丹沢の水と緑に恵まれた神奈川県山北町。昔にタイムスリップしたかのような里山が残る景色は人々の心をほっとさせ、都会の喧騒を忘れさせてくれる日常があります。今回はそんな山北町の自然、景色を望む大好きな自宅で仕事をしている2組の移住者を取材しました。
おおらかな山北暮らし。陶作もダイナミックに/佐野有子さん
桜に菜の花、可愛い鳥の声ー。陶芸家・佐野有子さんの自宅兼工房「Ari’s Art Works」は、日本の原風景とも言える景色の中にあります。昭和26年建築の蔵つき古民家。大工さんにリノベーションしてもらった蔵を陶芸工房に仕立てました。
2020年春、陶芸の産地である茨城県笠間市から山北町に移住してきました。つなぎ姿が似合う佐野さんですが、とても穏やかでおっとりとした人柄が印象的です。
「都会ではない場所で窯も入れられて、神奈川県内で海も近い場所に行きたかったんです」。そんな矢先、パートナーであるアメリカ人のマークさんが“発掘”したのが山北町の物件でした。「そんなに広くなくても」と誰もが思いましたが、父親とマークさんと3人で現地に訪れると心掴まれる環境が待っていました。
人生はアドベンチャー
「きっとこの家が私を引き上げて、助けてくれるはず」ー。その考えは的中し、山北町での暮らしを重ねるごとに、次々と“こんな作品があったらいいな”と妄想は膨らむばかり。作品規模もよりダイナミックなもの作りへの挑戦心が芽生えています。「人生はアドベンチャーなんですって」とにっこり。新たなスタイルが着実に山北で築かれようとしています。
広い庭は手入れも「楽しいですよ」と笑顔。草刈り機とバリカンを操り、一日30分と時間を決めて庭仕事にも汗水を流します。自宅から10分ほど歩いた丘に上れば大好きな海も眺められ、リフレッシュ。
2021年1月に火を入れ、動かし始めた窯は「順調です。色味もうまく出ています」。工房のデスクの上には、2021年6月に自由が丘で行われる作品展用の大きな花瓶が窯入れの時を待っていました。
先々自宅を開放し山北町と陶芸で交流を
山北町に移住して1年足らず。自粛生活も重なり、山北町の人やお店も未知なる日々ですが、「昔、私の珈琲カップを購入してくださったお客様が大野山へとつながる道沿いでカフェをされていることを知って」と感激のエピソードも。今もなお珈琲カップはお店で愛用され続けているのだそう。
自宅の一室に、ギャラリースペースを作りました。「いつかここで、イベントや展示会を開催していきたいと思います」と笑顔。まずは看板で「ご挨拶を」とガレージ壁面にタイル貼りの看板が登場する予定です。山北の景色に包まれながら今日も作陶に励みます。
※実際の作品を見て購入、またお問い合わせはhttp://gallery-ari.com/
大切なモノが残るまち、山北町/井上直樹さん
一日中陽が当たる縁側はみんなのお気に入り
職場から近く、自然いっぱいの場所で暮らしたい―。そんな思いをカタチにして、妻、子ども、そして柴犬のココと山北ライフを満喫している井上直樹さん。もともと、小田原市で物件を探していましたが、たまたま見つけた山北町の物件にひとめぼれ。町の子育て世代への手厚いサポートも決め手でした。
現在、平日は小田原市内に勤務し、土日は自宅で身体のバランスを整える施術院「操体バランスケア えんがわ堂」を開いています。院名は、物件のシンボルから。一日中陽が当たるその場所は、移り行く季節を感じることができ、身体も心も癒されるお気に入りです。
大きな敷地は、みんなが楽しい「創造フィールド」
実家が農家だったこともあり、野菜などを育て自給自足できる環境に憧れがありました。山北の物件は家と裏の畑がセットで、まさに希望通り。ミニトマト、ブロッコリー、白菜など自分で育てた野菜は味も格別。このほか、土いじりやどろんこ遊びはもちろん、木登りだってできる遊び場としても大活躍しています。
井上さんはDIYが得意だといい、必要なモノはなんでも作ってしまう性分。自分好みにカスタマイズできそうな、大きな大きな敷地は絶好のフィールドで、住みながら作り上げていく楽しみがあるといいます。
気になるアクセス、車移動できるなら問題なし!
気になる生活利便性は「車さえあれば不便はなし!」。役場・病院・図書館・健康福祉センターなど町内各施設はすぐ。買い物なら静岡・小田原方面はどちらも時間がかからずアクセス可能で、気軽なおでかけ圏内。日用品は近所ですべて事足りるとのこと。
今後町内に新東名のスマートインターチェンジも完成することから都心へのアクセスもますます便利に。ちなみに映画が好きな井上さん。近所に映画館はありませんが、家の中にプロジェクターとサウンドシステムがあり、快適な環境で鑑賞できているそうです。これもゆとりある住まいがなせる業でしょう。
移住者が「魅力をみんなに伝えたい」と活動
山北町に移り住み、この4月で丸2年。町全体が家族であるかのような温かさ、そして豊かな自然が魅力だと感じています。「人と人との距離が疎遠になったり、便利だけを追い求めたりするのではなく、大切なモノがきちんと残っている―」。井上さんは、現在、その良さを広く知ってもらおうと、町の定住協力隊としても活動しています。