茅ヶ崎市東海岸南在住 清野千春さん 太陽くん 瑠菜ちゃん
町田市出身の千春さんは体育大学時代、ライフセービング部に所属。趣味のサーフィンを満喫するために海外や八丈島、種子島などに住み、サーフィン三昧の日々を送る。帰国後は趣味のサーフィンを楽しむために茅ヶ崎に移り住み、その後、結婚して2児のママに。近年は介護福祉士として活動。週末は「プロサーファー」を目指す長男の太陽くん(小学3年)は、放課後は海辺のアフタースクールに通学。長女の瑠菜ちゃん(年長)と一緒に海で練習に励んでいます。
湘南エリアにはたくさんのキッズサーファーがいますが、今回インタビューに訪れたのは、茅ヶ崎パークをホームに、サーフィンを楽しんでいる親子です。
ビーチに程近い東海岸南エリアの自宅に伺うと、人懐っこい瑠菜ちゃんが、「は~い!」と元気よく出迎えてくれました。きゃらきゃらと笑う、愛くるしい表情が印象的です。
玄関には、ウエットスーツやリーシュ、スケートボードなど、サーフィンにまつわるアイテムが所狭しと置いてあり、「サーフィンが生活の中心」であることが垣間見えます。
母親の千春さんのサーフィンとの出会いは大学生のころ。
「ライフセービング部に所属していたので、江の島の西浜や千葉の鴨川などで活動していました。練習の合間に、ボードを貸りて乗ってみたら、すっかり夢中になってしまって」と小麦色の日焼け顔で笑います。
ライフガードに青春を捧げ、教員免許も持っている千春さんは、自他ともに認める「体育会系」。「もっと早くからサーフィンに出会っていれば、競技者やプロサーファ―にも挑戦できたのに…」という思いが生まれるほど、サーフィンに魅了されたそうです。
体育大学卒業後は、公立中学校で体育の非常勤講師として教鞭を執りますが、サーフィンや海に近い仕事がしたいと一念発起。ワーキングホリデーでのオーストラリアを経て、青年海外協力隊としてフィジーへ渡りました。現地では水泳やライフガードを指導していたそうです。
「サーフィンがしたくて、八丈島や種子島にも住んでいたことがあります。ある程度はできるんですが、技術面ではやっぱり小さいころからやってきた人には歯が立たないですよね」
フィジーから帰国後は、海を求めて茅ヶ崎へ移住
帰国後、サーフィンができる環境をめがけて移住してきたのが、ここ茅ヶ崎でした。
「茅ヶ崎には、ライフセービング経験者や指導者も住んでいて、親近感があります。あと、サーフィンがしたくて国内外を放浪してきた変な経歴ですが、茅ヶ崎ではそれを変と思わず、受け入れてくれる人が多くて楽しいです」と微笑みます。
結婚して母になった千春さん。それでも捨てきれなかった「プロサーファー」という夢を託したのが、太陽くんと瑠菜ちゃんです。
「子どものころからサーフィンに慣れていれば、自然と乗りこなせたり、上手に板をコントールできるようになるかなと思って。どうせやるなら、競技として大会出場なども見据えて、とことんやってほしい」
そんな思いを汲むかのように、太陽くんは赤ちゃんの頃から海に親しみ、3歳で初波乗り。6歳から本格的に練習をはじめ、すっかりサーフィンのとりこです。
太陽くんが初めて波乗りデビューを果たした瞬間の写真がこちら。千春さんと太陽くんのはじける笑顔が、サーフィンの魅力を物語っています。
「お向かいさんと一緒にサーフィンに行って撮影してくれたんです」と千春さん。ご近所で気軽に、共通の趣味やレジャーを楽しめる環境も、海に近い茅ヶ崎ならではの魅力です。
「赤ちゃんの頃は、海に落ちたりして嫌いにならないように注意して。とにかく海での遊びを満喫させたり、スイミングで水に慣れてもらいました」
背中を追うように、瑠菜ちゃんも昨夏(2021年)から本格的にサーフィンを始め、週末は親子3人で欠かさず海へ繰り出しています。茅ヶ崎で波のない日は、湯河原・吉浜まで足を延ばしたり、パンプトラックさむかわや海老名の屋内練習場でスケボーをすることもあるそうです。
自宅では寝る前のストレッチや、実際のサーフボードやクッションを使ったイメージトレーニングにも取り組んでいます。また、プロサーファーのYouTube動画を見て、身体の動かし方や波のとらえ方などもチェックするなど、徹底しています。
太陽くんの憧れのサーファーは、東京五輪で銀メダルを獲得した五十嵐カノアさん。メッシュの入ったヘアスタイルも「カノアっぽくしてもらった」と照れくさそうにはにかみます。
将来の夢はもちろん、「プロサーファー!」と即答です。
「楽しいけど、波の上に立ってバランスを取るのは難しい。大人の頭くらいある波に巻かれた時は、息ができなくて苦しかった」と海の怖さも経験済みです。
一方の瑠菜ちゃんは、「波に押されて、どっかーんってジェットコースターみたいで楽しい!」と屈託なく笑います。「私も詩野ちゃんみたいなプロサーファーになりたい!」
茅ヶ崎には大会で活躍するキッズサーファーも多いほか、東京五輪候補にもなった松田詩野さんとが身近にいることが、大きな刺激になっているようです。
ビーチで顔見知りサーファーと交流、初対面でも仲良く!
インタビューしたのは、4月の晴れ渡った茅ヶ崎パーク。とろい波でしたが、太陽の日差しも風も心地よく、絶好のサーフィン日和でした。
準備体操もそこそこに、海へ向かう太陽くんに、「もっとちゃんとストレッチして!」と千春さんから檄が飛びます。出鼻をくじかれて、しぶしぶ入念にストレッチを行っていましたが、海には入ったら、この満面の笑みです!
パドルをして一人で沖に向かった太陽くんは、早速波をとらえてテイクオフ。前方には千春さんにボードを押してもらって波に乗っている瑠菜ちゃんの姿もありました。
千春さんは最後まで見守り、それぞれのフォームや重心、癖などを細かくチェック。沖に戻ってきた2人に丁寧にアドバイスします。「結構厳しいことも言います」。さすが体育会系です。
瑠菜ちゃんも千春さんに板を押してもらって、難なくテイクオフ。「太陽は少し怖がりで大きな波だと、ひるんでしまうことがありますが、逆に瑠菜ちゃんは怖いもの知らず。どんどん波に向かっていきます」
子どもだって「海仲間」、海の中での助け合いも
沖では、太陽くんが海で顔なじみのヒロシさんと気さくに挨拶を交わす姿がありました。ヒロシさんは波乗りのアドバイスしてくれたり、波が来た時には後ろから押してくれることもあるそうです。
ヒロシさん曰く「子どもとは言えど、海仲間だからね」と白い歯をのぞかせます。
そんな横で、何やら、若いサーファーカップルと仲睦まじい様子の瑠菜ちゃんと太陽くん。
「顔見知りになってどれくらいなの?」と尋ねると、「初対面です。さっき海で知り合ったばかり」というから驚きです。
移住者を受け入れる「茅ヶ崎のおおらかさ」
ヒロシさんも相模原からの移住者で、新婚のショウさんとくるみさんご夫婦も最近、茅ヶ崎に移住してきたばかりだそう。
初対面の相手との距離が一気に縮まってしまうのは、海のもつ開放感や、サーフィンという共通の趣味はもちろんですが、「移住者」が多い茅ヶ崎の土地柄なのかもしれません。
湘南エリアの中でも、他市に比べて移住者が多い茅ヶ崎は、新住民がコミュニティの中に入って来ることに、抵抗感が無いという話をよく聞きます。今回の光景も、ローカル色が強い一方で、新しいものを受け入れてくれる「茅ヶ崎のおおらかさ」を象徴するものだといえるかもしれません。
茅ヶ崎は親子サーフィンを思い切り楽しめる街
「サーフィンは、1年間季節を問わず、両若男女が楽しめるスポーツ。何より、私も、子ども一緒に楽しめるのが一番の魅力。今は、安全確保のために目が離せませんが、2人が大きくなって、3人それぞれがサーフィンを楽しめるの日が来るのが待ち遠しい」。そう瞳を輝かせて語る千春さん。
フィジーにいた時に、足の悪い65歳の女性がリハビリ代わりに、毎日のように海に入る光景を目の当たりにしたそうです。
「その女性と出会ってから、私も65歳までは続けたいなと思うようになりました。仕事や子育てで忙しくても、サーフィンがあるから、頑張れる。波に乗るとスーッと忘れてしまいます」
この2人のこぼれんばかりの笑顔は、ママの千春さんがハッピーだからこそ生まれるものに違いありません。