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【能登半島地震レポート】石川県に住む「#ちがすき」元記者から、茅ヶ崎の皆さんへ

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【能登半島地震レポート】石川県に住む「#ちがすき」元記者から、茅ヶ崎の皆さんへ
地震の影響で傾いた西荒屋小学校前の道路標識=2024年1月13日撮影、内灘町

 「#ちがすき」(茅ヶ崎市とタウンニュース茅ヶ崎編集室が協働で運営)の初期運営メンバーで、その後、故郷の石川県へUターン移住した杉村一馬です。2024年1月1日に、石川県を最大震度7の大地震が襲いました。報道では珠洲市や輪島市といった奥能登地域に焦点が当てられがちですが、県内のほかの地域でも大きな被害が発生しています。

 その一つが、茅ヶ崎と同じくマリンスポーツが盛んで、“石川の湘南”というキャッチフレーズを掲げている内灘町(うちなだまち)です。“本場の湘南”の皆さんへ同町の被害状況をお伝えしたいと思い、「#ちがすき」編集室にお願いして記事を書かせていただきました。

「コロナ明け」を襲った震災

 1月1日の能登半島地震により、奥能登地域では建物の倒壊、土砂崩れ、津波、大規模な火災が発生し、たくさんの大切な命が失われました。この記事を書いている1月22日現在も、何人もの安否不明者がいます。1万人以上という途方もない数の住民が今なお、環境の厳しい一次避難所で避難生活を送っています。

 奥能登の状況についてはテレビや新聞で日夜、報道されています。しかし、あまり伝えられていない奥能登以外の地域も、被害は甚大です。

 地震が起きた時、私は実家があるかほく市(金沢市の北にある都市)にいました。揺れが収まってから実家の周辺を歩くと、液状化や道路の陥没、家屋の半壊によって変わり果てた故郷の景色がありました。

 特に、秋季祭礼の華やかな思い出が詰まった神社は玉垣や鳥居が無残に崩れており、地震前の姿を忘れてしまうほどの変わりようでした。昨年、ようやく4年ぶりに新型コロナによる制限のない祭りが再開したばかりです。やるせない思いです。

倒壊した神社の玉垣=2024年1月1日撮影、かほく市

“湘南”が石川にもあった

 さて、この記事では、観光誘客の方針として“石川の湘南”という言葉を掲げている「内灘町」の被災状況をレポートしたいと思います。

 「#ちがすき」を担当していた私としても、内灘町を茅ヶ崎市に負けず劣らず魅力的なまちととらえており、観光の見どころと被害の状況を“本場の湘南”の皆さんにお伝えしたいと考えました。

能登と加賀の境目あたりに位置する内灘町

海と空を染め上げる夕日

 内灘町は金沢市のベッドタウンで、人口は茅ヶ崎のおよそ10分の1の2万6000人。観光面での最大の特徴は、約9キロメートルの砂丘「内灘海岸」です。夏には海水浴のほか、サーフィンやSUP、カイトボードといったマリンスポーツが盛んに行われており、近隣にはいくつかのサーフショップもあります。

 内灘海岸で見逃せないのが美しい夕日です。水平線へと吸い込まれていく太陽が、最後の力を振り絞るかのように空と海をオレンジ色に一気に染め上げる様子は、何度見ても感動します。茅ヶ崎海岸で見る夕日に照らされた富士山もすばらしいのですが、内灘海岸も負けていませんよ。

日本海に沈む夕日 2021年11月19日撮影、内灘海岸

 内灘町で注目されている観光地が、2022年度の「道の駅チェックインランキング」(ゼンリン発表)で全国1位に輝いた「道の駅 内灘サンセットパーク」です。冬の晴れた日には、日本三名山の一つである立山(たてやま)の銀嶺を望みます。県内各地のおいしいものを集めた物販コーナーや、絶品スイーツが楽しめる飲食コーナーもあります。

 内灘サンセットパークの近くには全長344メートルの優美な斜張橋(しゃちょうきょう)の「サンセットブリッジ」や、約9キロの桜並木「母恋街道」といったスポットもあり、訪れる人を引きつけています。内灘町観光協会のウェブサイト(https://uchinadakankou.com/)には、そのほかの観光スポットも紹介されています。

内灘サンセットパーク=2023年1月11日撮影、内灘町

内灘サンセットパークから望む河北潟越しの立山連峰=2023年1月11日撮影、内灘町

桜並木が続く「母恋街道」=2023年4月11日撮影、内灘町

町内各所に深刻な爪痕

 そんな内灘町が、今回の地震で甚大な被害を受けてしまいました。

 特に影響が大きかったのが、同町北部にある「西荒屋(にしあらや)地区」です。1月13日に現地へ行くと、至るところで地面の隆起、陥没が見られました。

西荒屋小学校前の状況=2024年1月13日撮影、内灘町

 町内を南北に走る県道は道路そのものが傾いており、車で通ると「横転するのではないか」という恐怖を感じました。道路沿いの電信柱や道路標識も根本から曲がっており、平衡感覚を失ってしまいそうです。

 この動画は、震災の2週間後に車載カメラで撮影した映像です。

1000戸以上で損傷

 1月13日に訪れた際には、地面から水が湧き出している箇所もあり、復旧が追いついていない現状を実感しました。記事執筆時の1月22日時点でも、約700戸以上が断水で不便を強いられています。

 外構や納屋の崩壊がしている家のほか、地面に沈み込んで完全に傾いてしまった家が何軒もありました。「もう住めない」と嘆く町民の声も耳に入ってきています。内灘町全体では1200戸以上が損傷し、1月22日現在で約100人が避難生活を続けています。

 石川県は本格的な雪のシーズンを迎えます。大雪によるさらなる被害の拡大がないよう、祈るばかりです。

被害を受けた家屋=2024年1月13日撮影、内灘町

補修が進む道路。写真左側の電柱は地中に深く沈み、信号機が手が届く高さにある=2024年1月13日撮影、内灘町

石川県への観光も支援の形

 タウンニュース茅ヶ崎版では、茅ヶ崎市消防本部の職員派遣をはじめ、茅ヶ崎市によるDMAT(災害派遣医療チーム)の派遣、市役所や市観光協会での募金箱設置、市社会福祉協議会による募金活動などが報じられています。記事を読んでとても励まされ、温かい気持ちになりました。

 一つだけ、石川県民として贅沢を言わせていただくならば、ぜひ石川県への観光にも訪れてほしいです。

 もしかすると「いま石川県に行くのは危ないんじゃないの?」「被災地に迷惑じゃないの?」と思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、必ずしもそうではありません。石川県が公式X(旧Twitter)で発信している通り、石川県は南北にとても長いのが特徴で、北側に当たる能登の被害は甚大だった一方、南側の金沢や加賀地方では影響が限定的だったからです。

 金沢や加賀地方のライフラインやお店はほぼ、通常通りです。にもかかわらず、観光客が激減して苦境に陥っています。金沢や加賀地方の経済が盛り上がることは、能登の復興にもつながるので、ぜひ観光をご検討いただけるとありがたいです(ただし、休業中のお店やスポットもあるので、事前に目的地の状況を調べることをおすすめします)。

兼六園のシンボル「徽軫灯籠(ことじとうろう)」。年中大混雑する人気スポットですが、1月14日に訪れると並ばずに見ることができました=2024年1月14日撮影、金沢市

 内灘町については「内灘サンセットパーク」が通常営業をしています。町内のほかのエリアも、もう少し落ち着いたら巡れるようになると思います。その際には、ゆっくりと内灘を観光して、たくさん魅力を感じてほしいです。

 最後に、茅ヶ崎の皆さんにはぜび、石川県に“石川の湘南”があることを覚えていただき、能登地方とともに長く心を寄せていただけるとうれしいです。

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住所

神奈川県茅ヶ崎市

公開日:2024-01-23

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