横浜市港北区のパワースポット、地域の憩いの場でもある師岡熊野神社にある「の」の池の工事が完了し、こんこんと湧き出る豊富な湧水が、人々の心を癒しています。神職によると神社に訪れた人の多くが境内の奥にある「の」の池に足を運ぶようになり、毎日のように参拝する人の姿もあるそうです。(2021年1月)
「の」の池とは?
師岡熊野神社の境内には、古い伝説に包まれた「い」の池、「の」の池、「ち」の池があり、今は「ち」の池は埋められていますが、古くはこの3つの池は「いのち」の池と呼ばれていたそうです。「命の源」とも言われ、さまざまな実りをもたらす水に対する人々の畏敬の念がうかがえるエピソードです。
この3つの池の中でも、「の」の池は同神社草創の地で、禅定水と呼ばれる池の水は、どんな干天でも涸れることがなく、大雨でもあふれることがないといわれています。南北朝期の落雷による火災で社殿が消失した際、神宝・神体などをこの池に投げ入れ、焼失を免れたとの言い伝えもあります。
令和神苑
「の」の池には、今は、境内に掘った井戸から湧き出る清水を引いていますが、この湧水は、一昨年に竣工した庭園「令和神苑」の中にも取り込まれ、こんこんと湧き出て「臥龍の瀬」を流れる様子はいつでも参拝者を優しく誘っているようです。この令和神苑もまた、多くの人々の心の拠り所として親しまれています。
【関連記事】
筒粥神事にも「の」の池の水
「の」の池の水は、949年(天暦3年)から続き、横浜市の無形民俗文化財にも指定されている、お粥を用いて農作物の出来や世の中を占う筒粥神事にも使われています。2021年で1072回目となった筒粥神事は毎年1月14日に執り行われます。
粥を炊く大釡には葭の筒27本が入れられており、粥が炊けると、葭の筒を引き上げ、社殿で1本ずつ割り、その中に粥がどれくらい入っているかによって、吉凶を占います。「大麦―三分」「小豆―十分」「大根―半分」「芋―半分」「蕎麦―七分」(2021年の結果)といった具合に。
最後に「世の中(の景気)」が発表されますが、最もドキドキする瞬間です。今年の結果は「世の中―七分」。石川宮司は、皆の無病息災を願うとともに「コロナ禍から、早く日常生活が戻るように」と祈りを込めました。
また、師岡熊野神社付近の一帯には、師岡熊野神社市民の森が広がっており、「の」の池の近くには権現山広場につながる、みくま通りの入り口があります。
師岡熊野神社に訪れた際は、長く地域の歴史や人々を見守ってきた「の」の池を訪れてみてはいかがでしょうか。
▼併せて読みたい▼