音二郎・貞奴が居を構えた高砂緑地での音貞オッペケ祭 明治から大正にかけて別荘地として栄えた茅ヶ崎。その面影を色濃く残す高砂緑地で、音貞オッペケ祭2022が6月4日、5日の2日間にわたって開催されました。新派劇の父と言われる川上音二郎、日本初の女優と言われる貞奴が現在の高砂緑地の場所に居を構えたのは明治末期。その時代の雰囲気が充分に醸し出しされた今年の音貞オッペケ祭でした。
音貞オッペケ祭のメインは、百年以上前に音二郎、貞奴が演じた「八十日間世界一週」の復刻劇。高砂緑地の中に複数の舞台を設け、シーンごとに役者もお客様も移動する「回遊野外劇」のスタイルで演じられました。木漏れ日の差す松林の中で、時には日差しがスポットライトのように演者を照らし、また、屋内とは異なってとても奥行きがあり、高砂緑地の醸し出す雰囲気と一体となった舞台となっていました。
コロナ禍の影響もあり、4年ぶりに高砂緑地で開催された音貞オッペケ祭、「回遊野外劇はコロナに気を付けながら演劇をやる方法としてとても適している。このような形での復活を音二郎、貞奴も天から微笑みながら見ているのではないか」と音貞オッペケ祭実行委員会の山口洋一郎さんはお話しされていました。観覧されていた方々からも、「久しぶりの野外劇だったが、とても楽しめた」との声が聞かれました。
当日は、復刻劇以外にも、祭囃子や箏と尺八、ハープの演奏も行われました。以前は浜降祭や各地域の神社のお祭りで奏でられていた祭囃子、コロナ禍のこの2年間、まったく耳にする機会がありませんでしたが、久しぶりに聞くとなんだか心がワクワクします。
コロナ禍で開催方法を模索した2年間と今年の音貞オッペケ祭 音貞オッペケ祭はコロナ禍の2020年と2021年でも途切れることなく、オンラインに軸を置きながら開催されてきました。実行委員会の鈴木直美さんにお話を聞くと、「音二郎の有名なオッペケペー節の中に『心に自由の種を蒔け』という言葉があって、私たちもその精神を見習い、転んでもタダでは起きない。コロナなら、この中でできることをやろうと決め、これまで馴染みのなかった動画配信や全国に広がる音貞ゆかりのまちとのオンライン交流にチャレンジした」とのこと。
このような経緯を経て、今年の音貞オッペケ祭は、コロナ禍で手に入れたスキルとご縁を充分に発揮した企画となっていました。2019年までは当日の上演のみで終わっていた復刻劇も、今年は当日の上演に加えて、当日見られなかった人のために後日、YouTubeでも閲覧できるようになります。
2020年の音貞オッペケ祭のオンライン交流では、貞奴の別荘のあった岐阜県各務原市とつながりが深まりました。この縁をいかして、今回パンを販売したCUNI PANでは、各務原名物の各務原ニンジンを使ったハイカラパンの販売が行われ、また、茅ヶ崎茶道会による呈茶では各務原から取り寄せた貞奴ゆかりのお菓子「水うちわ」が提供され、各務原の味を楽しむことができました。
2年間のオンライン開催を挟んで開催された今回の音貞オッペケ祭、コロナ前の水準に戻るだけではなく、コロナ禍で獲得した技術やつながりが存分に発揮されたイベントとなっていました。今後も、様々なイベントがこのまちで復活していくことになると思いますが、コロナ禍の経験をいかしながらさらに楽しいイベントが企画され、このまちの活力が生み出されていくことでしょう。