不登校、引きこもり、学業不振、いじめ、怠惰、サボり。兆候をどう見極め、適切に対応してこそ、その後の学校生活に大きくかかわり、進路も左右する――。
「多くの人に会い、自分の知らないことを見てほしい。たくさんの価値観のモデルを見て体験してもらいたい。そして、悩み続け、考え続けることによって大切なものが見つかります。そういう感動する機会をたくさん創ることが大切です」。そう訴えるのは神奈川県教育委員会指定技能連携校「YGS高等部」の校長で、NPO法人青少年育成開発協会代表の山本弘明さんです。
悩みを抱える生徒・家族と向き合い、高校卒業まで導いてきたのは、これまでに約320人にも上ります。
「わかる」と「納得する」の大きな差
山本さんが生徒と向き合う中で大切にしているのが、「わかる」ことと「納得する」ことの違いです。「生徒の理解度の段階を指導する側が正確に把握していないといけない。理解度が深まらなければ、学習に対する関心や意欲に結び付きません」と指摘します。
山本さんによると、「わかる」とは物事の道理や道筋を捉えることであり、関心や興味といった感情にはまだ結びついていない状態といいます。一方、「納得する」とは自分の経験に基づいたことや価値観に合致した時に起き、それを受け入れて気に入っている状態を指しているといいます。
- 「自分がやっていることに興味や関心などポジティブに捉える感情の要素をどう見出すかが非常に大切。学校生活や学業がうまくいかない生徒にその手助けをするのが私の役割」と話します。
「納得」へと導く「先行刺激」
山本さんは、生徒の「納得」へと導く重要な要素が「先行刺激」と考えています。人は自分の周りにある環境から何らかの刺激を受けて行動します。その行動を引き起こす働きのある要素を心理学などの分野では「先行刺激」と呼びます。
「学習や学校生活、社会生活に必要な行動を引き起こすためには、その行動に働きかける先行刺激を生徒に与えることが有効です。繰り返すことで徐々に刺激がなくても行動がスムーズに行えるようになる」と説明します。
- 例えば、歴史を学ぶ前にその歴史に関する場所に行ってみたり、映画を見たりすることや、物理を学ぶ前に力やエネルギーを体感しておくことも先行刺激になるといいます。
専門家だからこそ踏み込める
山本さんが代表を務めるNPO法人青少年育成開発協会では毎月、保護者向けの教育セミナーを実施し、悩む生徒とのその保護者への支援を行っています。なぜ、そこまで積極的に支援活動を続けているのでしょうか?
「価値観が多様化し、人とのコミュニケーションがより求められる今の社会では、不登校や学業不振になる原因は様々で複雑。心理学や福祉の面からのアプローチが必要で、家庭内の問題にも踏み込まなければいけないケースも多い。普通の学校の教員ではなかなか踏み込むことができず、私たちのような教育現場を知る専門家が支援しなければ難しい」と山本さん。
セミナーは毎月開催中。日程や内容はホームページをご覧ください。
https://www.ygs-school.co.jp/publics/index/104/
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