【県西移住レポート】栗原しをりさん(真鶴町)昔ながらの生活風景を残す町「適度な距離感が心地いい」

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コーヒー豆の香ばしい香りが広がります

たどり着いた「真鶴町」

コーヒー豆を焙煎した香りがふんわりと広がる店頭と、たくさんの本が詰まった本棚。カウンターに立つ栗原しをりさんは令和2(2020)年11月、真鶴町に移住して「珈琲店watermark」を開業しました。北海道で生まれ、岡山県で生活した後にたどりついた場所に、「昔から住み続けている地元の方たちと、私のように移り住んできた方たち、別荘を持っていてたまの休みに来る方たち。いろいろな人が住んでいて、適度な距離感が心地いいんです」と魅力を語ります。

コーヒー豆を焙煎・販売する「珈琲店watermark」

栗原さんはこれまでに備中和紙の作り方を学ぼうと岡山県に移住し、タコをハンガーのように吊るす昔ながらの風景が残る漁村で生活していました。しかし、いずれの土地も住んでいくうちに、まちの風景が変わっていってしまったといいます。そんな中、知人の紹介で出版業と宿を運営する『真鶴出版』を通して真鶴町の存在を知りました。真鶴町でのまちあるきツアーに参加して目の当たりにしたのは、地元の人がスーパーやデパートではなく、肉屋や魚屋といった専門店で買い物をする姿。「昔ながらの風景が今も残り続けるこのまちなら、私がお店を開いても人が来てくれるかな」と移住の決意を固めました。お店の場所は、地元の人が通う肉屋と美容室の前。営業日は毎週金曜日・土曜日・日曜日の3日間のみですが、オープンから1年を経た現在、地元の人や観光客が多く訪れる店となっています。

“真鶴らしさ”を残す「美の基準」

地元の人が通う肉屋と美容院

栗原さんが惹かれた真鶴町の街並みは、真鶴町が平成5(1993)年に制定したまちづくり条例(通称:美の条例)のルールのひとつ「美の基準」が関係しています。「美の基準」は、1980年代のバブル期に起きたリゾートマンションの建設ラッシュから町を守るために作られました。場所や格付け、尺度、調和、材料、装飾と芸術、コミュニティ、眺めの8つの観点と、「さわれる花」「舞い降りる屋根」「小さな人だまり」などの69のキーワードで真鶴の考える「美」を定義しています。例えば、キーワード「さわれる花」では、道路や建物の足元などに沿って生える花々の保護の重要性を記載し、建物を建てる時には花に触れたり香りをかいだりできるような工夫をするよう示しています。現在も守られている“真鶴らしさ”を気に入って、移住する人も増えているのだとか。

店に人が集まり、つながる場所へ

地元の人が集まって談笑する場所に

「週3日しかお店を開けていませんが、開けていると店の前を偶然通りかかった人がひょこっと顔をのぞかせてくれます。特に地元の方が来てくれるとうれしいですね」と栗原さん。すっかりまちの風景に馴染んで、地域の人が集まり談笑する場所になっています。

取材中にお店に寄った親子。帰り際に店内に向かってバイバイと手を振っていました

店の客同士が交流を深め、関係を広げていく姿を見るのも、栗原さんの好きな風景のひとつです。ガラス作家、織物作家、写真家、絵描き、建築士、出版者、バイオリニストなど、真鶴町に住むバラエティーに富んだ人たちがこの店に集まって、本をきっかけに会話が始まり仲良くなっていくといいます。「いろいろな人との出会いの中で、『困ったときは、この人に相談すればいい』という安心感が持てるのもこの町ならではですね」

真鶴らしさをコーヒーに

のどかなところでリモートワークをしたい人、静けさのある場所で創作活動に集中したい人、まちの美しさに惹かれここでお店をやりたいと思った人など、のどかな時間が流れる真鶴町では、自己実現を目指す人々が多いと栗原さんは教えてくれました。そんな栗原さんは現在、真鶴の道祖神のイラストを添えたオリジナルコーヒーブレンド「sai」を制作中です。「ごつごつと無骨だったり、小さくかわいらしかったりする道祖神がまちなかのいろいろなところにいて、まるで真鶴町を守っているようなんです。地元の方の道祖神の呼び名『さいのかみさん』のように、真鶴の暮らしの中にこのコーヒーが溶け込んでくれたらいいな」と話していました。

真鶴町は、空き物件を活用し、移住希望者を対象としてお試し移住体験事業「くらしかる真鶴」を行っています。
http://www.town.manazuru.kanagawa.jp/soshiki/kikaku/senryakusuishin/1187.html (真鶴町公式ホームページ(くらしかる真鶴ー真鶴町お試し移住体験事業ー))

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公開日:2022-03-14

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