丹沢登山人口は年間約80万人―。「秦野の財産である丹沢をより多くの人々に知ってもらいたい」ということで、なんと!秦野市の高橋昌和市長(62)が自ら広告塔となって丹沢をPRすべく、表尾根縦走に挑戦しました。
生まれも育ちもず~っと秦野市の高橋市長は正真正銘の「丹沢を愛する男」。総勢10名を率いる隊長となって、秦野最高峰の塔ノ岳(標高1490.9m)めざして縦走!〝丹沢レア情報〟とともに塔ノ岳を登山レポートします。※この情報は2019年4月28日現在のものです。
天候 快晴
時間・登山ルート 全長14.4キロ・通常7時間。菩提峠-三ノ塔-塔ノ岳-花立山荘-大倉尾根-大倉バス停登山メンバー 今回の登山隊は11名。
レベル ★★★★☆ 初心者でも挑戦できるが鎖場3カ所注意。大倉尾根下山まで体力温存を。
<目次一覧>
1.菩提峠
2.三ノ塔山頂
3.塔ノ岳山頂
4.花立山荘
5.大倉尾根
6.大観望
7.丹沢山中で唯一のテント場
8.下山
菩提峠から三ノ塔は「無心で登るべし」
- 駐車場情報 菩提峠駐車場に駐車。6時半に駐車場到着したが既に混雑。トイレは無いので500m下にある「富士見橋公衆便所」で済ませてから向かおう。
7:00分出発 「最高の天気。三ノ塔からの富士山が楽しみですね」。秦野市最高峰である塔ノ岳山頂(1490.9m)を目指し、一行は張り切ってまず絶景ポイントの三ノ塔をめざします。
なんてたってこの日は快晴!絶好の登山日和です(2019年4月連休中の唯一の晴れ間)。「市長は晴れ男なんですよ」。さすが丹沢男。
秦野市は山々に囲まれた、神奈川県内唯一の盆地。山の恩恵を受け、産業や地域が発展した街であることがよくわかります。
「実家は三ノ塔の麓にあったんですよ」。幼稚園年長で初登山して以来、三ノ塔はよく登っていたという高橋市長。「小さいのに頑張って登っているね、と声をかけられて。それが嬉しくてそれからどんどん山を登るようになりました」。この三ノ塔ルートはまさに市長にとっては庭のようなもの。
「市長。三ノ塔まで結構な急な登りで辛くないですか…」と質問するも「山は登るものだから、きついとは感じないですね。無心で登ります」と余裕の笑み。
- 登山ポイント 菩提峠からいきなり表尾根の登りピーク?と言っても過言ではない。急登が続くので、初心者は覚悟を。ゆっくり焦らず登ろう。
途中の景色に助けられる!
三ノ塔到着!富士山の絶景
8:10分登頂 「うわ~!」。思わず歓声を上げる一行。美しい表尾根の稜線、そして富士山。この上ない、絶景の景色が待っていました。
表尾根の稜線と雄大な富士山を望む三ノ塔をゴールにする登山者も多い。市長も三ノ塔からの景色が特にお気に入り。「小学生の頃は、天気が良いと、おにぎりを持って友だちと三ノ塔へよく来ました」。この景色は当時も今もなお色褪せません。
トイレ&避難小屋がリニューアル
実に広く、開放感たっぷりの三ノ塔山頂。2018年4月1日に全面リニューアル!三ノ塔までの急登、ゆっくりここで休憩して身体をほぐしましょう。
ついつい長居してしまいそうな休憩所です。
新しい小屋は、中に入るとピクニックテーブルが。とても広々とした小屋は休憩用としてはもちろん、悪天候時の緊急避難小屋としての強い味方になってくれます。
そしてこちら。「トイレを作って欲しい」という登山者の声もあり、最新式の山岳公衆トイレが登場しました。
洋式トイレで内部はとても綺麗に保たれています。
- 三ノ塔トイレ3つのルール
1.使用済の紙などは持ち帰る 2.水を流すのは1回だけ 3.使用料として100円チップを。将来の修繕費用などにつなげていく。
- 誰が管理している? 地域の方が3名体制でトイレを管理。毎月2回、2人1組で菩提峠から三ノ塔まで往復3時間登山し、1時間かけてトイレ清掃。「バイオ式の高性能トイレです。使用したティッシュやトイレットペーパーは必ず入口にあるエチケット袋に入れて持ち帰ってください。流してしまうと分解処理できず、故障の原因にもなります」(管理人の猪股義晴さん)
さあ、いよいよ本格的に表尾根をぐんぐん進んでいきます!塔ノ岳もくっきり。絶景を堪能した三ノ塔を後にして、いざ塔ノ岳をめざします。
衣替えする「お地蔵さん」
9:20分頃 登頂 三ノ塔を過ぎてまもなく。色鮮やかなニットがとてもお似合いのお地蔵さんがいます。
丹沢をじっと見つめ、道行く登山者の安全を祈願。身長30センチほどの小さなお地蔵さん、ぜひチェックしてみてください。
- お地蔵さん情報 定期的に衣替えが行われている!誰が行っているか不明…情報求む。
鎖場ポイントに突入
ついにやってきました、表尾根の醍醐味!?鎖を握って岩場を下りていく、通称「鎖場(くさりば)」ポイント。計3ポイントあるのですが、難易度は上がっていきますので要注意を。
ゆっくり焦らず。ポールも引っかからないように見回しながら降ります。手足四点のうち、三点は固定する「三点支持」を意識します。
そして最後がこちらの鎖場。「上で待っている人がいるから早く下りなくちゃ!」と焦るのは禁物。
「怖い」と思うのは正常な感覚!手から鎖がスルっと抜けないよう細心の注意を払って降ります。
次なるポイントは新大日。階段や岩場を登っていきます。結構急です。
やっぱり日本人の心は「桜」。ついつい足を止めては「あ、桜。ヤマザクラかな」。
伊豆方面の眺望も抜群です。頑張って登った後のご褒美、いただきました!
10:45分 新大日に無事到着。少し休憩です。「塔ノ岳1.4㎞」の看板。あともう少し!
お~雪が残っていますね。「秦野市に住んで10年くらいだけれど、この時期の降雪は記憶にないです」と登山メンバーの一人。前日は塔ノ岳周辺の稜線も真っ白でした。
「今日、実は市長が塔ノ岳めざして表尾根縦走中なんです」と話しかけてみました。「え!あ、秦野市長さんが!?えー!」。
- 登山者トーク 青梅市からやってきたという登山者に遭遇。初めて表尾根コースに挑戦中。「青梅からありがとうございます。丹沢の良さをぜひ広めてください」(高橋市長)。その他、なんと4週連続でやってきているという登山者にも遭遇―。さあ、塔ノ岳まであと少しです。
塔ノ岳登頂!不動の人気ぶり
11:30分登頂 ついに秦野市最高峰・1491m登頂です。
富士山もばっちり見えました。
しかし、まさに「表銀座」。360度、見渡す限り人人人。塔ノ岳の人気ぶりがわかります。
「まずは一休み!お昼にしましょう」。待ちに待ったお昼タイム。
「ランチをのぞけば 人生が見えてくる 働くオトナの昼ご飯」―。「市長、大変恐縮ですが、お弁当を見せていただけないでしょうか?」。まるでNHK番組『サラメシ』のよう。旬のタケノコ、フキは自宅近くで採れたものだそう。おにぎりは3つ!「たっぷりエネルギーチャージできましたね!」。
友よ、忘れない。尊仏山荘「鎮魂の鐘」
高橋市長が今回の表尾根縦走にあたり、立ち寄りたかった場所が尊仏山荘の「鎮魂の鐘」。
この鎮魂の鐘は、高橋市長の母校でもある「神奈川県立厚木高等学校」山岳部OBの早川洸さんを追悼し、設置されたもの。塔ノ岳ベテラン登山者も「ここにあるとは知らなかった…」。尊仏山荘入口に設置されていることは意外と知られていないようです。
尊仏山荘の小屋番アルバイトをしていた早川さん。1955年、山頂から30m下の尾根道で凍死体となって発見され、若い命が失われました。「来られて良かったです」と高橋市長。
母校OBの死を追悼するとともに、改めて登山者の安全を祈願。常にリスクを伴う登山であることを忘れないようにしたいです。
- 「秦野戸稜会」(厚木高校同窓会秦野支部)追悼登山紹介記事はコチラ
花立山荘で絶景&かき氷堪能
13:30分 塔ノ岳山頂から下山開始して約30分。「花立山荘(はなたてさんそう)」に到着。何となくみんなこの先の大倉尾根下山が心配!?「一休みしましょう!」。山小屋オーナーの高橋守さんが笑顔で迎えてくれました。
相模湾、伊豆大島など大パノラマの絶景が飛び込んでくる人気の山小屋。土日営業、宿泊もできます。日中の絶景はもちろん美しいけれど、特に夜景もイチオシ。
名物は「かき氷」。夏期限定とあって、長蛇の列ができることも。秦野の水を麓で凍らせて、担いで上まで持ってきた柱氷を使用。疲れも吹き飛ぶかき氷は、一杯400円。
- イベント情報 麓の秦野戸川公園から小石の袋詰を背負い(通称ボッカ)、リレー形式で所要時間を競う日本唯一の山岳競技「丹沢ボッカ駅伝」(毎年6月開催)ゴール地点の花立山荘。毎年12月31日〜1月1日「年越しの会」、毎年4月第3土曜日「山菜パーティー」、毎年10月第3土曜日「牡丹鍋パーティー」を開催。
さあ、充電完了。再び、大倉尾根へ。
「市長、公務でお忙しいとは思いますが、また山の上から秦野の街を眺めにぜひいらっしゃってください」。高橋オーナーが笑顔で見送ってくれました。
- 花立山荘・高橋オーナーとの“山小屋トーク”も必読!コチラをクリック
大倉尾根本格スタート
決して馬鹿にはできない、とてつもなく続く尾根。通称「バカ尾根」が本格的に始まります。
「ひざ、大丈夫ですか?きてます??」「10のうち6くらい」「結構きてますね…」。こんな会話をしながらひたすら下ります。大倉尾根を絶賛体感中。
絶句。先は長い。
No.28看板にも絶句。スタート地点No.1にはまだまだ…。
堀山の家で休憩
14:30分 そんなわけで、潔く再び休憩。大倉尾根の中腹・標高950mに佇む山小屋。通称〝大人の隠れ家〟「堀山の家」に立ち寄りました。ほっとできる空間が印象的です。
1時間で下山できる立地。「本当は泊まる必要はないけれど、〝この小屋が頂上なんだ〟とファンが集まる」そうです。週末のみ宿泊が可能です。ブログはコチラ。
ふたたび出発!
堀山の家を出発!再度大倉尾根に戻ります。
この階段の段差でさえ膝に響くんです…。
見晴茶屋で休憩。デッキが広がる気持ちの良いスポットです。一行、疲れのピークを迎えました。
レアコース!大観望
世界はガラッと変わり。美しい林道に突入。とても気持ちの良い、穏やかな登山道がしばらく続きます。
分かれ道です。最終的にまた合流するのですが、右の「大観望」はまさに丹沢の“レアコース”。高橋市長も「行ってみよう」とレアコースを選択。右も左も700m先でまた合流します。
- 大観望情報 とても歩きやすい道。景色も良く、キツイ大倉尾根の疲れも取れるかも?おすすめの穴場コース。
丹沢山中で唯一のテント場
「え、キャンプしてる…?」。
思わず目を疑うその光景に足が止まりましたが、正式なキャンプ場でした。
- 突撃取材 「今日泊まっていきますよ」。埼玉県や横浜と各地から訪れていたキャンパー。話を聞くとここは、丹沢の山中で唯一のテント場とのこと。レアスポット発見に大興奮でした。
あともう一息…!
ついに「大倉バス停」の距離表示が消えた。
でも、このゴロゴロ石の小道が「これでもか!」という位に続きます。「市長、あともう少しですよ!」「いやーようやくですね!」。
大倉バス停到着!表尾根縦走制覇
17:00 ついに下山。2016年から開催している山の日イベント「山モリ!フェス」(山と溪谷社主催)会場ともなっている秦野戸川公園に到着。
シンボルである風の吊り橋が「おかえりなさい」と言ってくれているかのようです。
“高橋隊長”と「おつかれさまでした!」と熱い握手。感無量の表情で一枚。
- 地元ローカルテレビ局「J:COM」インタビュー動画はコチラ
いかがでしたか?高橋市長と行く表尾根縦走体験レポート。東京、横浜から約1時間。登ってもよし、眺めてもよし!自然豊かな秦野を織り成す、丹沢の世界を一目見にぜひ秦野に出かけてみてください。