれなかった活動が、茅ヶ崎の人たちとの会話から次々に形になってきました。最後に、おのでらさんの「#ちがすき」を尋ねると、「人との距離感」と答えてくれました。

「人が多すぎず、少なすぎず、人と人が自然に関われる街だと思います。何かをやりたいと言ったときに、面白がってくれる人や、つないでくれる人がいる。人との距離感がちょうどよくて、つながりが生まれやすいところが茅ヶ崎の魅力です」

看護師が病院を出て、カフェやバー、ヨガの会場へ。おのでらさんが街の中につくろうとしているのは、病気を治す場所ではなく、困ったときに誰かを思い出せる関係なのかもしれません。

医療・福祉・介護と日常が交わる場所は、人とのつながりが育つ茅ヶ崎だからこそ、街のさまざまな場所へ広がっていきそうです。

おのでらげんき

おのでらさんインスタグラム(個人アカウント):https://www.instagram.com/genki_nurse/

おのでらさんインスタグラム(事業アカウント):https://www.instagram.com/muku_wellness/

おっさんずヨガインスタグラム:https://www.instagram.com/ossans.yoga/

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住所

神奈川県茅ヶ崎市

公開日:2026-08-19

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