【県西移住者レポート】根本秀嗣さん、佐和子さん夫妻(松田町)古民家に一目ぼれ 自給自足の「豊かな」生活

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【県西移住者レポート】根本秀嗣さん、佐和子さん夫妻(松田町)古民家に一目ぼれ 自給自足の「豊かな」生活
縁側で愛犬「スカイ」とくつろぐ根本夫妻。ゆるりとした時間が流れています

東名高速から好アクセス 「首都圏から一番近い自然郷」

「田舎暮らしには憧れるけど、生活のしやすさも外せない」。そんな「ほどよい田舎暮らし」ができる松田町は、丹沢の山々と酒匂川流域に広がる自然豊かな足柄平野に位置しており、小田急線、JR御殿場線が乗り入れるほか、車では都心から約60分の東名高速道路大井松田ICから約10分でアクセスが可能なことから、「首都圏から一番近い自然郷」ともいわれています。

普段の煮炊きの様子。薪は寄地区の間伐材を使用しています

松田町の北部にある寄(やどりき)地区に暮らすのは、根本秀嗣さん(47)と佐和子さん(45)、一人息子の一登君(11)。NPO法人代表で「山の仕事人」の秀嗣さんと、デザイナーの佐和子さん夫妻の共通の趣味は「山」。移住前は都内や湘南地域などで暮らしていましたが、「山の近くに住みたい」と平成18(2006)年に松田町へ移住しました。

家族で散歩をしに寄地区を訪れたとき、運命の出会いがありました。それは、築百年はありそうな古民家。「子育てで家が手狭になり、広い場所で工作をしたり、大きな畑もやってみたいと思っていたところだった」と佐和子さん。“一目ぼれ”した古民家を見に寄地区に何度も足を運び、地元の方と親しくなる中で、その古民家が空き家だということを知りました。町職員の立会いのもとで大家さんと対話を重ねて、移り住みました。秀嗣さんは「町も大家さんも事務的に進めるのではなく、信頼関係を大切にする雰囲気で、いろんな話をしながら心の距離が縮まっていきました」と振り返ります。

松田町は、町内の物件とそれを取り扱う不動産会社情報を提供する「松田町空地・空き家バンク」という制度があります。また、子育て世代や若年世代の定住促進のため、登録された賃貸物件への入居者には補助金が交付されます。
https://town.matsuda.kanagawa.jp/site/teiju-syoushi/(松田町公式ホームページ(定住対策))

自分たちの手で暮らしやすさを追求

寄地区の竹林整備で切り出された竹を活用して自宅を改装中。「自分で手を加えるからこそ愛着が増します」と秀嗣さん

秀嗣さんは、ヒマラヤ山脈にある標高約8,000m、距離約1,700㎞の縦走路「グレート・ヒマラヤ・トレイル」を現地調査するプロジェクトのリーダーも務めています。海外で過ごすことの多い秀嗣さんは、「海外での刺激で自分の暮らし方を客観的に考えるようになりました」と言います。家族旅行でネパールを訪れたときには、平成27(2015)年に発生した地震を受けてもなお、復興に向けて日々を生き抜こうとするネパールの方々の力強さを目の当たりにして、「生きていくことは、意外とシンプルだと感じました」。

卵からかえしたウコッケイにエサをあげる佐和子さん。「本当にかわいいね~」とメロメロ。小屋は秀嗣さんお手製です

根本夫妻が松田町で描く理想の暮らしは、ガスや電力などを自給自足する「オフグリッド」です。例えば、家の床板をはがして作った土間に設置した薪ストーブはそのひとつ。暖をとるだけでなく調理に使うなど、幅広く活用しています。このほか、服は洗濯板で洗ったり、小屋を建ててニワトリやウコッケイを飼育したり、家庭菜園で野菜を育てたりと、創意工夫を重ねながら家族が力を合わせて理想の暮らしを追求しています。秀嗣さんは「自然の中で暮らすことは、良い面ばかりではないです。でもそういったことも含めて、自分たちでできることは自分たちでやる。そんな日々を過ごしていくうちに、『しっくりする暮らし』になってきています」と満ち足りた表情を浮かべています。

地域のみんなで楽しむ

平成29(2017)年に行った「田んぼでドロンコ集会」

佐和子さんは、町内の公園で出会ったママ友と一緒に外遊びを楽しむグループ「外あそび開拓団のや☆マン(のやまん)」を平成27(2015)年に立ち上げました。川遊びやハイキング、キャンプなど地域資源を生かした「オンリーワンな体験」を一登君や仲間と満喫。佐和子さんは、「川で見つけたもので道具を作ってヤマメを捕まえたり、自分で考え、工夫して行動していますね。あと、風邪をめったにひかないかな」とのびのびと自主性を育む一登君を見守っています。田んぼを借りて米作りも始めました。「苗作りからの挑戦は難しいですが、失敗しても地域の人たちが苗をくれたり、育て方を一緒に考えてくれたり、いろいろと助けてもらっています」。今年からはもっと大きな畑作りにもチャレンジするんだとか。

地域のためにできることを模索

秀嗣さんが立ち上げたNPO法人のメンバー。自然豊かな環境の中で地域づくりを目指しています

松田町での自給自足の生活や周囲の人との関わりを通して、秀嗣さんは、地元の地域資源を掘り起こして持続的に活用できる場を作り、訪れた人との交流を通して松田町の魅力を伝え、地域活性化につなげていくことの重要性を感じています。平成30(2018)年に、仲間と炭焼き窯を40年ぶりに修復し、それをきっかけに、「特定非営利活動法人 仂(ろく)」を立ち上げました。森林組合などの協力で得た間伐材を薪(バイオマス燃料)にすることで、森林保全と再生可能エネルギーの実現の両立を目指しています。「この薪は来年度、松田町の入浴施設『健楽の湯』でも使われるので、いろんな人に喜んでもらえたらうれしい。官民連携して『木』をエネルギーとする循環に取り組んでいきたいですね」と秀嗣さんは力強く語りました。

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公開日:2022-03-02

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