金子 智香(かねこ ちか)さん
茅ヶ崎市東海岸在住。2020年に埼玉県上尾市から茅ヶ崎市に移住。子ども服のデザイナーとして都内に勤務する傍ら、茅ヶ崎ではサーフィンを楽しみつつ、シャボン玉を飛ばす“シャボン玉お姉さん”として子どもや大人たちと楽しい時間を紡ぎだしている。
茅ヶ崎の海岸に現れる“シャボン玉お姉さん”
皆さんは茅ヶ崎の海岸にあるTバーの周辺で大きなシャボン玉を飛ばしているお姉さんを見かけたことはありませんか。海岸に大小無数のシャボン玉が飛び交う“エモい”Instagramの投稿を目にしたことはありませんか。
そんな絵になる光景を作り出している人物こそ茅ヶ崎の“シャボン玉お姉さん”こと金子智香さんです。
シャボン玉を飛ばし始めた理由とは
朝日・夕日を浴びて虹色に輝くシャボン玉、シャボン玉と無邪気に戯れる子どもたちと犬…。数々のどこか儚げで芸術的なInstagramの投稿を見ていたので、“大人が砂浜でシャボン玉を飛ばしている理由”を想像しながらインタビュー取材に出掛けた『#ちがすき』記者。しかし、金子さんがシャボン玉を飛ばしている理由は少し意外なものでした。
「子どもと犬が大好きなので、一緒に遊びたい、友達になりたいと思っているんです。でも、見知らぬ私が急に近寄っていくと警戒されてしまう。じゃあ、子どもたちが私に興味を持ってくれそうなことは何かなと考えたことが始まりです」と金子さん。
アレコレ考えて辿り着いたのがシャボン玉を飛ばすこと。「シャボン玉を見つけると子どもはすぐに集まってきてくれて、大きなシャボン玉なら『一緒にやりたい!』と声を掛けてもらいやすいかなって。実はシャボン玉は子どもと犬と仲良しになるために飛ばしているだけなんです」
子どもたちと一緒に楽しむシャボン玉
シャボン玉を飛ばしている様子を見せてもらうため、「いつもの場所です」という自宅近くのTバーの辺りに移動すると待ちきれない様子の子どもたちがすでにスタンバイ。聞けば、いつも一緒に遊んでいるというももちゃんとゆうかちゃんで、我先にと金子さんのもとに駆け寄ってきます。
急かされるように準備をしてシャボン玉を飛ばし始めると、ももちゃんとゆうかちゃんは潮風に流されるシャボン玉を追いかけて裸足で砂浜を走り回り、『ちかちゃん、やらせて』『今度はこの道具を使おうよ』と大きなシャボン玉や無数の小さなシャボン玉を飛ばして大盛り上がり。偶然居合わせた子どももそんな楽し気な様子に誘われ、自然な流れで仲間に加わって賑やかな歓声が砂浜に響いています。
「割れにくいシャボン玉液やシャボン玉の大きさや数などあれこれ試行錯誤をしていたので、今では自作したシャボン玉道具が10個はありますね」と金子さん。道具を使い分けて、大きなシャボン玉や小さなシャボン玉を次々と飛ばして、子どもたちと一緒に楽しい時間を紡ぎだしていました。
記者も子どもたちに混じってシャボン玉飛ばしを体験。簡単そうに見えますが、うまく飛ばすのには意外とコツがいるのです。初対面の記者であっても子どもたちがとても喜んでくれるので、つい取材を忘れて大きなシャボン玉・たくさんのシャボン玉を飛ばそうと夢中になってしまいました。実際に体験してみると、子どもたちと仲良くなるためにシャボン玉を選んだ金子さんの気持ちが分かったような気がしました。
シャボン玉が紡いでくれた大人たちとの繋がり
「はしゃぐ子どもたちも可愛いのですが、それを見守るパパさん・ママさんもすごく良い顔しているんです」と金子さんが言うようにシャボン玉を楽しんでいるのは子どもたちだけではありません。「ちかちゃん、今日もシャボン玉飛ばしているね」とシャボン玉に誘われるようにやって来た散歩中の大型犬と飼い主さん、シャボン玉を飛ばしている様子を一眼レフカメラで撮影する方など気付けば金子さんの周りにはたくさんの人が集まっています。その中には以前、『#ちがすき』のインタビューにも登場した佐野しのぶさんの姿も。
「しのぶさんとは“海”で出会った友達です。これは私の宝物で…」と言ってインタビュー中に見せてくれたのは、記事の冒頭で金子さんが手にしているお手製の写真集。これは佐野さんからプレゼントされたものだそうで、中には数々の美しいシーンが納められています。「いつもこんな風に素敵な写真を撮っていただけて、本当にうれしいです」
子どもたちと一緒に楽しめることに加え、こうした幻想的な世界観が表現されたシャボン玉の奥深さも人を惹きつけている魅力なのかもしれません。
金子さんも「しのぶさん以外にもシャボン玉を通してたくさんの方と繋がることができました。子どもと犬と仲良くなろうと始めたシャボン玉ですが、今では何人ものカメラマンさんが撮影してくれて、大勢の大人からも声を掛けてもらえるようになりました。想像以上の展開になって、自分でもびっくりしています」。
シャボン玉を飛ばす時はInstagram(@suparasu)で告知もしているそうで、「シャボン玉を飛ばしていると撮影をしている、邪魔をしたら悪いと思われる方もいるようですが、もっとたくさんの人と楽しめないかと思っています。子どもはもちろん、大人でも、犬と一緒でも遠慮せずに一緒に楽しんでくれると嬉しいです」
海辺の暮らしに憧れて飛び込んだ茅ヶ崎
子どもたちや犬だけでなく、たくさんの方と繋がって茅ヶ崎暮らしを楽しむ金子さんが茅ヶ崎に移住してきたのは2020年。
「生まれも育ちも“海なし県”の埼玉県だったこともあってか、ずっと海辺の暮らしに憧れていました。学生の頃から江の島や藤沢には遊びに来ていたのですが、移住するまでは茅ヶ崎にまったく縁がなく、茅ヶ崎のイメージと言えばサザンオールスターズくらい。でも、移住先として茅ヶ崎のことを調べてみると、職場がある渋谷まで電車の乗り換えなしで行けること、圏央道のインターが近くて便利なことを知って、茅ヶ崎暮らしに気持ちが向かっていきました」
縁がなかった茅ヶ崎への移住に不安はありませんでしたかと聞くと「移住した当時はコロナ禍真っただ中で不安なことはたくさんありました。でも、今動かないとこの先ずっと理想の海辺の暮らしができないと思い、茅ヶ崎に飛び込みました」
お気に入りのお店は魚卓、ディーパラダイス、プレンティーズ、パンドカルム
そうして始まった茅ヶ崎暮らしは「初めて茅ヶ崎駅のホームに降りたとき、サザンオールスターズの大好きな曲の『希望の轍』が流れたことに感動しました。今でこそ慣れてしまいましたが、街中で潮の香りを感じて思わず小走りになってしまいましたね。駅から出ると南側にはお洒落な個人店が多くて、雄三通りから海までの道はまさに憧れの海辺の暮らしといった感じで、とてもワクワクしたことを覚えています」
お気に入りのお店を聞いてみると「毎日通る雄三通りで言えば外せないのが魚卓さん。お刺身が重いと感じるほど量が多くて新鮮で美味しい。お刺身だけなく“アジフライがある”とInstagram(@uotakumaru)に投稿されているとすぐに買いに行ってしまいます。
ほかには家具と雑貨のお店のD-Paradiceさん、引っ越して最初に食べに行ったアイス屋のプレンティーズさんは特にお気に入りです。プレンティーズさんの店舗に描かれたかとうくみさんの作品を見て、彼女の大ファンになり個展にも出掛けました。鉄砲通りにあるパン屋のパンドカルム(pain de calme)さんはクロワッサンとフォカッチャが特におススメですね」
茅ヶ崎暮らしでサーフィンの朝活が当たり前になった
金子さんが茅ヶ崎暮らしをしていて気付いたのは「茅ヶ崎は夜が早い」こと。
都会に比べると茅ヶ崎はお店が閉まるのが早いということなのかと思っていると、「茅ヶ崎に住んでいる方は“早寝早起き”なんです。日の出前からサーフィンをしている人、犬の散歩をしている人、ランニングをしている人、体操をしている人、写真を撮っている人…早朝からこんなにたくさんの人が海にいることに驚きました。皆さん朝早くから活動するせいか、早く寝る方が多いような気がしています」
そんな金子さんも今ではすっかり早朝からのサーフィンが当たり前に。「夏場は朝4時過ぎに『今日はここで波乗りしているよ!』って連絡が来たりするんですよ。私も5時過ぎには海の上で波待ちしています。そんな生活に慣れると22時には寝てしまいますね」
早朝からサーフィンに出掛けていると同じように活動している顔馴染みの方も増えたそうで「移住した時は1人も知り合いがいなかったので、こんなに挨拶を交わす知り合いができるなんて想像もしていませんでした。海で出会った友だちの中にはずっとあだ名で呼んでいたので、実はフルネームを最近知った人もいるんです。そんな海の友だちと海以外の場所でも繋がって、そこから新しい友だちが増えて人の輪が広がっていきました。茅ヶ崎に住む方は気さくな方が多いので、気付いたらビール片手におしゃべりを楽しんでいる仲になっているのが本当に嬉しいです」
デザイナーとして家族が幸せになる子ども服を作っていきたい
茅ヶ崎では“シャボン玉お姉さん”ですが、金子さんのもうひとつの顔は子ども服のデザイナー。「学生の頃から洋服と子どもが大好きなこともあって、子ども服をデザインしています。洋服をデザインすることも好きですが、“洋服が綺麗に畳めるようになった”、“自分の着たい洋服を選べるようになった”など洋服通してお子さんの成長を感じられる素敵な仕事だと思っています。記念日などで子どもたちがかわいい服を着ていると、家族みんなが笑顔になりますよね。そんな気持ちになれる洋服をデザインしていきたいです」
子ども服に留まらず、「大好きなワンピースを自分でデザインしてお店をやってみたい」と念願だったワンピースショップnanalaを始められました。スクリーンや木版を使って手刷りで仕上げるプリント生地から作られるワンピースは、裾がふわっと揺れる姿が海辺にとても似合いそうです。
SUP、浜降祭、ピアノ。色々なことに挑戦してもっと茅ヶ崎暮らしを楽しみたい
ワンピースショップ以外にも、「まだまだ挑戦してみたいことがたくさんあります」と金子さん。「茅ヶ崎では『楽しそうだね、一緒にやろうよ』と声を掛けてくれる方が多く、そのおかげで好きなことが遠慮なく出来るようになりました」
実は取材をした日の早朝にはSUPにも初挑戦していたそうで、「小雨が降る生憎の天気だったのですが、大きな虹が2本も出ていてSUP初挑戦をお祝いしてくれたみたいでした。そんな素晴らしい光景に出会えたので、すっかりハマってしまいました」
SUP以外にも「人がすっぽり入れるシャボン玉を作ってみたい」「えぼし岩でシャボン玉を飛ばしてみたい」「お揃いのワンピースを着て大勢でシャボン玉を飛ばしてみたい」「浜降祭でお神輿を担いでみたい」「サザンビーチフェスタでストリートピアノを弾いてみたい」と挑戦したいことを次々と語ってくれました。
「色々なことに挑戦して茅ヶ崎での暮らしをもっと楽しみたい」という想いが詰まった“シャボン玉お姉さん”金子智香さんの大きなシャボン玉は茅ヶ崎の空をどこまで飛んでいくに違いありません。
シャボン玉を飛ばすときはInstagramで告知をされているそうです。
Instagramアカウント:@suparasu