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“何もない場所”から始まる、若きマスターの挑戦<わたしの茅ヶ崎暮らし>

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茅ヶ崎市菱沼在住 熊谷 俊介(くまがい・しゅんすけ)さん

茅ヶ崎市生まれ。高校卒業後、服飾系の専門学校を経て20歳から都内で暮らす。アパレル業界で4年ほど働いた後、バーテンダーのカッコよさに惹かれて飲食業界に転身。2021年6月、市内菱沼に「LAPIN(ラパン)」をオープン。都内で磨いた腕前と気さくな性格で、地域の皆さんに愛され、自分も楽しめるお店づくりを目指す。

「自分の店を持ちたい」念願を叶えるために選んだ場所は“まさかの”地元

木の温かみに包まれた内装と、ウサギをモチーフにした可愛らしいロゴが印象的なカフェレストラン「LAPIN」。

「ど~も~」と気さくに出迎えてくれたのはマスターの熊谷俊介さん。私たちが席に着くと、「ここまで来るの大変でしたよね~」と赤みがかった冷たいハーブティーを出してくれました。聞くと様々なハーブを調合したオリジナルのものだそう。スッキリした甘みと、清涼感あるのどごし。リラックスした雰囲気で取材が始まりました。

茅ヶ崎出身の熊谷さんですが、「学生時代は『茅ヶ崎って田舎だし、ほんとダサいまちだな』って思ってました(笑)。みんなTシャツと短パン、ビーサンで。だから僕は早いとこ茅ヶ崎を出ていきたかったんです。20歳で都内に出た時も茅ヶ崎にはもう戻らないつもりでした」

アパレル業界に就職し、後にバーテンダーとなった熊谷さんは西麻布や南青山の飲食店で活躍。都内で腕を磨くうち、自分の店を持ちたいと考えるように。そして、その思いを形にする場所に選んだのは、戻らないと思っていたはずの茅ヶ崎でした。

「最初は都内で成功したいとも思ったんです。でも、のんびりやってみるのも面白いかなと思って、地元に帰ってきました」

LAPIN外観

「当時感じていたダサさは今でも変わらないなと思ってます(笑)。でも、時間が経つにつれて茅ヶ崎がどんどん良いところに思えてきたんですよね。お酒が好きで、茅ヶ崎駅周辺によく飲みに行くんですが、隣の席に座った人と話してたら、実は共通の友だちがいることがわかって、急に仲が深まったりして。そんな日常がとても心地良いと感じるようになったんです」

最近は茅ヶ崎の代名詞であるアロハシャツもよく着ているそう。「着続けると、どういうわけかハマっちゃう。でも友人からは驚かれますよ。『あの熊谷がアロハ着てる!すっかり茅ヶ崎に染まってんじゃん!』って(笑)」

熊谷さん愛用のアロハシャツ

そんな熊谷さん、実はLAPINをオープンする前にラチエン通り沿いでお店を開いていました。お店の名は「BAY MORE」。「コロナ禍での出店を少しだけためらっていたんです。どこかで営業しつつ、準備を進めたいなと思っていたところで、ダイワサイクルさんがお店の一角を使っていいよと言ってくれて、間借りしていました。この時はテイクアウトが中心。得意にしているタコライスを主に販売していました」

しかし、開店から1年が経っても、コロナ禍が収まる様子は見られず。「もう、思い切ってお店出しちゃおう」と熊谷さんは決断。LAPINのオープンに取りかかり、BAY MOREを閉店することにしました。

ラチエン通り沿いで営業していたBAY MORE。多くの人に惜しまれつつ、2021年2月に閉店しました。

リモートワークの普及を背景に、あえて「何もない」ところに出店

市街地の外れにあるLAPIN。周りには田畑が広がり、お世辞にも人通りが多いとは言えない地域ですが、なぜ熊谷さんはここにお店を開いたのでしょうか。

「最初は茅ヶ崎駅前に出したいと思ってました。けれど、コロナ禍でリモートワークが普及して、駅から距離があってもお客さんは来てくれるのでは?と考え、この場所を選んだんです。店の周りは本当に何もないので、菱沼のことを知らない人は絶対ここに店を出そうとは思わないはず(笑)。そんな場所でいきなり工事が始まったものだから、近所の方も気になっていたみたいで、開店1週間前は1日100人から150人くらいの人に『何ができるの?』と聞かれました。プレッシャーはありましたけど、注目していただけたのはありがたかったです」

LAPINの周辺は閑静な住宅地。少し北に行くと田畑が広がります。親子で自転車、ワンちゃんとの散歩、ジョギングなど人々が思い思いに時間を過ごし、ゆったりとした空気が流れています。

一方で、こんな困り事も。「このエリアが、仕入先業者さんの配達ルートから外れてしまっていたんです。特に自分がお願いしたいと思っていた業者さんはことごとく配達不可で…。知り合いのお店からの紹介や、電話でのお願いを経て、なんとか仕入先を確保することができましたが、なかなか大変でした」

「ご近所さんと顔の見える関係でいたい」老若男女みんなに愛されるお店に

主にお店を訪れるのは、小さなお子さんを持つママさん。

「8割くらいを占めるんじゃないかな。お昼にママ友同士でおしゃべりを楽しんで、時間が来たらお子さんを迎えに行っています。安心して楽しんでもらえるように、なるべく添加物の入ってない食材を使ったり、妊娠中の方でも飲めるカフェインゼロのハーブティーを作ったりしています」

熊谷さんが創作する料理・スイーツの数々(左上:豚肉とチャービルのサルティンボッカ(アラカルト)、右上:黒酢鶏と赤ワインビネガーの鶏パテのバインミー(季節限定販売)、左下:腹われザクザクスコーン(カフェタイムメニュー))

営業する上で1番大事にしていることは、お店のそばに住む皆さんとの関係づくり。「昔から住んでいる“地の方”が多い地域なので、顔の見える関係になっていくことが重要かなと思っています。そのため、開店にあたっては足を運べる範囲のお宅には直接伺って、ひたすらあいさつ回りをさせていただきました」

こうした地道な活動が実を結び、次第に年配の方も訪れてくれるようになったといいます。

「おじいちゃん、おばあちゃんからは『タコライスって何?もっとわかりやすい名前にして!』とか、『メニューの文字が小さくて読めない!』とかいろいろ言われますね(笑)。年配の方は食べたことのない料理にはなかなか手を付けてくれないのですが、聞かれたことに丁寧に答えていくと、『じゃあ一度食べてみようか』となる。そういうコミュニケーションをしていると、ちょっとずつ仲良くなっていけてる感じがしますね。この前は80歳のおばあちゃんに『初めて食べたけど、タコライス美味しかったよ』と言ってもらえました」

おばあちゃんからも好評!LAPINの看板メニュー「BAY MOREのタコライス」

畑が広がるエリアならではのエピソードも。「近くで畑をやっている方が余った野菜を持ってきてくれます。トマトとか、きゅうりとか、ジャガイモとか。野菜はよく使うので本当にありがたいし、何より新鮮で美味しい。『お兄さん、いつも頑張ってるね』と声をかけてもらえることもあって、そんな時にこの地域に受け入れてもらえたのかなって、うれしくなりますね。同じ茅ヶ崎でも、南側のラチエン通りで営業していた時はこういうことはなかった。田舎の雰囲気がほどよく残っている茅ヶ崎の“北側”ならではの良さかもしれません」

毎週金曜日の夕方、LAPIN前にやってくるという農家さんの移動販売車。近所に住む皆さんとお話ししながら一緒に野菜を選びます。

ゆっくりと時間が流れるまち。人の気質は穏やかでフランク

茅ヶ崎の人の雰囲気を伺うと「穏やかでフランクな人が多い印象です。以前、テイクアウトでタコライスのお弁当をオーダーいただいた際、『卵を抜いてほしい』とリクエストを受けたんですが、誤って卵を添えてしまったんです。後日お詫びをしたら、『卵抜いてって言ったじゃん(笑)。でも美味しかったからいいよ』とお許しいただけて。その方はその後も定期的にお店に来てくださってます。でもこれ、都内だったらすごいクレームになってたんじゃないかな…」

菱沼のこの地では、熊谷さんも気持ちにゆとりを持って仕事ができるといいます。「都内で働いていた頃は西麻布、南青山といった土地柄もあって、お客様はセレブな方がほとんど。『このお客様にはこのお酒を出す』とか、『この人とこの人がバッティングしないように』とか、気を配るポイントがとても多かった。毎日が刺激的な一方で、すごく気を張っていました。茅ヶ崎では全然そういうことはなく、誰とでもフランクに会話を楽しめています。あと、都内で仕事していたからか、茅ヶ崎はすごくゆっくり時間が流れている気がしますね。お客さんもオーダーを急かすことなくゆっくり対応してくださるので、自分のペースで仕事ができています」

「料理もできるバーテンダー」として“ちょっとした特別感”を提供していきたい

最後に、今後やりたいことを聞くと「やっぱりLAPINかな。やりたいことがたくさんあります(笑)」と熊谷さん。

「茅ヶ崎に暮らす人がちょっとした特別感を感じられるお店にしていきたいと思っています。『今日はおしゃれなお酒を片手に、美味しい料理を楽しみたいからLAPINに行こうかな』なんて思ってくれたらうれしいですね。自分が一番自信を持っているのはお酒、特にカクテルなんですけど、緊急事態宣言の影響でLAPINがオープンしてからずっとお酒の提供を自粛しています。宣言が明けたら、こだわりぬいたカクテルをぜひ堪能してもらいたいです」

続けて、「とにかく、自分が楽しめるお店にしたいですね。そうでないと、お客様も楽しめないと思うから。自分が休みたい時は休む。そんなラフな感じでもいいかなと。それくらいゆるくても、茅ヶ崎では許してもらえる気がするので(笑)」

お酒の提供が解禁されることを楽しみに、ハーブや薬草、スパイスの調合を駆使して今までにないものを作ろうと研究を重ねる毎日。「『俺の作る酒、ほんとに美味いから!楽しみにしといて!』と、来るお客さんみんなにアピールしています(笑)。勝手に自分にプレッシャーをかけていますが、望むところです」

取材当時に出ていた緊急事態宣言が明けて、お酒が出せるようになったLAPIN。熊谷さんが自信を持っておすすめする極上のカクテルがついにお披露目されます。ちょっとした特別感を味わいたくなった時は、いつもと少し趣向を変えて菱沼エリアに足を運んでみては?

information

■LAPIN
HP:https://lapin.therestaurant.jp/
Instagram:https://instagram.com/lapin20210601
Facebook:https://www.facebook.com/pages/category/Cafe/LAPIN-103042158633074/
■ダイワサイクル
https://www.shonan-sh.jp/shops/daiwa_cycle/

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住所

神奈川県茅ヶ崎市菱沼1-18-18 菱沼ハイツ101

公開日:2021-11-19

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