丹沢の水と緑に恵まれた神奈川県山北町。山北駅前は昔にタイムスリップしたかのような昭和レトロなかわいい風景が出迎えます。そして、その街並みを里山が囲うように、のどかな風景が広がっています。昨今、首都圏にも近い神奈川の移住先として注目を集めている山北町。今回はお店をオープンされるなど、山北町で念願の“夢”を叶えた移住者たちを取材しました。
<目次>
・家栽培野菜が自慢のレストランを運営/有賀雅高さん
・鎌倉市と山北町で二拠点生活/泉本保彦さん
・山北町で暮らす都内出身クリエーター/齋藤維吹さん
・山北愛いっぱいで念願の移住&カフェ!/玉上葉月さん・竜一さん
〈週末プチ移住〉自家栽培野菜が自慢のレストランを運営!山北町の大自然で自分と向き合う時間を
普段は都内や横浜、でも金曜日だけは自然いっぱいの古民家レストランの店員に。そんな生活を実現している人々が所属しているのが山北町の農業コミュニティ「こはぐ」です。年齢も在住地もバラバラな40人のメンバーが集う「こはぐ」と週末プチ移住の魅力について、副代表の有賀雅高さんに話を伺いました。
週4時間だけの隠れた名店
古民家レストラン「こはぐの台所」は「自家栽培した野菜の美味しさを多くの人に届けたい」とのメンバーの思いで2023年7月にオープンしました。毎週金曜日12時~16時のみの営業にもかかわらず地元住民らが訪れ、早くも山北町の知る人ぞ知る名店となっています。
有賀さんは「作っている自分達が『なんでこんなに美味しいんだろう』と思うくらい、全部の料理がおすすめです(笑)」と話します。また、地元農家が収穫した野菜の販売コーナーも新鮮でお買い得と利用客に人気です。
きっかけは「自然に触れたい」
仕事で健康カウンセリングをしている有賀さん。体調を崩した人や疲弊している人と日々接する中で「自然に触れることでストレスが軽減されるんじゃないか」との考えに至ったそうです。その思いが知り合いで現代表のトニーさんと一致し、中井町の山を切り崩して畑を作ったのが活動の始まり。徐々に仲間や畑も増え、現在40人のメンバーが在籍し10カ所以上の畑や田んぼを持つコミュニティに成長しました。
自分とのコミュニケーションが大切
現代人はコミュニケーションが不足しているというのが有賀さんの考え。人と自然と、そして自分と、色々なつながりを持てる場づくりも「こはぐ」の目的の1つです。「みんなが優しくつながりあったり野菜を収穫したり。膨大な情報に囲まれた生活から離れて、大自然に身を置くことで自分と向き合う時間を作ることも大切だと思います。自分とのコミュニケーションですね」と有賀さん。
まず来て見て確かめて
二拠点生活を検討している人の心配の1つが「地域になじめるかどうか」。有賀さんは、気になっている地域があれば実際に行ってみることが重要だといいます。「その地域の良し悪しを肌で感じてみて『やっぱりいいな』と思ったら飛び込んでみる、そのくらいの気持ちでいいと思いますよ」
神奈川県内の鎌倉市と山北町で二拠点生活 美しい大自然に囲まれた暮らしを語る/泉本保彦さん
西丹沢の美しい自然の中に拠点を構える泉本保彦さん。鎌倉市の自宅と山北町の山荘兼オフィスの二拠点生活を続けています。自然の中に身を置ける山荘探しにおいて、いろいろある候補地の中で山北町を選んだ理由を聞きました。
出会いはサイクリング
山北町を知るきっかけは、趣味で参加していた自転車チームのサイクリングでした。「山、湖、富士山…、何度か来るうちに好きになっていました」。
パリや東京を拠点に世界中を飛び回っていたものの、コロナ禍を経てオンラインでの仕事が中心になった時に山北町へのオフィス移転を思い付いたそうです。
山北はサイクリングに絶好の場所で「きれいな景色を見ることができたり、いわゆる激坂があったり。家の近くを1周するだけでも楽しいです」と泉本さん。奥さんとふたりでサイクリングをすることもしばしばだといいます。
1000坪の山林とともに
その後、山間部の古民家を購入し、山北暮らしが始まりました。「1000坪の森がついてきたのは想定外でしたけどね」と笑顔で振り返りますが、お隣さんとの距離は約500メートル。ゆったりとした時間が流れる「山暮らし」は心身ともにリラックスできる最高の時間だと言います。
山北を目いっぱい楽しむ
地域活動にも積極的に関わっています。昨年は共和地区に伝わる伝統行事でユネスコ無形文化遺産にも登録された「山北のお峰入り」にも参加させてもらったそう。「色々な人と雑談したり交流したりできる場所はかけがえのないものになっています」。
自分ができるところから変えていく
二拠点生活を始めてすぐに自身の所有する山林の間伐を行い、自然環境の改善にも取り組んでいます。「針葉樹を間伐すると地面に日が当たり、広葉樹も生えてくる。混交林ができて土壌が豊かになっていくことで、山や川の生き物が元気になる。自分でできることから始めれば何かが変わる」と考えを語ります。今後は知り合いの町民にチェーンソーの使い方を教わり、自身でも木の伐採に挑戦するそうです。
楽しみ方は人それぞれ
山北町に移住や二拠点生活を検討している人に対して泉本さんは「どのような職業の人もどのような趣味を持っている人でも何かひとつ自分が『好きだな』と思えること、私の場合は自然との共存ですが、これを山北町と掛け合わせて考えることで、生活が何十倍も楽しく、有意義になると思っています」と話します。自分の興味関心を心置きなく楽しめる山北町へ移住や二拠点生活を検討してみては。
仕事も暮らしも大満足!神奈川県山北町で暮らす都内出身クリエーターにその魅力を聞く/齋藤維吹さん
丹沢山地の豊かな自然を求めて近年移住者が増加している神奈川県西部の「山北町」。今回は都内から山北町へ移住し2024年で4年目を迎える音楽クリエーターの齋藤維吹さんに町での暮らしを伺いました。
静かで気分転換できる場所
以前は都内のゲーム会社でゲームサウンドなどを制作していた齋藤さん。「コロナでフルリモートになって家に缶詰状態になってしまった。外に出てもお店が閉まっていたり車の音が常に聞こえるような環境だったので、静かで気分転換できる場所に移り住んでみたかったんです」と振り返ります。
きっかけは音楽仲間からの紹介。「実はその知り合いが先輩移住者で。試しに来て見たらまさに自分が求めている環境だったのですぐに移り住みました」。現在はフリーランスで楽曲制作の仕事をしているといいます。
気兼ねなく作業に集中できる環境
離れにある仕事部屋は完全防音。大きな音を出しながら音楽制作ができるといいます。「移住前はヘッドホンをして作っていましたが、スピーカーから出る音を聞くのが一番作りやすい。離れなので仕事に集中できるのも良いところだと思います。作業してて気づいたら夜中になっていた、ということも多いです(笑)」と仕事環境の良さについて話します。
生活も意外と不便なく
事前のリサーチはあまりしていなかったという齋藤さん。しかし住んでみると不便さや生活しづらさは感じなかったといいます。「車があれば隣町にもすぐだし、少し足を延ばせば小田原にも40分くらいで着く。都内方面へのアクセスも思っていたより良かったです。通学についてもスクールバスが出ているので、お子さんのいらっしゃるご家庭でも問題ないと思います」と話します。
また、地元住民から良く思われないんじゃないか、との不安もあったというが「近所の方がとても親切で。地域について色々教えてくれたり暖かく迎え入れてくれました」と語ります。
「若者こそ田舎暮らしを楽しめる」
「田舎暮らしは若者向き」だと齋藤さんは言います。「自然を楽しんだり車があると便利だったり、古民家だから心置きなくDIYできたり。若くて元気だからこそ楽しむことができる魅力が山北には詰まっている」と話す齋藤さん。リモートワークやフリーランスなど働き方が多様化している現在、若者も田舎暮らしを検討してみては。
「山北愛」いっぱいで念願の移住!/玉上葉月さん・竜一さん
駅前にCafeをオープン
JR御殿場線山北駅前のこんなのどかな風景からおよそ1分位歩くと、上写真にあるレトロかわいい雰囲気が漂うお店が目の前に登場。ここが2人が一昨年にオープンしたHemp Cafeの「haz」(ハズ)です。
栄養価豊富な素材を使った料理の数々で体の内側からきれいになってほしいというのがコンセプトです。中でもこだわってるのが『足柄地域を食べられる』として人気のカレー。文字通り、足柄地域で採れる旬の野菜をふんだんに使っています。日によってカレーやサイドメニュー、スイーツなどが変わるので、何度も訪れたくなるお店です。店主厳選のコーヒーや手作りスイーツも美味!
山北町で暮らすきっかけは?
山北町の豊かな自然は、もともと、葉月さんが追い求めていたものでした。おいしい空気にきれいな水、そして豊富な農産物…。都会暮らしも長かった葉月さんにとって、こうしたありがたい環境が、当たり前のように揃っていたのが山北町だったのです。
それでも、すぐに移住へと踏み切りませんでした。なぜなら、田舎の良さだけでなく、難しさも知っていたからです。人と人の距離感も都会とは違うはず。まず自分を知ってもらわなければ、地域も心を開いてはくれないのではと考えたのです。
急がば回れの精神で!
そこで葉月さんが考えたのは「町に住む前に地域の人と関わりを持とう!」ということでした。まず、近隣の市町から憧れの山北町を見つめてみることに。地域のイベントに積極的に参加するのはもちろん、仕事を通じて交友関係を広めていきました。こうしてたくさんの人と出会い、いろいろな話に触れる中で山北町への思いは高まるばかり。暮らしていける自信もつきはじめ、山北町への移住を決めたのです。
自分の経験をみなさんへ
昨今の移住や二拠点生活ブームに乗り、山北町にも問い合わせは増えているといいます。自身も移住者の一人として、移住のきっかけや実際に住んでみての感想などを聞かれることも多いそう。そんな時は決まって、経験談を伝えることを心掛けています。2人が開いた商店街のCafeのように、自分の話が参考になって大好きな山北町に新たな動きが生まれることも期待しています。
モノを大切にするココロ
店内の一角には、店主セレクトの古着アイテムが並ぶコーナーがあります。アパレルの仕事に携わっていた経験から来るものですが、そこにはもう一つ「モノを大切にしたいし、してほしい」という思いが。中には、このコーナー目当てで来店する人もいるといい、野菜と同様に、旬のアイテムセレクトに、店主の技とセンスが光ります。
みんなが集える場所に
店内には、ソファや椅子席のほかにも、子ども連れでも安心してくつろぎタイムを過ごすことができる小上がりの席も用意されています。扉を閉めれば個室感覚、ごろ寝もできるし、おもちゃもあって予約が多い人気スペースになっています。不定期で店内でイベントを開催することもあり、誰もが集い、楽しめる場所づくりに力をいれています。
山登りの前後にも
店から徒歩で1~2分の場所には臨時駐車場も。登山前後のエネルギーチャージにもおすすめです。席の予約、テイクアウト、営業情報はSNSや電話で事前チェックを!
haz ( Hemp Cafe)
神奈川県足柄上郡山北町山北1889-15(JR御殿場線山北駅徒歩1分)
営/木曜~日曜 11時から17時 休/月曜~水曜
※営業スケジュールは変更の場合有。事前にSNSのチェックや電話で問い合わせを
Tel 080・3551・8856
インスタグラム @haz.yamakita